タバコを吸う都合上、灰皿には自ずと関心が向く。今回韓国へ行って、日本の灰皿とはだいぶ趣が違うのが面白かった。
日本の場合、駅や色々な場所の喫煙所にある灰皿には、九割方、水が入っている。きちんと火を消さない不心得者も多いから、灰皿の中で火が消えずに、煙がもうもうとなるのを防ぐために、火がついたままでも灰皿にポトンと落とせば、ジュッ、と消えるようになっているのだ。
ところが韓国の場合は違った。
釜山タワーの灰皿
釜山沿岸旅客ターミナルの灰皿
金海国際空港 屋外の灰皿
済州島 海水サウナ内の灰皿
このように、砂が入っているものを、いくつも見かけた。
日本だと、砂が入っている灰皿というのは、よっぽど洒落たホテルなどで、平らにならした砂の上にホテルのシンボルマークを刻印したりして、ハイクラスな雰囲気を醸し出すために置いてあったりはするが、それ以外ではほとんど見ることはない。昔はデパートなどで、白い砂利の入った灰皿があったようにも記憶するが、それも今はほとんど無いだろう。
少なくとも日本の灰皿に砂や砂利が入っているのは、「おしゃれな感じ」を強調するためなのではないかと思うのだが、上の灰皿はとくべつおしゃれな場所に置かれたものではなかった。
次にコーヒー屋で見かけた灰皿。
釜山市南浦洞の喫茶店の灰皿
釜山市四面のスターバックスの灰皿
コーヒーの出しガラが入っている。
これは日本でも、見かけないことはない。韓国でもこれは、ちょっとおしゃれな感じを表現したものだったと思う。
次は、日本では一度も見かけたことのないパターン。
南浦洞の旅館の灰皿
金海空港 館内喫煙室の灰皿
ちょっと分かりにくいかも知れないが、水に浸したティッシュペーパーが入っているのである。
これを見ると明らかだと思うのだが、韓国の人は、灰皿に水だけを入れておくのは、何となく抵抗があるのだ。ティッシュペーパーは、タバコの消火、ということについては、何の役割も果たしていない。水だけが入っているのと同じである。しかしおそらく韓国の人は、水にタバコをポトンと落として、それがジュッと消えるというのでは、タバコを消した、という感じがしないのではないだろうか。そうではなく、やはり何かの物体、砂とか、コーヒーの出しガラとか、せめてティッシュペーパーとか、そういうものときちんと接触させないと、タバコを消したということにはならない、そんな感じがあるのではないかという気がする。
似たような発想を、韓国の料理にも感じる。なぜあんなに唐辛子やにんにくやゴマを、たくさん使うのか?そういうものは日本では、最近は別として、伝統的にはほとんど使わない。色々理由はあるかも知れないが、その一つにおそらく、アクとか、エグミとか、そういうものに対する対処ということがあるのだと思う。日本では肉や野菜のアクやエグミを、アク取りをしたり、下ゆでをしたりして、徹底的に取り除く。それに対して韓国では、同じようなクセを持つ調味料、唐辛子、にんにく、ゴマ、それを投入することによって、アクやエグミを中和させようとする。それと同じようなことが、灰皿にも表れているのではないかと思うのだ。
ただしこのことは、済州島では当てはまらない場合があった。
済州島 翰林公園内の灰皿
済州島民俗自然史博物館 玄関脇の灰皿
公園の灰皿には水が入っていて、博物館のほうは、空っぽの壷だった。
今回済州島に行ってみて、韓国本土とはちょっと文化が違うと感じた。元々独立王国で、沖縄とか東南アジアとか、そちらのほうからの文化の影響もあるのではないかと思う。