それって広島では、お好み焼きや中華そばが借り物ではなく、完全に地域に根差した、土着の食べ物になっているってことなんだよな。
しかしまあ、それはわかっているのだが、事前の情報なしで、ぼろい店に入るには、それなりの勇気がいる。
見た目のみから味をイメージすると、到底おいしいとは思えないので。
この「さっちゃん」もそういう店。
家からそれ程遠くない場所にあるので、ちょくちょく前は通りがかって、ここにこういう店があるってことはわかってたのだが、店の前には台やらバケツやらホースやら。
中を覗くとどうも雑然としている。
それで今まで、気にはなりつつも、入っていなかったのだ。
しかし今日、とうとう暖簾をくぐって、中に入ったのだ。
じゃん。
結論を言うとここの中華そば、すごくおいしかった。
当然まずビール。
ここは生があるのだった。
そしておでん。
牛だしなんだな、ここは、それが浸みて、やさしい味がする。
ここは焼肉がメインメニューで、ホルモンからカルビから、500円から1,000円という、わりかし安めの値段で出されているようだったが、今日は試さなかった。
豚足とか豚耳とかもあったな。
そして、中華そば、500円。
スープは鶏がら、雑味のほとんどない澄んだだし、でもきっちりとコクがある。
それにさわやかな醤油味。
わずかに鶏がら臭いのだが、これはこの方が好きな人もいると思うし、気になる場合もコショウを振れば問題ない。
ほんとにおいしくて、飲む程に身体に浸みわたるようだった。
なかなか食べられないレベル、だと思う。麺は、いわゆる普通の麺。
中位の太さの、ちょっと黄色味がかった、どちらかと言えばつるっとした、真っ直ぐなやつ。
それが普通の硬さにゆでてある。
でもここはスープが超オーソドックスだから、こういうオーソドックスな麺がよく合う。
それからここ、チャーシューがすごい。
もちもち。
もも肉を薄味で煮てあるのだが、もそもそ感は全くなし、どうやったらこんな風になるんだろう、という感じ。
焼肉屋だからな、いい肉が入るのかもな。
それが3枚、入っている。
それに大量のしゃきしゃき細もやしと、青ねぎ。
この店、おばちゃんが一人に、あと息子さんらしき人やら嫁らしき人やら、でやっているみたいだが、おばちゃんは、絵に描いたような肝っ玉母さん。
にやっとした目で、がははと笑うのだ。
「この店、できて何年になるんですか」と訊くと、「聞きたい?」ともったいを付ける。
もう40年になるのだそうだ。
景気が悪くて大変だね、という話になったら、
「景気は、悪いなんてもんじゃないよ」とのこと。
頑張ってほしいな。
さっちゃん (そば / 観音町、福島町、西観音町)
★★★★☆ 4.0