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2012-07-05

ゴーヤと豚肉の卵とじ


今日の晩酌。

ゴーヤと豚肉の卵とじ、昨日のブリ大根、厚揚げの焼いたの、ナスの塩もみ。



冷蔵庫に半分残ったゴーヤ。

ゴーヤ料理の定番は、ゴーヤチャンプルーだけれども、和食風に豚肉とさっと煮て卵でとじる。



豚肉はコマ肉150グラム。ゴーヤは縦半分に割ってスプーンで種をとり出し、3ミリ幅くらいに切っておく。玉ねぎ4分の1をうす切り。酒大さじ1、みりんとうすくちしょうゆ各大さじ2、おろしショウガ少々のタレを作っておく。卵2個を溶きほぐしておく。出し1カップは冷蔵庫に入っているのを使う。



フライパンを強火で熱し、豚肉を炒める。

豚肉の色が変わったら、玉ねぎとゴーヤをさっと炒める。

タレをそそぎ、全体を混ぜてひと煮立ちさせたら出しをそそぐ。

味をみて、中火でほんの1分ほど煮たら、卵をまわし入れ、フタをして火を止める。



ゴーヤと豚肉の卵とじの出来あがり。

ゴーヤと豚肉、卵の相性は、もちろん抜群。

出しがしみたゴーヤは、しみじみとした味。



昨日のブリ大根。

冷やして煮こごりになったのが、またうまい。



もう定番になっている、厚揚げの焼いたの。

フライパンを中火で熱し、厚揚げを表裏、軽く焦げ目がつくまで焼く。

おろしショウガと青ねぎをふりかけ、しょうゆをかける。



なすの塩もみ。

うす切りにしたナスに塩をふりかけ、よくもみ込んで5分ほどおく。

手でよくしぼる。

旬のなすは、何もかけなくてもうまい。



酒は、焼酎水割りを3杯。






今夜は晩酌で、気持よく酔っ払い、ちょっと疲れてもいたから、夜の散歩はお休みにしてこのまま寝てしまおうかとちょっと思った。

思ったけれども、今夜はキム君の店へ行かなくてはいけない。

何日か前、僕のブログのことをキム君と、その場にいたお客さんに教えた。

このブログには、キム君のことやお客さんのことを色々と書いているから、それがお店にとって迷惑になっていないかを、ちゃんと確かめておかなくてはいけない。



財布をみると、千円札が入っていない。

5千円札に、硬貨が700円。

5千円札を持って出れば、それを使い果たすのは確実だ。

「キム君の店では1杯だけ飲むことにしよう・・・」

僕は700円をポケットにいれ、キム君のバーへ向かった。



キム君の店に入ると、カウンターには若い女性のお客さんが2人。

奥に前にもこの店で会った、横山やすし似の男性がいて、手前は空いている。

女性と仲良くなるには絶好のシチュエーション・・・。



「やはり5千円を持ってくればよかった・・・」



手前の女性の、1席あけた横にすわった僕は、ちょっと後悔した。



女性は2人とも30代前半、奥の女性はちょっと板野友美似のかわいいタイプで、手前の、僕の隣にいる女性は、鳳蘭を30歳くらい若くしたようなちょっとボーイッシュなタイプ、髪を金色に染めている。

