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2011-05-19

原子力資料情報室

お世話になっている先生が、僕が原発の問題について取り組みたいと相談したら、原発について何も知らないあなたが、ひとりでなにかしようとしたって、たいしたことができるわけがないのだから、まずは高木仁三郎氏の本を読み、高木氏が生前代表をつとめた「原子力資料情報室」を訪ねて話をきくようにと助言してくれ、僕はそれにしたがって、昨日の午後、新宿まで出かけてきたのだ。

事務局長の伴英幸氏が、お忙しいところ、時間をとってくださって、ほんとにていねいに応対してくださった。温厚な、きちんとした良識をもった方という印象で、素人の僕がなにも知らずに言うことを、きちんと受け止め、ちゃんと答えてくださった。僕が以前、仲間や学生といっしょにつくった「フーリエの冒険」を、偶然読んでいてくださったのも話が早かった。

僕がやりたいとおもっているのは、「子育て中のママ」を中心に、錯綜する放射能や原発についての情報を、自分なりに咀嚼して、「自分がどうやって生きていけばいいのか」ということを、自分で決められるための、仲間づくりをすることだ。小さな子どもを育てるママは、とくに東北や関東などのひとたちは、放射能のことが、じっさい深刻な問題であるということと、小さな子どもは「自然」そのものであり、それを身近で見ながら、「人間にとって自然な社会」がどういうものかを、考えていきやすい立場にあるということがある。

どんなにヘボくてもいいから、自分なりに考え、自分なりの意見をもつということが、この場合いちばん大事だ。問いはあくまで、「自分がどのように生きるか」ということだ。電気をあまり使わない生活を、するのか、しないのか。放射能に汚染された場所に、住みつづけるのか、引っ越すのか、それを決めるのは、あくまで「自分」だ。ひとにとやかく指図される問題じゃない。だから団体として、「反原発」にしても、「原発推進」にしても、特定の結論をあらかじめもつということにはしたくない。多様な意見がありながら、それをおたがい認め合い、仲間どうしでいられるような、そういう雰囲気にしていきたい。

また同様に、団体として、政治的な活動も、やらないようにしたい。デモとか、署名運動とか、意味がないとはおもわないし、やりたいひとはやったらいいが、団体としてはやらない。そういうものはどうしたって、「結論ありき」になるからだ。でも国民は全員が、「投票」という政治活動をおこなうのだから、それにまつわる活動をひとりひとりがおこなって、政治的な意思を表明していけばいい。

そんな話を、反原発団体のトップである伴氏にさせてもらったのだが、伴氏はそれをおもしろがってくれた。

いま全国に、反原発の団体は300ほどあるそうだ。まず多いのは、実際に原子力発電所が建設される地元での団体。それから都市部で、それを支援する団体。さらに都市部には、国会議員に働きかけるなど、政策をあつかう団体もある。でもいま僕が考えているような団体は、伴氏が知るかぎりにおいて、ないとのこと。
「もしきちんと立ち上がっていったら、それなりにおもしろい、意味のある活動になる可能性がある」
と言ってもらえた。

原子力情報資料室では、電力会社などが出す情報とべつに、さまざまなルートから情報を収集し、調査研究をおこない、それを世の中や会員にたいして公開していくという活動をしている。最近では、すでに1995年の時点で、福島第一原発の破局的な事故の可能性を、ほぼ正確に予測していたということで話題になり、あらためて評価されている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E8%B3%87%E6%96%99%E6%83%85%E5%A0%B1%E5%AE%A4

僕は昨日、さっそく会員登録し、情報を送ってもらうようにしたのとともに、自分たちのところへ、伴氏やスタッフの方に、ときどき話をしにきてもらうということについて、伴氏から快諾をいただいた。

団体の会費は、子育てママが、まったく無理なく払える程度の、できるだけ安い値段にしたいとおもっている。当面、僕がそれで生活できる見込みはないのだけれど、高木仁三郎氏も、原子力情報資料室にかかわりだした当初、翻訳のアルバイトをして生計をたてたというから、僕もそれに見習おうとおもっている。