暖簾がずいぶん、低いところにかかっていて、これは何を主張しているのか、目に入りやすいということかとは思うが、今どき流行りの、腰パンを思い出すのだよな。
この店ではやはりまず、おでんにビール。広島のおでんはよく、どうやったらここまで黒くなるのだろうと思うくらい、汁が真っ黒なやつがあるが、ここのはそれほどでもない。ほどよい加減なのだ。
そして、ラーメン。前に一度来ただけで、5つ星を付けたのだが、僕の舌は間違ってなかった、やはりうまいな。自画自賛だが。ひとことで言うと、人間に「ラーメンのツボ」というものがあるとして、そのすべてをグイグイと押してくるような、そういうラーメンなのだな、これは。
広島の標準的な醤油豚骨とは、ちょっと違って、たぶん豚骨より、鶏ガラが多く使われているのじゃないかという感じがする。あっさりとしながら、濃厚なコクのあるだしで、それにちょっと強めに、醤油味が付けられている。ラーメンのスープと言えば、これだろう、という、まさにそういう味なのだ。
麺がまた、ちょっと細めで、素麺のような食べ応えがする、やわらかいのだが、コシがあるという、普通といえばまったく普通なのだが、他ではあまり、食べたことがないようなもの。チャーシューは、歯応えがあって、しかもジューシー。言うことないな。
全体として、ありそうで、ない、普通のラーメン。女将のお母さんの代から入れると、もう50年になるそうだが、ぜひこの味を、長く続けてほしいな。