早速僕のブログの話になる。

「この人、『おっさんひとり飯』ってブログやってはるんですよ」

とキム君。

「何その名前、おかしいー」

と女の子達。

横山やすしの男性が、スマートフォンで僕のブログを開き、横から女の子達に見せる。

「うわ、この料理すご、私よう作らんわ・・・、しかも字が多い・・・」

ブログに登場してもらっている横山やすしの男性も、ニヤニヤと笑っている。



キム君も、

「僕も読ましてもらいましたけど、いやおもしろいス。しかも僕も登場さしてもらってうれしいス。これからもぜひ続けてください」

と言ってくれる。



「よかった、迷惑ではなかったみたいだ・・・」



僕は胸をなでおろした。



その時、以前この店で会った九十九一似の男性が、入口から入ってきた。

九十九一の男性は、年は僕より3つ4つ下、背広を着こなし、若きエグゼクティブ風。

鳳蘭とは反対側の、僕の右隣にすわり、キム君に焼酎をたのむ。

「まさにこれから、女の子達と仲良くなれるところだったのに・・・」

僕は横山やすしの男性が、女の子2人と話しているのを後ろ耳に聞きながら、九十九一の男性に向き直って話をはじめた。



九十九一の男性とも、「飲み屋のカウンター」の話になる。

「まだなかなか、関西式にお客さん同士で話すのに慣れないんですよ・・・」

僕は飲み屋のカウンターの、関西と関東のちがいについて話をする。

京都生まれの男性は、仕事の都合で東京でしばらく暮らしたこともあるという。

「僕はむしろ、大阪式にカウンターで激しく話すのは苦手なほうで、東京式に、バーテンが強く仕切るほうが好きなんですよ・・・」

それからしばらく男性と、四条大宮の色々なバーの話をした。

話をしながら僕は、京都へ来てから、今が一番、カウンターのお客さんと自然に話せていると思った。



話しているうちに、僕の酒がなくなった。

「もう1杯飲まへんのですか」

九十九一の男性がすすめてくる。

「いや今日は、700円しか持っていないから、もうお金がないんですよ・・・」

キム君の店では、焼酎は400円だから、2杯目を飲むには100円足りない。

そうしたらキム君。

「いいっスよ、そしたら今日は、ブログにも書いてくれたし、700円でいいっスよ」



「ブログを書いていて得をした・・・」



僕はありがたく、2杯目の水割りをちょうだいした。



やがて板野友美の女の子が帰り、横山やすしの男性と鳳蘭の女の子も混ざり、キム君が仕切りながらのカウンター全体の話となった。

話をしていると、鳳蘭の女の子が時々こちらをチラ見する。



「僕に気があるのかも・・・」



僕は時々、女の子にも話を振る。



しばらくしてキム君が、

「ここにいる、僕もいれて4人の男性の中で、誰が一番好みか教えてくださいよ」

と鳳蘭の女の子に話を振った。



「それは当然おれだろう・・・」



僕は思う。

しばらく考えていた女の子、



「九十九一の男性です・・・」



女の子にチラ見されていたのは僕ではなく、僕のうしろの男性だった。



そのうちキム君の携帯に、この店の常連である熊の男性からメールが入った。

熊の男性は、年は僕より1つ下、ガタイがよく、長髪にヒゲを生やして、熊のような風貌をしている。

「今から行って、酔えますか・・・」

時間はもう、午前3時になろうとしている。



今から熊の男性が来るとなると、知り合いである九十九一の男性は、すぐに帰るわけにはいかなくなる。

僕も、顔は知っているけれど、まだあまり話したことがなかった熊の男性と、話をしてみたいとは思うけれども、今日は疲れているし、お金もないし、さらに残るのはしんどいなと思う。

キム君も、もう営業時間は過ぎているから、

「九十九さん、付き合ってもらえます?」

念押しし、ニヤニヤ笑う九十九さんを笑って見ながら、OKの返信を熊の男性に送る。



鳳蘭の女の子は、自分の好みを打ち明けたことで気が楽になったらしく、さらにワインをおかわりし、よくしゃべるようになった。

女の子を中心に、おっさん3人とキム君のカウンターは盛り上がる。

やがて帰ることになった女の子に、

「今度はいつ来るの・・・」

僕はきく。

答えを聞いて、その時にはまたぜひ来ようと決意した。



女の子と入れ替わりで、熊の男性が入ってきた。

男性は、僕の左隣の席にすわった。

巨漢の熊の男性と、右隣にいる、やはり巨漢の九十九一の男性にはさまれて、僕はさながらプロレスラーの場外乱闘に巻き込まれたリングアナウンサーのよう。

熊の男性と九十九一の男性は、僕の頭越しに業務上の話をはじめたけれど、それを黙って聞く僕は、同世代の気安さだろう、保護者に囲まれた子供のような、居心地のよさを味わっていた。



僕の焼酎がなくなった。

お金はもう、1文も持っていない。

しかし九十九一の男性が、まだ熊の男性に付き合い残っているのに、僕だけ帰るのは申し訳ない気がする。

また同時に、この居心地のよさを、もっと味わっていたい気がする。



やがて、僕の頭の中で、何かがはじけた。

「キム君、ツケでもう1杯くれないかな・・・」

渋るキム君。

この店では、ツケはきかせていないのだろう。

僕は、さらに重ねてきいてみた。

「そしたらキム君、僕に1杯おごってくれない?」

しばらく考えていたキム君、

「わっかりやした、ブログにも書いてくれたし、気持ちもわかるし、おごりやしょう・・・」

僕にもう1杯、焼酎の水割りを作ってくれた。



それから熊の男性、九十九一の男性と、色々な話をした。

九十九一の男性がやがて帰ると、熊の男性とさらに話した。

おごってもらった焼酎をチビチビと飲むうちに、ガラスのドアから見える外の景色は、白み始めてきた。

焼酎を飲み終わり、「もうこれで十分」と思った僕は、熊の男性、後から入ってきたお客さんと話していた横山やすしの男性、それとキム君に別れを告げて、家へ帰った。



明るくなった大宮通を歩く僕は、京都へ来てはじめて、カウンターのお客さんときちんとした関係を結べたうれしさに、胸が弾んでいた。



「今日は疲れていたけど、キム君の店に飲みにきてほんとによかった・・・」



さっきの疲れは、もうすっかり吹き飛んでいた。

家に帰った僕は、スズメがちゅんちゅん言うのを耳にしながら、心地よい眠りについた・・・。



案ずるより産むが易しや。