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2011-11-05

オリーブオイルの底力を思い知る。
「イワシのトルティージャ」


トルティージャは「スペイン風オムレツ」と呼ばれるが、オムレツといえばすぐに思い浮かぶフランス風とは、だいぶ趣きが異なる。溶きほぐした卵のなかに具をいれ、それをただフライパンで表裏焼くだけという、シンプル極まりない作り方をする。スペインの料理を、このところいろいろ作ってみて、味付けも作り方もゴテゴテとせず、素朴に、ストレートに作るのがスペイン風という印象があるのだが、このトルティージャもまさにそういう料理だ。

トルティージャは「tortilla」と綴られ、やはりスペイン語をつかうメキシコでは「トルティーヤ」と読む。メキシコでトルティーヤといえば、とうもろこしの粉を水に溶かしたものを丸く焼き上げた、お好み焼きのようなものになる。これは元々ネイティブアメリカンが作っていたものを、アメリカ大陸に侵略したスペイン人が、自国の料理トルティージャに、見た目が似ていることから同じ名前で呼んだものだそうで、料理の内容自体はまったく関係ない。


トルティージャにいれる具は、野菜から魚からソーセージから、さまざまなものが使われるようなのだが、今回はイワシと赤ピーマンをいれたものを作ってみた。イワシの旬も、そろそろ終わりだが、まだ店では、よく太ったのが、たいへん安い値段で売られている。



あらかじめ卵を器でよく溶きほぐしておく。ここに下準備した具をいれていく。

参考にしたレシピによれば、「卵3個に、イワシ4匹を、17センチのフライパンで焼く」ことになっていたのだが、だいたい昨日、わざわざこのために450円で買ったフライパンが20センチだし、イワシも6匹だったので、卵は4個にしたが、ちょうどよかった。

イワシは3枚におろす。3枚におろすといっても、これはバカにみたいに簡単だ。

売られているイワシに頭が付いているばあいはこれを落とし、腹をさいてハラワタをかき出し、水でよく洗う。

中骨の上に包丁をあて、左手でおさえながら、中骨にそって、尾まで切りさいていく。裏側も同様。

リンゴの皮をむくより、よっぽど簡単なのはまちがいない。

3枚におろしたイワシは水で洗い、その水をよくふき取って、「強めに」塩コショウする。片面だけやれば問題ない。

フライパンにオリーブオイルをしき、まずしっかり皮を焼き、裏返してかるく焼く。

これをほぐして卵にいれる。

レシピには「赤ピーマン2分の1個」との指定なのだが、スーパーにあったのは赤いパプリカ。これを4分の1個。

「素焼きして皮をむく」というが、めんどうだったので、包丁でむいてしまった。

「2~3センチ長さのうす切り」にする。

「玉ねぎ2分の1個」をうす切りにし、オリーブオイルで炒めておく。

以上の材料をすべて混ぜあわせ、かるく塩コショウする。イワシにけっこう塩をきかせたから、こちらでは塩を少なめにするのがポイントだ。

小さいフライパンにオリーブオイルをたっぷりといれ、たたき潰したニンニクを落として火にかけ、ニンニクの風味を油につける。

このニンニクは、味を出しおわったら捨ててしまう。

卵汁をフライパンにいれ、全体をざっくり混ぜたら、弱めの火で表裏をじっくり焼いていく。昨日はちょっと火が強すぎ、焦げてしまった。

ひっくり返すときは、「皿」をつかう。

2~3回ひっくり返すといいらしい。


焼けたら全体をピザのように切れば、出来あがり。




このトルティージャはまず、「卵とイワシ」の取合せが非常にいい。

日本食では、卵と魚を合せることは少ないと思うが、いかにも「ヨーロッパの海沿い」という風情の味がする。

ここに、ニンニクと玉ねぎによる味のベースが、またいい仕事をしているのはまちがいないのだが、しかしこのトルティージャの味を決めているのは、じつは「オリーブオイル」だろう。



オリーブオイルはほんとうに、なんとも不思議な調味料だ。

まずオリーブオイルは、あくまで油であり、材料を焼いたり炒めたりするために使えるにもかかわらず、油っこさがまったく、寸分たりとも、ない。むしろ反対に、料理を「さわやか」にしてしまう。

どうしたらこんな芸当ができるのかわからないが、トルティージャがこれだけ炒めたり焼いたりしながらも、しつこさが皆無なのは、オリーブオイルのおかげなのだ。

魚の臭みも、いうまでもなくまったくない。



さらにオリーブオイルは、トルティージャの「うまみ」を増すために、大きな役割を果たしているだろう。

オリーブオイルは、そのまま舐めてみればわかる通り、バターにも似た濃厚なうまみがある。トルティージャを作るには、オリーブオイルを大量に使うのだから、ほとんど「オリーブオイルを食べている」といってもいいことになっているはずだ。



にもかかわらず、オリーブオイルは使われた料理のなかに、その存在をまったく感じさせない。

バターなら、すこし使われていただけで、すぐにバターの味を感じるだろう。ほかのどんな、うまみのための調味料、チーズにしたってトマトにしたって、もちろん日本の醤油や味噌だって、それは同様だ。

ところがオリーブオイルのばあい、まあエクストラバージンオイルをサラダに使うなどすれば別だが、たとえばこのトルティージャで、「オリーブオイルの味」はまったくしない。オリーブオイルは、料理のさわやかさを増し、うまみを基礎づける、たいへん大きな役割を果たしていながら、自分の気配をまったく消している。



これはいわば、「調味料の理想」とも、いえることなのじゃないか。

自分はあくまで黒子に徹し、それぞれの材料の味をさわやかに引き立て、料理全体をうまくする。もし調味料を表彰できるのなら、僕はオリーブオイルを推薦したい。

スペイン料理は、このスーパー調味料、オリーブオイルがあるから、ほかに余計なものをあれこれ入れなくても、十分おいしいということなのだな。




昨日はあとは、ふたたびなんちゃってスペイン風の、豆腐サラダ。

「カブの中抜き菜」を農家のおばちゃんから買ってしまって、それを塩漬けにしながら、使えないまま冷蔵庫に入っていたので、塩抜きしていっしょに入れてみた。

特別うまいわけでもなかったが、十分ふつうに食べられた。




それにパンで、スペイン産の安白ワイン2をコップに2杯。

またこのすこし甘めの白ワインが、さすがスペイン料理に、完璧ともいえる合い方をし、料理と酒の往復運動がとまらなくなるから、注意が必要だ。




ちなみに昨日の昼めしは、おとといの鶏肉のチリンドロンとパンで、純スペイン風。