冬にはやはり、温まる粕汁。紅鮭を使うと最高にうまいけど、豚肉もうまい。短冊に切った大根とニンジン、お揚げ、それにセリか青ねぎを入れるのが京都流。
まずはだしを取る。
5センチ角くらいのだし昆布と削りぶし大きく1つかみを4カップの水に入れて中火にかける。煮立ったら弱火にしてアクを取りながら3分煮て、ザルにペーパータオルを引いてだしをこし取る。
次にだしで、短冊に切った大根とニンジンを10分くらい、やわらかくなるまで煮る。
煮ているあいだに、鍋のだしを器に取り分け、1カップほどの酒粕をふやかしておく。
大根とニンジンが煮えたら、ふやかしておいた酒粕を投入。
大さじ3ほどのうすくちしょうゆと塩少々で味つけする。
味つけしたら、短冊に切った油揚げと豚コマ肉を加える。
豚肉の色が変われば出来あがり。
青ねぎをふって食べる。
日本酒が最高に合う。
料理を始めたばかりだと、買い物に店へ行っても、
置いてあるもののほとんどが、どうやって食べたらいいのかわからない。
そうなるとどうしても、家でレシピ本やネットを見て、作るものをすべて決め、
材料をメモって買い物へ行くことになりがちだ。
それはもちろん、悪いことでは決してないし、
人のレシピ通りに料理を作ってみるのはとてもいい勉強になる。
ただそれだけで終わってしまうと、
まだ料理の楽しみの半分だけを味わっていることになると思う。
料理の最大の楽しみは、「何を食べるか」を考えるところにあるとぼくは思う。
考えるとき、レシピをパラパラ見るのも悪くないけど、
それだといい考えが浮かばないことが多い。
それよりも、例えば豚肉なら豚肉、ほうれん草ならほうれん草という具合に、
まず食べたい材料を思い浮かべ、
次にその材料を何と合わせるかを考え、
さらに煮るのか焼くのか、どうやって料理するかを考えるという具合にしていくと、
食べたいもののイメージが膨らみやすいと思う。
考え始めにイメージがなかなか浮かばないときはもどかしいけど、
最終的に自分が食べたいもののイメージが完璧に描けたときは、
かなりの達成感と快感がある。
この何を食べるか考える作業は、家でやってもいいけれど、
実際に店へ行き、材料を目の前にして考えたほうが、イメージが浮かびやすい。
店に置いてあるものはその日によって違うから、
思わぬ掘り出し物をある日見つけることもある。
ただ料理を始めたばかりの人にとっては、まだ料理法を知らないから、
イメージを湧かせようにもやりようがないということはある。
でも、「そういうときは人に聞け」とぼくは言いたい。
料理法を人に聞くには、まずは個人商店がいい。
個人商店は、自分の店で売っているものの使い方を教えることも、
サービスの一貫と考えていることが多いから、
実に親切に教えてくれる。
住んでいる地域や仕事の勤務時間の関係で、個人商店へ行けないのなら、
スーパーでだって人に聞くことは十分できる。
アルバイトの若い人だと、聞いてもわからないと思うけれど、
鮮魚コーナーの担当者やパートのおばちゃんなど、
聞けばうれしそうに教えてくれる。
ただお店の人は、教えることはプロではないから、
初心者の欲しい情報は、かなりしつこく、根掘り葉掘り聞かないと
出てこないことも多い。
でもそうやって、お店の人とやり取りするのが、
買い物の大きな醍醐味なのだとぼくは思う。
「おっさんはお店の人にほんとにお世話になってるからね。」
いや全くありがたいよ。