作家 池波正太郎の「食」に関するエッセイは、なんとも風情があって読み物として最高。
もともと新国劇の脚本を書いていた人で、時代小説の名手だから、とにかく文章に風情がある。エッセイなのに、躍動感があるんだよな。それがまず一つはいいところ。
それからもう一つは、池波正太郎が生まれ育った、「東京下町」の情緒が、色濃く感じられること。自分が昔から今に至るまで家で食べている食い物も数多く紹介されているのだが、それが
「いかにも下町…」
と言いたくなるような、ちょっとつっけんどんで、シンプルなものばかりなのだ。読みながら、自分もそれを食べてみたくなることは間違いない。
その中でも、僕がわりと何度も食っているのが、この「アサリぶっかけめし」なのだ。
スーパーに中国産のアサリのむき身が、「マジ」と思うくらい安く売っているから、それを買ってくる。
材料はあとは大根。細く切っておく。
まずはだしを取る。これは「だしパック」と言われるもので、紙パックの中にかつお節だの昆布だの、色んなものを粉末状に砕いたものが入っている。
僕はだしについては、「ほんだし」など化学調味料系の顆粒だしは使わないことを、初心者には強くすすめる。べつに化学調味料を否定はしないが、初心者が使うと、「料理」がどういうものかがわからなくなってしまう所があると思う。
ちなみに米を炊きながらになるので、台所はこういう状態になる。
5分たったらだしパックは絞って捨て、大根とアサリを煮る。
味付けは、酒とみりん、これはどちらもほんのちょびっとずつ。入れなくてもいいのかも。それに味を見ながらうす口しょうゆ。
アサリの風味はほんとに淡いので、酒やみりんをあまり入れてしまうと、それが全部消し飛んでしまう。
炊きたてのご飯に汁ごとぶっかけ、七味唐辛子をふって食べる。青ネギは池波流ではなく、僕流。
暑い夏に、汗をだらだら流しながら、アサリぶっかけめし。うちわで扇ぎながらとかだと最高。
池波正太郎、食に関する最高傑作はこれ。
こちらは「作る」ということを中心に、いくつかの本から抜粋してまとめられている。イラスト付き。