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2009-09-10

昼めし 庚午南「味松」


今朝コメントで教えてもらって、職場から近い場所にあるので、早速やって来たわけなのだが、いや昨日、近場でめぼしい店は食べ尽くしたなどと偉そうにほざいたが、まだまだ名店は僕の前に姿を現していないだけだということが、よくわかった。


まずこの店、いちばん上の写真を見るとわかるように、何屋ということがどこにも書いてない。そば屋なのか寿司屋なのか、料亭なのか小料理屋なのか、高いのか安いのか、店構えを見ただけでは全くわからない。それ以前に、ここに飲食店があるということすら、通り掛かりの通行人には認識されないだろう。実際以前、実は僕はネットで見かけて、この店を訪れようとしたことがあるのだが、店名などをちゃんと覚えていなかったこともあるが、見つけられなかったのだ。

でガラスの引き戸を開けると、正面にあるのはトイレだったかな、とにかく訳のわからないスペースで、左右を見回すと、左に客席、右に調理場があることがわかる。二階席もあるらしい。でその左の客席というのが、50センチくらいの段差のある座敷になっていて、そこにお膳が4卓くらいあり、その奥に壁に向かったカウンター席がある。土間というか、靴で座れるテーブル席がないのだ。別に座敷でもいいのだが、給仕のおばちゃんはそこをいちいち、靴を脱いで上がったり下がったりしないといけないわけで、何故わざわざそんな面倒臭いことにしたのか、全く謎だ。

さらに僕はその奥のカウンター席の端が一席空いていたので、そこに座ったわけだが、メニューがどこにあるかわからない。店内を見回すと、まず入り口のガラスの引き戸の内側という、知ってる人以外は目に入らぬ場所に、今日のおすすめ料理の張り紙があって、さらに座敷の手前側の壁の上、これも真っ直ぐ入ってくるとまったく見えない場所なのだが、こちらに定番料理の張り紙がある。でこのガラス引き戸の内側の張り紙だが、僕は初め、靴を脱ぐときぱっと目に入って、芸能人のサイン色紙かと思ったのだが、そのくらい字が汚い。金釘流の典型で、判読するのにかなりの時間を要する。

とまあ、入り口を入って注文するまで、これだけのアドベンチャーが待ち受けているというわけなのだ。



メニューは膨大で、僕はまだ全貌を把握できないのだが、とりあえず無難に、豚しょうが焼き定食、780円、を頼んだ。お膳に載せられ運ばれてきた料理は、見た目普通のしょうが焼き定食なわけで、だいたいしょうが焼き定食と言えば、肉の薄切り厚切りの違いはあれど、なんらバリエーションがあるなどとは予想もしないわけだが、ここのしょうが焼き定食には驚いた。


まず本体のしょうが焼きだが、薄切り肉をタレに漬け込んで焼く方式なのだが、このタレが、いわゆる醤油にみりん、おろしたショウガ、という構成ではなく、砂糖がたっぷり入っていて、さらにショウガはおろしたものではなく薄切りにしたやつで、要は魚を煮付けるときに使うタレなのだ。これはやられる。一口食べて意外な味がして、食べ進むとこのタレが、豚肉に非常に良く合うことが納得できる。豚角煮の味なわけだから、ある意味王道なのだ。これはチェックでとんかつを食べた時と同じ驚きだったわけだが、広島では豚肉に対するこの味付けは普通なのか。

さらに、上のお膳の写真の右上にある小鉢、ほうれん草のおしたしかと思っていたら、かつお節の下に冷奴が隠れていて、ちょっと嬉しく驚かされるのだが、特筆すべきは冷奴の薬味が、ショウガではなくわさびなのだ。これも広島では普通なのか。僕は初めての体験だったわけだが、この冷奴にわさび、驚くほど良く合う。

帰り際に営業時間を聞いたら、昼は11時30分から、1時50分、頃まで、夜は6時10分頃、から10時半まで、とのこと。この微妙な10分と、それに、頃、と付けるのはなぜなのか。

というわけでこの店、店を入ってから出るまで、幾度とない謎と驚きを提供する、なかなか得難い店であるということが良くわかった。

これはこの店、何度か来て他の料理も食べてみなければなるまいと心を決めたわけだが、メニューに「若鶏の天麩羅」というのがあって、これは今まで、一度も食ったことがない。あとカレーもあったから、これもどんな味がするのか、確かめてみなければなるまい。

味松 (定食・食堂 / 古江、草津)
★★★★ 4.0