市内の中心部には、それこそみっちゃんだとか、八昌だとか、観光客をたくさん集め、休日には行列ができるような店がある。
しかし広島市民は、そういう店にはあまり行かない。
聞くとだいたい、家の近所にお気に入りの店があって、そこへ行き倒すのだ。
僕の住んでいる界隈にも、けっこうな数のお好み屋がある。
それが表通り沿いにはむしろ少なくて、住宅地の裏通りみたいな場所に店を構えているケースが多い。
昔はふつうの主婦が、自宅を改造してお好み屋を始めたりしたのだそうだ。
子供をあやしながらお好みを焼いたというから、今のようにパートの口もあまりない時代、お好み屋は子持ちの女性ができる仕事、という位置づけでもあったのだろう。
実際小さなお好み屋は、仕入れから仕込み、調理、接客まで、女性が一人で切り盛りすることが可能である。
しかし何故、お好み焼きなのか。
戦後に登場し、古くからの歴史や伝統を持つわけでもない、一つの食べ物が、広島という場所で特異的に、何故毎日のように食べられるものにまで広がっていったのか、本当に不思議である。
と不思議に思いつつ、今日は近所でお好み焼き。
秋の晴れた休日の午後、ビールを一杯やりながらお好み焼きを食べるというのは、一つの贅沢である。
この店は10年前に始めたそうだが、美人のママにお手伝いのおばちゃん。
客は僕だけだったのだが、目の前で次から次へと、何枚ものお好み焼きが焼かれていく。
近所に配達もしているのだ。
「焼き方は誰に習ったんですか」と聞くと、
「最近はオタフクさんが講習してくれるんですよ」とのこと。
麺を初めに生地にのせてしまう三八系の焼き方ではなく、ソースで味をつけ炒めた蒸し麺に、最後に本体をのせるやり方だ。
「でも焼き方はその店それぞれですから」とも言っていたが、この店では卵を割ると、お好み焼きのサイズよりひと回り大きな円形に、それをていねいに伸ばしていく。
そうするとその上に本体をのせ、最後にひっくり返した時に、お好み焼きがかわいい玉子のお帽子を被ったようになるのである。
これがこの店の工夫なのだろう。
肉玉そば入り550円。
麺にはそれほど強く火を通さないから、蒸し麺のぷにぷにした食感がする。
それを食べながら、ああ、お好み焼きはやはり焼きそばを、生地と玉子で封じ込めたものであって、オムそばとかそういう洋食の一種なんだと、改めて思った。
ちいちゃん (お好み焼き / 東高須)
★★★☆☆ 3.0
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