鍋といえば今までは、水炊きにするか、うす味のしょうゆ味か、味噌味か、あとは、トマトとか、カレーとか、そういう味付けはやったことがあったのだけれど、昨日サバを、甘辛いこってりとしたしょうゆ味の鍋に入れてみたら、これがかなりおいしかったわけなのだ。
ちょうど煮物の煮汁のような味で、サバは甘辛く煮付ければ、それはもちろんうまいのだから、この甘辛鍋も、言うまでもなくうまいに決まっている。
それならばもしかしたら、甘辛く煮付ける料理は、何でもこの鍋に変換できるのではないかと思い付いてしまったわけで、おりしも昨日はグルメシティ、「木曜モッくん」の特売日、四条大宮店ではいつも、牛肉がけっこう安く出る。
早速100グラム108円で売っていた、オーストラリア産の牛コマ肉を買ってきて、これで「肉じゃが鍋」を作ることにした。
肉じゃが鍋というのは、僕の勝手な命名だが、要は肉じゃがを、テーブルにおいたコンロで、鍋風に作ろうじゃないかという、ただそれだけの企画。
もちろんキッチンで、肉じゃがを作ってしまって、それをテーブルに運んできたって悪くはないのだが、酒をちびちびすすりながら、テーブルにおいた材料を鍋にいれるという作業は、以前はただめんどうくさいと思っていたが、やってみるとこれがなかなか楽しく、趣きがある。
酒というのは、酔っぱらって気分がよい時間を、ダラダラと過ごすというところに、やはりなんといっても、最大の楽しみがあるわけだから、ものごとをテキパキと進めてしまうよりも、ちょっと焦れったくなるくらいの時間の空白があるほうが、楽しみは倍増するというものなのだ。
また実際、つまみをどんどん食べてしまって、腹がふくれてしまうと、酒がまずくなるから、煮ないとつまみが食べられないというくらいのほうが、最後まで酒をおいしく飲むこともできる。
そしてなにより、一回に食べる分だけ煮て、煮えたそばからすぐ食べるというようにするわけだから、酒をのむのに1時間かかろうが、2時間かかろうが、最後まで熱々の状態を食べることができる。
さらにだ。酒をのむと喉がかわくから、この鍋の汁をすすることができるというのも、大事なポイントになる。
酒飲みにとって、肉じゃがをキッチンで作らず、卓上で作るということは、一見たいして変わらないように思えて、実はこれだけのメリットがあるわけなのだ。
しかしここで、ひとつの疑問がわいてくる。甘辛い汁で牛肉を煮る鍋というのは、すき焼きとは違うのか。
たしかにその通り。この問題については、僕もよくよく考えたのだが、これはあえて、すき焼きではなく、肉じゃがであるといっておきたい。すき焼きというと、長い歴史があり、人によるこだわりも大きいから、へたなものをすき焼きと呼ぶと、なにかとツッコミを入れられそうだからだ。
と、つまらない前置きが、長くなりますた。
牛肉は、下処理なし。海軍式に、炒めもしないし、アクもとらない。でもそれで、まったく問題ないです。
野菜は、ジャガイモは必須だが、あとは好きなもので。火が通りやすいように、うすめに切ってみた。
これをだし昆布にたっぷりの酒、みりんと濃口しょうゆで味をつけた汁で、煮ながら食べる。
いやこれは、まったく抜群だったです。
材料を一度に全部入れてしまって、煮えたら火を落として沸騰させないようにして、おでんのように味をしみ込ませながら食べるという手もあったかなと、食べながら思ったのだけれど、それはまあ、次回の課題ということで。
酒は菊正宗の常温を2合。