豚の角煮は、元々は中国の「東坡肉」(トンポーロー)という名前の料理で、それが長崎から日本に入って「角煮」と呼ばれるようになり、沖縄では「ラフテー」という料理になったのだそうです。
東坡肉は、北宋といいますから、もう1000年前ほどの時代の、「蘇東坡」という人が考えだした料理です。
蘇東坡は詩人で、政治家でもありました。
北宋朝廷の定めた新しい法律に反対したことで、黄州へ左遷され、そこで数年を過ごします。
政権交代があり、新法に反対していた人たちが権力を握ったために、許されて中央に戻されますが、そこで今度は、新法をすべて廃止すべきだという人たちに対し、「新法の中でも理にかなったものは存続すべき」と主張して、ふたたび海南島へまで、追放されてしまったという人です。
東坡肉は、蘇東坡が黄州に左遷させられていたときに、現地で安く手にはいった豚肉をつかって編み出した料理で、東坡はこれをたらふく食べ、悠々自適の生活をおくった様子を詩に残したため、この料理が有名になりました。
かなり複雑な手順をふんで作られる東坡肉を、日本流にアレンジした角煮は、「男の料理」としても大変人気で、実際僕も、料理をはじめた頃には、何度となく作りました。
脂身が多く、肉質としてはどちらかといえば低級な方に属する豚バラ肉を、時間をかけ、手間をかけることにより、「ごちそう」に仕立てあげるというテーマが、男のロマンをそそるものがあるんですよね。
蘇東坡も、左遷されて時間だけはあったから、安い豚肉をおいしく食べるために、研究に研究を重ねたということだったのでしょう。
角煮の作り方は、それほど難しいことはありませんが、味を付ける前に、まず豚バラ肉の脂をぬき、やわらかくするのに時間がかかります。
昼から作りはじめて、出来あがるのはようやく夜になるということになりますが、ほとんどの時間はひたすら「煮る」ことに当てられますので、手間はそれほどかかりません。
あと日本流の味付けで、ニンニクを入れずに作ろうと思うと、最後の煮込みの段階で「だし」を使うことが、絶対に必要になると思います。
「豚の角煮」のレシピ
<材料>(2食分)
・ 豚ばらブロック肉 500gくらい
・ ショウガ うす切りを2枚
・ 長ネギの青い部分 1本分
・ だし昆布 1枚
・ 削りぶし 大きく1つかみ
・ 砂糖 大さじ4
・ みりん 大さじ2
・ 醤油 大さじ4
・ 酒 大さじ4
・ サラダ油 大さじ1
・ 水
<作り方>
カラシを付けて食べます。
あとは「菜っぱ煮」。
これは以前、祇園にあるおばんざいの店で食べたもので、京都の人は、これを家庭でよく作るのだそうです。
油揚げと青菜だけを実にした吸物ですが、昆布と削りぶしできちんとだしを取ると、ほんとうにおいしいです。
菜っぱは、小松菜などアクが少ないものなら、生のままだしで煮てしまっても悪くはないと思いますが、やはり下ゆでした方が、味が澄みます。
「菜っぱ煮」のレシピ
<材料>(2食分)
・ 青菜 1把
(青菜は、今日は小松菜を使いましたが、ほうれん草でも水菜でも、なんでもいいと思います)
・ 油揚げ 2分の1枚
・ 昆布と削りぶしのだし 400~500cc
・ 酒 大さじ2くらい
・ うすくち醤油 大さじ2くらい
<作り方>
1. 青菜は水で洗い、あらかじめ下ゆでしておく。ゆで時間は、小松菜なら5分くらい、ほうれん草なら30秒ほど。ゆでたら水に取り、軽くしぼって、5センチ長さくらいに切る。油揚げは、キッチンペーパーで押して油を拭き取り、5ミリ幅程度に切る。
2. だしに酒とうすくち醤油で味を付ける。うすくち醤油は、はじめから上の分量を入れてしまうのでなく、味を見ながらちょうどいい加減になるまで足していくようにする。
3. 油揚げを2~3分煮て、次に下ゆでした青菜を1分ほど煮れば出来あがり。
それから、高菜のじゃこ炒め。
これは何度も作っているんですが、酒のつまみに最高ですし、ご飯のおかずにも絶対いいです。
酒は日本酒。
あとで聞いたら、今夜は「スーパームーン」だったのでした。