この本が発行されたのは2002年ですから、もう10年以上前になるわけですが、
今でもアマゾンの中華料理部門で発行部数第1位となっていて、
栄枯盛衰の激しいレシピ本の世界において、
この本はベストセラー中のベストセラーといえると思います。
ぼく自身もこの本は、発売当初に買って以来、折にふれて読み返していて、
家庭で作る中華料理を知るために最適な一冊であると思います。
この本が発行される以前の時代、
「中華料理を作る」といえば、
中華鍋と中国式のまっすぐで長い玉じゃくし、
それに油切りするジャーレンなどを買い揃えるなどして、
本格的にやらないといけないと思う人が多かったと思います。
例に漏れず、ぼくも中華鍋から玉じゃくし、ジャーレンまで、
全部揃えて持っていました。
テレビの料理番組でも、レシピ本でも、また街の中華料理屋でも、
中華料理はすべて、そうやって作られていたからです。
ところが今では、料理をする人でも、
中華鍋を持っている人は少数派になっているのではないでしょうか。
ちょっと前、京都ロフトの鍋コーナーを見てまわったとき、
以前なら売り場の大きな一角を占めていただろう中華鍋が置いていなかったのに、
びっくりした覚えがあります。
これはウー・ウェン氏の功績も大きいのではないでしょうか。
ウー・ウェン氏は、この『大好きな炒めもの』で、
「中華料理を作るのに、中華鍋はいらない」
「自分も中華鍋ではなく、テフロン加工の炒め鍋を使っている」
とはっきりと書いています。
ぼく自身も、中華鍋を使わなくなり、最終的に捨ててしまったのは、
ウー・ウェン氏の影響です。
中華料理にかぎらず、日本料理でも、どの国の料理でも、
料理屋で出されるものと、家庭で作られるものとは、
当然のこと、異なってくるでしょう。
料理屋で、家庭でも作れるようなものを出してしまっては、
お客が満足するわけがありません。
また同じ物をたくさんのお客に出さなければならない料理屋の料理と、
少ない家族に多くのおかずを作らなければいけない家庭料理とでは、
「効率のよい料理法」も、大きく違ってくるはずです。
ウー・ウェン氏が『大好きな炒めもの』で紹介するのは、
料理屋ではなく、家庭で作る中華料理です。
それまでの日本人が、料理屋で出される中華料理を家庭で再現しようと思い、四苦八苦していたところへ、
家庭で作られる中華料理がまったく異なるものであることを、日本に初めて広く伝えたという意味で、
ウー・ウェン氏は「革命的」だったともいえるのではないでしょうか。
そのような革命的な内容を持つこの本ですが、
ところがウー・ウェン氏の口ぶりは、高ぶることなど全くなく、
むしろもどかし気な、トツトツとしたものであることも、
この本の人気を支える大きな理由になっているのではないかと思います。
ウー・ウェン氏はこの本の中で、
ふだん自分が何の気なしに作っている料理を、
「レシピ」という形に表現するのがいかに難しいかを書いています。
「表現するのは、難しい。でも何とか伝えたい・・・」
『大好きな炒めもの』には、そのようなウー・ウェン氏の想いがあふれていて、
それが何とも可愛らしく感じます。
ぼくがこの本で知って以来、何度も作っているレシピは、いくつもあります。
その中でも最も多く作ったのは、「豚肉の焼きソバ」。
材料も調味料もシンプルでありながら、実においしくできる。
またウー・ウェン氏は、ニンニクをあまり過度に使わないところも、
日本人にとっては嬉しいところだと思います。
「ウー・ウェンさんにも惚れてるんでしょ。」
そうだよ、よく分かったな。
アマゾンで『大好きな炒めもの』をチェックする。 ⇒ こちら
※ウー・ウェン氏その他のオススメ本
『ウー・ウェンの北京小麦粉料理』 ⇒ こちら
「おっさんひとり推し」ホームへ