2011-09-01
福島からのお客さん
こないだまで焼きそばだの、うどんすきだの、麺を使った大皿料理に凝りに凝っていた僕だったが、サンマの登場により一転宗旨替え、このところ単品料理に精を出している。
大皿料理だと、材料を組み合わせていかないといけないから、サンマだの茄子だのピーマンだのといった個性の強い材料は、どうしても弾かれてしまいがちになる。しかしそうなってしまうと、秋の味覚を十分味わうことができないからな。
昨日はサンマ、198円でまだちょっと高いのだが買ってしまった。これだけ秋の気配が濃くなってくると、サンマを食べないわけにはいかない。こないだサンマを食べた時には、初めて使う焼き網で、久しぶりの焼き魚だったものだから、塩は振り忘れるわ、焼き加減は失敗するわという体たらくだったが、今回は完璧。とろけるかと思うような脂の乗ったこのサンマ、やはり魚のなかで一番うまいと言い切ってしまって間違いないんじゃないか。
冷蔵庫に茄子が残っていたので、おしたしにした。茄子がおしたしにできるって、知らない人も多いんじゃないか。僕は京都へ来て、八百屋のおばちゃんに聞いて初めて知った。
ごく軽く塩を振った水で茄子をゆで、水にさらさずそのまま冷やす。冷えたらよく絞り、適当な大きさに切って、すり胡麻にしょうゆでも、白味噌和えでも、何でも好きなものをかけて食ったらいいのだ。
柔らかい茄子の歯ごたえが楽しい一品となるわけだが、昨日はゆで時間が足りなくて、ちょっと硬さが残ってしまった。
スーパーで、福島県産のピーマンを発見したのだ。福島の野菜が売っていたらぜひ買いたいと思っていたのだが、今回初めて見つけた。昨日はおかずが十分あったから、ピーマンは後日食べようと思ってたのだが、茄子のおしたしが失敗したから、急遽おかかで炊くことにした。
ピーマンというと僕はサラダにするとか、肉詰めにするとか、どちらかというと洋風の食い方しか思い浮かばなかったのだが、いやいやいや。ピーマンはおかかやジャコにしょうゆというのが非常に合う。京都で唐辛子をジャコやおかかと炊いたりするのと、まったく同じ話だ。
ただゆでて、おかかやジャコにしょうゆをかけて食うのもうまい。昨日は茄子をおしたしにしたから、ピーマンは炊くことにした。
水にピーマンとおかかを入れ、酒とみりん、うす口しょうゆで味を付け、強めの火で炊いて、最後は煮詰めてしまう。くたくたに味がしみた、ほろ苦いピーマンというのが、またなんとも言えないわけだ。
あとは冷奴。
それからキュウリとセロリの浅漬。昆布と鷹の爪といっしょに塩もみし、酢をふりかけたキュウリとセロリを、タッパーに入れて冷蔵庫にしまっておくというだけの話だが、これがうまい。もうスーパーの、味の素がしこたま入った浅漬など食えないし、食う必要もないということだ。
昨日はこれだけつまみがあったもんだから、つい酒が進み、いつもは1合半か2合のところ3合のんだ。
ピーマンの炊いたんを作る時、福島県産のピーマン、一つを割ったらあおむし君が住んでいた。福島からはるばる、家まで遊びに来てくれたわけだ。茶色いうんちを、小さな体に似合わず驚くほどたくさんして、このピーマンが、あおむし君にとっては住み慣れた我が家なのだろう。
一回ゴミ袋に放り込んだのだが、福島からせっかく来てくれたのに、それも何だと思って、とりあえずピーマンのフタをして、ベランダに置いておくことにした。僕は生き物の世話をすることが、大の苦手だから、たぶん死んでしまうことになるのじゃないかとは思うが、今のところはまだ元気に、ピーマンの中を動き回っている。