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2012-04-10

花見から帰ってちょっと一杯。
「えんどう豆とじゃこの和え物」
「ちくわおろし」



今年は全国的に、桜の開花が遅いようですが、京都では今週ようやく見頃を迎えました。

春になると狂ったように、無数の花を咲かせる桜は、どこにあってもきれいなものですが、やはり京都の古い寺や町並みを背景にすると、いっそう見栄えがするように思います。

木造建築と桜や紅葉、それに松などとが並んだ姿は、まさに「日本人の美意識」の原点を見るような思いがしますよね。



それで昨日は、「哲学の道」を下り、「南禅寺」、それから「円山公園」、「祇園白川」というコースを、歩いてまわりました。

京都は街がこじんまりしていますから、あまり車などに乗ってしまうより、歩いた方が、より風情を楽しむことができるでしょう。



哲学の道は、哲学者「西田幾多郎」がよく散策していたことから、この名前が付けられましたが、山あいの道約1キロにわたって桜が植えられ、歩きながら桜を楽しむことができます。

道の所々には、山あいの東屋風の、たいへん洒落たカフェがあったりもしますから、そこですこし休憩するのもいいですね。



哲学の道の終点から、さらにすこし南へ下がったところにある南禅寺は、「京都五山」のさらに上に、「別格」として据えられた、由緒ある禅寺ですが、京都の観光名所としては、清水寺や金閣・銀閣、嵐山などに比べると、それほど有名ではないでしょう。

しかしこの境内や庭園のつくりは本当に見事。「京都で紅葉を1ヶ所みるならどこがいいか」といえば、僕はこの南禅寺と言いたいほどで、桜もまた大変いいです。



禅寺がその世界観を、庭園のつくりに反映させたことは、よく知られていますよね。

「石庭」などがその代表で、石の1つ1つに、意味があったりするわけですが、南禅寺の場合には、木々をふくめた境内の全体が、非常に計算されてつくられているように感じます。

桜や紅葉、松などの1本1本が、まるで「生け花」のように、緻密に配置されているんですね。

とくに紅葉は、「赤」や「黄」など色の異なった紅葉をうまく組み合わせ、さらにそこに、松や苔の「緑」がうまくからんでくるようになっていて、ため息が出るほどきれいです。

一方桜は、建物の黒い肌の色とからむようになっていて、「ピンクと黒」というのが、またきれいなんですね。

南禅寺は、その「これでもか」といわんばかりの演出に、「あざとい」と感じる人も少くないようですけれど、僕は大変いいと思います。



参道を上がると、まず山門にむかって桜が1本、枝を伸ばしているのが目に入り、これが「序章」ということになるかと思います。



山門の階段をトントンと上がると、今度は山門の柱と梁でできた「額縁」のなかに、桜がパッと目に入るようになっている。

山門の額縁は、正面の一番いいのは真っ赤な紅葉が見えるようになっていて、両端が桜です。



山門から法堂へむかって歩いていくと、その法堂が、一番きれいに見える場所には、かならず桜が、建物にからむようになっている。

ですから南禅寺の場合、桜の季節には、建物を撮影すると、かならず自動的に、うまい具合に桜が画面に入ってくることになるんですね。



南禅寺のような「本山」は、田舎から来た檀家さんに、「さすが京都の本山はちがう・・・」と尊敬の念をいだかせることも、宗教組織として重要な任務だったでしょう。

それを石庭のように、訳のわからない石の形や配置などによるのでなく、「木々と建物の、色の取り合わせや配置」という、誰にでもパッと見てわかる形を徹底的に追求しているのが、南禅寺のすごいところだと思います。



南禅寺といえば、湯豆腐が有名です。

境内にも、観光ガイドブックなどに必ずのっている有名店がありますが、そこは今では創業者とはまったく関係のない人が営業していて、ネットを見ても、近所の土産物屋で聞いても、あまり評判がよくないですね。

それよりも、門を出て西へすこし行ったところにある「順正」が、間違いないのじゃないかと思います。



湯豆腐にお酒は欠かせません。

まずビール。そのあとお燗。



料理は初めに、豆乳と胡麻豆腐、それに煮しめが出てきます。



あとは味噌田楽と天ぷら。

すべて精進の献立になっています。



湯豆腐。

順正では、鍋を冷たいまま出してきて、それを弱火で温めてくれるようになっています。

やがて「さあどうぞ」といってフタを開けてくれる時には、豆腐は「外は温かいけど中は冷たい」状態で、これがまたおいしいんですね。

豆腐は「ソフト木綿」で、絹と木綿のちょうどあいだくらいの固さです。



この他にご飯とお新香、それにお菓子が付いてきて、1人前3千円。

湯豆腐は、4千円以上とる店も少くありませんから、悪くないのじゃないでしょうか。



南禅寺からすこし南西に行くと、知恩院と円山公園。

知恩院は、桜の額縁が有名ですが、昨日はもう時間が終わっていて入れませんでした。



円山公園は、いわゆる「花見の名所」です。

ブルーシートのコーナーもあり、ここでは学生や会社員が、場所取りをして花見をしています。

たくさんある床几台では、お店から注文したものを食べられるようになっていますから、少人数ならこちらを利用するのがいいですね。



すこし風も冷たくなってきたし、ここは定番の、おでんに熱燗。

屋台のおでんなど、たいしておいしい物じゃありませんが、雰囲気を味わうには、これで十分です。



円山公園から、さらに祇園白川へまわりました。

ここはライトアップがされていて、ものすごくきれいだったですね。



景観保存地区の、電柱が一本もない場所に、和風建築の店が立ちならび、川が流れ、そこにライトアップされる桜。

「さすが」とうなるしかありません。



ほんとにきれいです。



1日でまわることができる場所など、いうまでもなく限られていて、京都にはまだまだ、桜の名所が山のようにあるわけです。

日本のもともとの「美しさ」を保とうとする、京都の多くの人たちの努力は、「観光都市だから」という言葉で簡単に片付けられてしまいがちですが、「経済優先」の現代日本で、あくまで美しさを優先させようとすることは、そうそうたやすいことではないだろうと思います。



* * * * *



京都の桜を満喫し、もうお腹もそれほど空いていなかったので、家に帰ってから、簡単なつまみでちょっとだけ酒を飲みました。



えんどう豆とじゃこの和え物。

えんどう豆をさやから出して、さっと湯がき、じゃこと一緒に、少しの醤油とみりんで和えます。

えんどう豆も、そろそろ出盛りとなってきましたね。



ちくわおろし。

斜め切りにしたちくわに、大根おろし。ポン酢をかけ、七味をふります。

これは手軽で、思いのほかおいしいです。



酒は、もう十分飲んできたので、焼酎をお湯でうすく割ったのを飲みました。