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2010-01-19

小林秀雄全作品24

「考えるヒント」の下巻。考えるヒントは「文藝春秋」に連載されたもので、文藝春秋というのはわりかし、文学臭を好まず、あくまで一般の人が興味を持ちそうな題材を取り上げることを旨としているから、この連載に当たっても、たぶん小林秀雄に対して、そういう風に注文したのじゃないかと思う。小林秀雄も「ベルグソン」のしんどい連載をやりながら、こちらを息抜き的に捉えてたのだろう、「常識」「読者」「漫画」「良心」などなど、初めのうちこそ、読者の気を引きそうな題材を選び、軽いタッチで進んできていたのだが、途中から、むくむくと、虫が疼いてしまったのだな、この下巻になると、江戸時代の儒学者「徂徠」(すごいな、この徂徠という字、GoogleのIMEを使っているのだが、「そらい」と打ったら一発で出た)や、国学者「本居宣長」などの話題一色になってしまった。この後4年くらいして、小林秀雄は本居宣長の連載を始めるから、もうこの頃から、興味を持って調べ始めていたということなのだな。

小林秀雄はこの頃、ちょうど60歳になったあたりで、言わんとする内容について、デビュー当時から違ったことを言うのではないのだが、それがどんどん煮詰まって、純化され、明確になりつつある、という感じがする。それが何かを、ここで簡単に言うことはできないわけだが。本居宣長は12年に渡って連載され、無事完結したのだから、まさにこれが、小林秀雄の集大成ということになるのだな。