2003年に発売された、ロックバンド「レッド・ツェッペリン 」の2枚組DVD。
僕は最近購入し、時間が無くてなかなかきちんと見れなかったのだが、やっと見終わったという次第。
この6時間近くにもなるDVDを見て改めて思うのは、レッド・ツェッペリンというのは、何かの枠にはまってしまうのを極度に嫌う人たちなんだな、ということだ。
デビューしたレッド・ツェッペリンの何が画期的であったかというと、1960年代後半、ビートルズを中心としたボーカル中心のロックバンドが下火になり、それに代わって大音量の、歪んだギターの音を前面にすえた「ハードロック」のバンドが多数、台頭してくるのだが、その時彼らが基盤としていた「ブルース」という枠組みを、ツェッペリンが取っ払ってしまったところにあるのだと思う。
ツェッペリンが開拓した、ブルースとは全く異なる新たな地平に、後続は次々参入し、その延長に「ヘビー・メタル」という分野が確立していく。
しかしツェッペリンは、今、ヘビー・メタルのバンドではない。
何故なら彼らは、自分たちが固定したイメージで捉えられるのを拒否し、新たな挑戦を始めるからだ。
ビートルズのアルバム「アビー・ロード」を抜き、全英、全米ナンバーワンになった2枚目のアルバムに続いてリリースされた、アコースティックな音を前面に出した3枚目のアルバム、「LED ZEPPELIN Ⅲ」は、前作のような歪んだ、激しいギターサウンドを期待していたファンからは、非難ごうごうだった。
しかしツェッペリンは、次作、4枚目のアルバムの中の「天国への階段」という曲において、激しいギターとアコースティックな音調とを融合させた、全く新しい音楽を再び開拓し、それは後続のバンドにより「プログレッシブ・ロック」などという分野として確立されていく。
しかしまたしても、分野が確立される頃にはツェッペリンはそこにはおらず、新たな挑戦を始め、これから、というところでドラマーが死亡、解散するに至ってしまう。
だからツェッペリンは、「ロックバンド」ではあるが、それ以上の細かな分野分けは出来ない。
レッド・ツェッペリンは、レッド・ツェッペリンである、というより他に、呼びようがないのである。
ライブ演奏のスタイルもまた、おなじ考え方に貫かれている。
普通のロックバンドは、事前に曲の進行をメンバーと細かく確認し、ライブではその通り演奏するものだと思うが、ツェッペリンはそうではなかったということが、ライブ映像を見るとよく分かる。
ステージでのその場の即興で決められる部分が大きく、メンバー同士が目を合わせながら、主にはギターのジミー・ペイジだが、場合によっては他のメンバーが、次への展開を主導していく。
だからあのような、緊張感あふれる、生き生きとした演奏が可能なのだな。
「ロック」というのはたぶん、社会などによって押し付けられる枠組みに反抗し、本来の生き生きとした人間性を確認しよう、ということを目指した音楽なのだと思う。
であるならば、レッド・ツェッペリンこそはまさに、本当の意味でのロックバンドである、と言えるのだな。