この店は、場所を移ってから6年ほど、前の場所で12年ほど、計19年になるとのことで、それほど古いわけじゃない。どちらかというと、新しいラーメン店だよな。実際店内は、おしゃれなカフェ風で、大きな白い椅子が置いてあったり、またセットメニューにからあげが付いたりして、若い人にターゲットを絞っていることがわかる。
そういう場所で出てくるラーメンが、「中華そば」。いかにもという、昔ながらのどんぶりに入ってきて、店のモダンな感じとのミスマッチの面白さを狙っているのだと思うが、実際このラーメン、僕は京都の伝統的な中華そばがどんなものだか知らないので、ちゃんとは分からないが、昔ながらの中華そばに、今風のアレンジをした、というものなのじゃないかと思うのだが、そのアレンジの仕方が、小技を使わず、わりとストレートに勝負している、という感じがするところが、いいのだよな。
まずスープがいい。鶏と豚骨を使っているらしいが、濃厚なコクの、一本勝負、という印象。新しいラーメンはよく、魚介ダシやら、色々な油やら、というものを加えることによって、目先を変えるのが多いと思うが、それはそれで良いのだが、僕はこういう、まっすぐなのが好きだ。実際このスープ、とてもおいしく、最後まで飲み干してしまう。
それから麺。僕はこれにしびれたが、昔ながらの、食堂のラーメンとかにありそうな、ちょっと黄色っぽくて、中くらいの太さで、あまりコシのない麺、今どきまったく流行りじゃない、最も古風ともいえる、それなのだ。わりと新しい感じがする濃厚なスープに、この古風な麺が、意外に、驚くほど、よく合うのだな。
そしてチャーシュー。極薄切りなのだが、よくある昔のラーメンの、極薄切りのチャーシューは、やわらかく煮てあることが多いのじゃないかと思うが、ここのは、しゃぶしゃぶかと思うくらいの、ぷりぷり状態。
さらに九条ねぎが、1センチ幅くらいにドでかく切ってあって、ねぎの甘苦い風味が利いている。
すべての取り合わせが、意外な感じがするのだが、しかしそれが、絶妙のハーモニーをかもし出しているようで、ミスマッチなのに、しっくりする、それを味わっていると、どんどん楽しくなる、そんなラーメンだった。
店員も皆感じがいいし、とてもいい店だと思う。
中華そばは600円、グラスビール250円に、キムチ150円。