昨日の晩酌は・・・。
大好物の鯛アラを使って湯豆腐。
鯛アラは最高のだしが出るから、これを湯豆腐にすると言うまでもなく死ぬほどうまい。
昆布に酒だけで煮てポン酢で食べるのもいいけれど、昨日はうすくちしょうゆに塩で吸物の味にした。
アラの下処理に多少の手間がかかるけれど、あとは煮るだけだからとても簡単。
早速いっしょにやってみよう!
アラは両面に軽く塩をふり10分くらい置いておく。
80度くらいのお湯でサッと湯通ししたら水で洗ってウロコを1枚残らず取り除く。
鍋に昆布をひいて豆腐とアラを入れ、酒と水を1対2の割合でヒタヒタに注いで火にかける。
沸騰したら、アクを取りながら弱火で5分ほど煮てうす口しょうゆと塩で味付けし、ぶつ切りのネギとしめじを入れてさらに5分くらい煮る。
豆腐はたっぷりうまみを吸い込み、鯛アラはトロトロになっている・・・。
たまらないっす。
四条大宮のバー「スピナーズ」は金曜ともなると明け方まで賑わいを見せる。
トレードマークの赤いTシャツを着た熊の男性は、巨躯をカウンターに預けながら隣のお客さんと話し込んでいる。
金髪が目に鮮やかな鳳蘭を30歳若くした女性は、連れてきた友達5人とボックス席を占拠している。
ブルース・ウィルス似のアメリカ人は、初めて見る外人の女性を同伴している。
最近離婚が成立した板野友美似の女性は、イタリア料理屋のイケメンオーナーとうれしそうに話している。
座る席がなかった僕は、九十九一と桐島かれんがいるスタンドの丸テーブルに割り込んだ。
九十九一はがっしりとした日焼けした体にブルーグレーのスーツをノーネクタイで着こなしている。
長いワンレングスの桐島かれんはスパンコールのついた黒いタンクトップに細身の黒いジーンズ、白いシャツを羽織っている。
どう見てもお似合いの2人なのだが、実際桐島かれんは九十九一に気があるようだ。
話しながら隣にいる九十九一の腕をしきりに触る。
九十九一に寄り添うように身を預ける。
九十九一もまんざらでもない顔をしている。
やがてボックス席が空いたから、そちらへ移動することにした。
奥のソファには僕と、それから和久井映見。
手前の椅子に九十九一と桐島かれん。
スピナーズで出会った和久井映見と、僕は最近になって付き合いはじめた。
先日マスターのキム君に打ち明け、そのあと呼び出されて九十九一と熊の男性に話をし、昨日は初の同伴。
九十九・桐島とダブルデートの風情となった。
なれそめなどを根掘り葉掘り聞かれるかとも思ったけれど、そこは京都の人、すぐには距離を縮めてこない。
目をキラキラさせながら僕と和久井映見を交互に眺め、いかにも何か聞きたげな桐島かれんを制しながら、九十九一は外堀を埋めるような話をする。
「いや高野さんはほんと素晴らしい人なんですよ」
「僕は2人が付き合いはじめたと聞いてうれしかったですねえ」
「今度ぜひ4人で飲みに行きましょう・・・」
そのうち熊の男性も話に入ってきた。
「僕はブログを見ながらこれは1人で食べるには量が多すぎると思ってたんですよ」
「チェブラシカが実は映見さんってことだったんですか」
「変顔の写真は自分撮りしたようには見えませんよね」
熊の男性はそうして妄想を膨らませながらブログを見てくれているらしい。
奥ゆかしい京都の人たちとは対照的に、僕は九十九一に桐島かれんとのことを無遠慮にきく。
「2人は付き合っていないんですか」
「いないです、飲み友達です」
「2人ともバツイチなんだから付き合えばいいのに」
「僕も桐島さんも息子が2人もいますからもう十分ですわ」
ひとしきり話をすると、九十九一は店に置いてあるギターを手にとった。
達者な腕前で伴奏しながら桑田そっくりの声で「真夏の果実」をうたう九十九一。
桐島かれんはそれをうっとりとした様子で眺めている。
演奏が終わるとまたよもやま話になる。
桐島かれんが「帽子がほしい」とのことだったから、僕は自分の黒いソフト帽を桐島かれんに手わたす。
斜めにかぶったソフト帽がハリウッド女優かと思うくらい似合う桐島かれん。
九十九一はそれを惚れ直したかのように見つめている。
やがて九十九一と桐島かれんは2人で帰っていったから、僕も和久井映見と店を出た。