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2008-08-14

広島本通り こがね食堂


広島の銀座通り、本通りに昔からある食堂。広島の知人に行ってみろと言われてはいたのだが、あまり旨そうでもないし、そのままになっていた。入り口を入るとガラスケースがあり、おかずを選べるようになっている。よく分からずそのまま席に座ったら、「定食でいいですか?」と言うので、何とも聞かずにそれを頼んだ。日替わり定食600円。最近になって、なんと値下げしたそうだ。まわりが値上がりする中、値下げするとはすごいやり方だ。飲み干した冷たい麦茶を、すぐまた注いでくれたり、おばちゃんたちのサービスも家庭的でとても良い。


出てきた定食、魚かメンチカツでもついてくるのかと思ったら、ハムエッグ。しかも玉子は一個。ちょっとがっかりしたが、しかしよく見ると、ふちが赤い、昔ながらの四角いハム、4枚ついていた。玉子よりハムのほうが、たしかにご飯のおかずになる。付け合せのキャベツとカイワレ、マヨネーズを使うかと聞かれたが断わり、醤油をかける。食べはじめてしばらくして、ふと気づくと、なんとびっくり、しみじみおいしい、と思っていた。不覚にも、という言葉を使いたいくらい。

だいたいよくありそうな普通のハムエッグ定食、そんなおいしそうなものではない。安い米をやわらかめに炊いたご飯、あまり風味のしないワカメと油揚げの味噌汁、醤油の味の勝った切り干し大根、それに細く切ったたくわん。何故これをしみじみおいしいと思ってしまうのか。何が僕のしみじみのツボを突いてくるのか。おそらくこの定食、何でもないように見えるのだが、細心の注意が払われているのだろう。

味噌汁のワカメは、くたくた、と言いたいくらいやわらかく、また切り干し大根も同様だ。はじめは単に煮すぎたのかと思ったが、実はそうではないのだろう。いまの時流はやはり「歯ごたえ」だろうが、この店はまわりが値上げすると値下げするような店、そんな時流になど流されない。ワカメも切り干しも、よく煮てやわらかい方がおいしいと思っているから、わざわざそうしているのだろう。それがやわらかく炊いたご飯と相まって、一つの調和を作りだしているのかなと思う。

ほかにも色々な配慮がありそうなのだが、しかしこんな何でもなさそうな定食に、しみじみさせられるとは思ってもみなかった。いやいやいや、広島の飲食店、ほんとにあなどれない。

こがね食堂 (定食・食堂 / 本通)
★★★★★ 5.0

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