離婚したのは昨年だが、十数年前から別居していた。「釣った魚に餌はやらない」という言葉があるが、僕の場合それを極端にしたようなもので、毎晩仕事先の仲間と飲みに行き、仕事が大詰めになると1ヶ月ほども職場に泊まりこんだりしていて、家庭を省みることが全くなかった。愛想を尽かした元妻が、子供を連れて実家に帰ってしまったわけだが、あまりに当然というべきだ。
それまで家事は全くやらなかったが、一人になり仕方なく、料理なども始めてみたところ、面白くなり一気にハマった。それまで料理をレシピを見ながらしか作れなかったのが、だしを自分で取ってみたのをきっかけに、自分なりに何を作ろうか考え、料理を作れるようになったのだ。まあしかし、料理にハマったというのは、ただ面白いだけのことじゃなく、一人になった寂しさを、埋め合わせる何かが欲しかったのかもしれないと、今になってみると思う。
一人暮らしも長いから、今では家事全般をこなすようになっているが、あの時この半分でも、もし家事をしていたら、離婚するような事にはならなかったのじゃないかと思わなくもない。
「釣った魚に餌はやらない」に代表される、世の中を「仕事」と「家庭」に分け、男は仕事は頑張るが、家庭はひたすら安らぎを得る場だとする考え方は、僕くらいの年から上の世代のものなのじゃないかという気がするんだが、どうなのだろう。もちろんこういうものは個人により大きく違うもので、一括りに「世代」と言ってしまうのは乱暴だが、若い世代は料理する男性も多くなっていると聞く。
今は女性だって仕事をする時代なのだから、「仕事は男の担当で、家庭は女の担当」とする考え方は、全く意味がない。「仕事と家庭」を「経済と生活」と言い換えてもいいと思うが、あくまで経済が優先であり、経済のために生活が犠牲になっても仕方がないとする考え方が、日本ではまだまだ支配的だろう。それは今回の原発問題を見ても、よく分かる。経済的合理性のために、原発をあくまで推進し、放射能汚染の基準を変えて、賠償金をケチろうとする。
日本が抱える問題の根幹は、この経済と生活を「分ける」ところにあると思うが、それが変わるのは、そう簡単じゃないと思うんだよな。自分がそうだったから言うわけじゃないが、人間、よっぽど痛い目を見なければ、考え方の根本を変えることにはならないんじゃないか。
これから日本が、もっと低迷していき、このままじゃ本当にダメだとみんなが気付くようになるのと同時に、料理する男性が優勢であるような世代が育っていく。そうなって初めて、日本は大きく変わることができるんじゃないかと思うんだよな。
エネルギーや金融、安全保障の問題は、もちろん大事なことだが、「今日何を食うか」ということも、それに劣らず大事なことだ。そこに優劣を付けないことが、今何より必要とされているのじゃないのかな。
一昨日の秋鮭アラの味噌漬けを、少し残してあったのを、昨日ふたたび焼いて食った。やはり一日置いたほうが、味がしっかりしみるようだ。でも昨日のがまずいことはなかったから、わざわざ一日置かなきゃいけないものでもないだろう。
魚を漬けて焼くというのは、今回初めてやってみたが、いいものだ。べつに難しいことは何もなかった。漬けダレの調整が、唯一とも言えるポイントかと思うが、これは要は味を見ながら、自分がおいしいと思えるように、調味料を加えていけばいいだけだ。豚肉の味噌漬けとかも、やってみたらウマそうだよな。
昨日はこれだけだと、なんだかつまみが足りない気がしたから、サンマの刺身を再びやってみることにした。こないだは皮を剥ぐのと、小骨を削ぎとるのを忘れたので、ちょっとイマイチだったのだ。
青光りするウマそうなサンマ。特売で98円。グルメシティの兄ちゃんに聞いたが、その日に市場から仕入れたものだから、十分刺身にできるとのことだった。
昨日は3枚に下ろすところで、ちょっと失敗して、包丁が骨を切り下へ出てしまった。まあしかし、大勢には影響がない。
皮を剥ぎ、小骨の部分は肉ごと包丁でそぎ落とす。魚の肉は、思ったより柔らかく、気を付けないとミンチのようにグチャグチャにしそうになるんだよな。しかしなんとか、そこそこ形にはなった。
これは脂がのってトロトロで、非常にうまかったが、まだちょっと失敗したことがあった。少し臭みが残ってしまったのだ。これは包丁やまな板の扱いに、問題があったのかもしれない。三枚に下ろしたあと、汚れたまな板の上に、また魚を置いてしまった。そのため臭みが付いてしまったのじゃないかと踏んでいるのだがどうだろう。
ナスの塩もみもつくづくうまい。甘くてプリプリしていてたまらん。
味噌漬けだけだと足りないと思ったが、サンマを加えたら逆に多すぎて、昨日は酒を1合飲んだら腹一杯になってしまった。焼酎やウィスキーだと、中途半端に飲んでしまうと、興奮して逆に寝れなくなるが、日本酒は1合なりに、ちゃんと眠くなるのがエライところだ。