昨日のオムレツがまだ残っているから、今日も引きつづきスペイン料理。
スペイン風ポトフ。
作り方は死ぬかとおもうくらい簡単。
鍋に豚スペアリブと鶏手羽元、ニンニク、ローリエを入れ、たっぷりの水を張って火にかける。沸騰したらアクをとり、弱火でコトコト1時間煮る。
塩コショウで味をととのえ、ゴロゴロに大きく切ったカブとキャベツ、ニンジン、ジャガイモ、玉ねぎ、缶詰のガルバンゾ(ひよこ豆)を入れて20分。
フォークで穴をあけたチョリソーとカブの葉を入れて10分煮る。
スペインでは具は皿に盛ってメインにし、スープは別にスープ皿によそうとのことだけれども、僕はおでん式に一緒くたにしてしまう。
粒マスタードを添える。好みでオリーブオイルや酢をかける。
ホクホクのカブ。
煮くずれる寸前のジャガイモ。
肉と野菜のうまみがたっぷりとしみ出たスープ。
晩酌を終えたら、四条大宮「スピナーズ」。
そろそろ出かけようと思っていると、九十九一から電話が来る。
「今日は来ないんですか・・・」
こうしてわざわざ電話をもらえるのはありがたい。
店へ入ると、九十九一と桐島かれんがカウンターに並んですわっている。
僕は桐島かれんの隣にすわる。
「あれ、今日は和久井さんはいないんですか」
「風邪をひいて寝てるみたいです」
「それは残念、ぜひまたダブルデートしたいと思ってたのに」
九十九一と桐島かれんのカップルは、すっかり安定感を増しているように僕には見える。
桐島かれんは、いかにも幸せそうという様子。
九十九一も、桐島かれんを頼りにしているのが伝わってくる。
「ブログに、和久井さんと会えないと不安になると書いているでしょう、あれ僕も男としてよくわかりますわ」
「九十九さん、私に1時間おきに電話してきたりするものね」
やがて話は、自分の死に方についての話になる。
「僕は酔生夢死が理想ですわ・・・」
九十九一は仲間にかこまれて楽しく一生を送り、ある日、
「じゃ、オレは明日死ぬから」
と宴会をひらいて死にたいのだという。
それを聞いていた桐島かれん、
「私はもう、明日死んでもいいわ・・・」
「おまえ、そんなことを言うのは自分の子供やまわりの人にたいして無責任じゃないのか」
と九十九一。
「でも私はいま幸せだから、幸せなまま死にたい・・・」
隣には草彅剛似の男性がぽつねんとしていた。
「年上の女性とはその後どうなの」
と話しかける。
「パーティーに誘われているけど仕事で行けそうにないし、進展はないんですよ・・・」
そこで僕は、彼女の作り方についてうんちくを披露する。
「おまえ、学生時代に学年で100人くらいの女性はいただろう、その中で好みの女性は何人いた?」
「3人くらいです」
「そうすると、30人の女性に会わないと、好みの女性には出会えないということなんだよ」
「なるほど」
「さらに自分が好みの女性のうち、相手も自分を好きになってくれるのが10人に1人の割合だとすると、相思相愛の相手を見つけるには300人の女性に会わないといけない計算になる」
「たしかに」
「だから合コンでも何でもして、とにかくガンガン、女性に会っていくのが大事なんだよ」
「おっさんはいま彼女がいますから、説得力がありますね」
そこへ熊の男性が口をはさむ。
「でもあまり合コン慣れしてしまうと、かえってマイナスになることもあるんだよ。それより君は、取引先の会社とかに女性はいないのかい」
「いますけど、おばさんばかりなんです」
「そのおばさんを狙うのが大事なんだ。1人のおばさんの背後には、だいだい5人は、若い女性がいる。取引先に気の利いたお菓子でも持っていっておばさんに気に入られれば、若い女性を紹介してくれたりするものなんだよ」
「ふむふむ」
「1人のおばさんの背後に5人の女性がいる。さらにその5人の女性の背後にも、5人の友だちの女性がいる。それを4回たどるだけで、5の4乗だから600人を超える女性と知り合いになれることになる」
「なるほど、ゴキブリ理論ですね。それはいいな」
話も盛り上がり、そろそろ帰ろうかとお勘定をしていたら、マスターのキム君の奥さん、江角マキコ似の女性が僕の隣に来た。
先日のブログに、
「キム君は女性にモテたがっている」
と書いたことが、ショックだったのだそうだ。
「こういう職業についている男性の妻として、仕方ないことだと思うんですけど・・・」
「そんなことありません、配慮が足りなくて申し訳ありませんでした。」
僕はお詫びに、江角マキコにお酒を1杯おごり、しばらく話をさせてもらった。
「でもおかげで、キム君といろいろ話ができて、夫婦の絆がつよまってかえってよかったです」
「いえいえ、ほんとにすみません」
しおらしい江角マキコがかわいくなり、僕は江角マキコと腕を組む。
するとキム君がつかつかとやってきて、
「僕の最愛の妻ですからやめてください。」
おこられた。
そうこうしているうちに、九十九一といっしょに店を出た桐島かれんがもどってきた。
「九十九さんはもう寝るらしいけど、私は今日は、まだ飲みたいんだ。」
僕もそのまま居残ることになり、桐島かれんの勢いにあおられてさらに焼酎お湯わりを2杯飲む。
店を出たのはまたしても朝の6時、あたりはもう明るくなっていた。
「おっさんいい年して元気だね」
さすがにもうフラフラだよ。