冷麺と言えば、韓国である。
しかし広島では、冷麺と言えばつけ麺のことを指し、韓国の冷麺は「韓国冷麺」と呼ぶのだが。
僕は韓国で冷麺を食べたのは数回で、また日本でもそれほど冷麺は食べないから、知ったような口は利けないことはもちろんなのだが、印象として言えば、韓国の冷麺と日本の冷麺との大きな違いは、麺である。
韓国の冷麺は糸のように細くて、色が濃い。
そば粉が主成分で、片栗粉や小麦粉をつなぎとして使うから、そばの色なのである。
味もそばのしっかりした味がする。
それに対して日本の冷麺は、そば粉を入れないのが多い。
たぶん。
盛岡冷麺には、そば粉は入れないそうだ(*)。
なので味が淡白で、片栗粉が入っているから噛み応えはあるのだが、太さも太めなので、ちょっとところてんみたいな感じがする。
何故そば粉を入れるのをやめたのか、色々理由はあるのだろうが、麺にインパクトがない分、日本の冷麺は焼肉のあとの仕上げには良いが、単品料理としての魅力にイマイチ欠けるところがあったと思う。
さて今回、南大門の冷麺。
南大門は広島における焼肉店の老舗で、1961年の創業、親子三代で通いつづける人もいたりするらしい。
焼肉はもちろんだが冷麺も評判が良く、コメントで薦めてももらったので、来てみる事にしたわけだ。
昼の1時15分ごろ到着したのだが、まだ満席で、昼からビールに焼肉、という人もけっこう多かった。
冷麺、シングルは1,000円だが、これはダブル、1,300円。
巨大な丼に山盛りで登場。
麺は倍量になるそうだ。
この冷麺、早くも結論を言ってしまうと、大変おいしかった。
まず麺がおいしい。
ここはそば粉をきちんと使っていて、そばの味がしっかりする。
絶対このほうがおいしいと思うのだが、他ではどうしてそうしないのだろう。
そんなに他のことは知らない訳だが。
とにかく、二度も言ってしまうが、このそばの味がしっかり利いた麺が、大変おいしかった。
汁もなかなかおいしかった。
写真でも分かるとおり色がけっこう濃いので、醤油などのうまみ系の調味料を、色々使っているのだと思う。
韓国人の味覚と日本人の味覚はかなり大きく違うので、特にスープに関して、韓国の味をそのまま日本に持ってきてしまうと、日本人の口に合わないことがある。
いちばん大きいのは、日本人には「うまみと塩気」が足りないように感じてしまうのだ。
なのでそれを良い加減に追加しているのだろう。
具は、キムチ、チャーシュー、酢で和えたきゅうり、錦糸玉子、りんご、それに薬味で青ねぎとゴマ。
韓国では冷麺には牛肉が入っていて、豚肉だと冷やすとどうしてもちょっとモソモソしてしまうのだけれど、値段的なものもあるのだろう。
それから特筆すべきは、卓上に置いてある辛味噌。
何も入れなくても十分おいしく、辛さもちょうど良かったので、半分ほどはそのまま食べたのだが、コメントには「これをたくさん入れる」と書いてあり、店のおばちゃんに聞いても、「お好みだが、自分はそれと酢をたっぷり入れる」と言っていたので、僕も試してみたのだ。
これがすごい。
この辛味噌、ただ辛いのではなく、何だかは分からないが、うまみの素が色々入っているのである。