すごい本なのである、これは。
読売新聞で糸井重里と誰だかが、自分が影響を受けた本、みたいなことについて対談していて、糸井重里が「とにかく読んでくださいとしか言えません」と言っていたので読んでみたのだ。冒頭からいきなりパンチを食らって、最後にはノックダウンされた、という感じだった。
著者は実業家で、もともとは考古学者を志望してアメリカへ渡ったが、考古学の発掘を自分で指揮するためには金がかかる、そのためにはまずビジネスをやって金を稼ごう、と考え、アメリカ・スタンフォード大学のビジネススクールへ入学。その後光ファイバーについてのベンチャー企業を興すために、さらに工学を学び、29歳で会社を立ち上げ、成功。会社を売却して、そのお金でベンチャーキャピタルという、ベンチャー企業に投資する会社を始めたという人。数々の企業を成功に導き、今ではバングラディッシュで貧民の教育のための事業を行う会社を立ち上げたり、アメリカ共和党やら国連やら日本の財務省やら税制調査会やら、様々なところで役職を務めている。1952年生まれだから、ぼくより10歳年上、今年56歳。
その経歴もすごいのだが、本の中身。著者は、「日本が中心的な役割を果たしながら、世界を変えるのだ」と言っている。それも、よくありがちなトンデモではない。自分自身の経験と、世界を見る果てしなく広い視野と歴史認識、それらに基づきながら、超具体的に論を展開する。こちらがぐうの音も出ない、というくらいまで、攻め込んでくるのである。まさに超一流の実業家の事業計画のプレゼンテーション、それを冷静に、かつ熱く、語られてしまった、という感じである。話のスケールの大きさと、一つ一つの物事の具体性。未来について語られたものの中で、これだけの話は一度も聞いたことがない。
読みながら、嫉妬の気持ちが湧き上がるのを抑えることができなかった。本当はこういうこと、自分が言いたかったんじゃないのか。そして思った。これからこの人と、共通の目標を持ちながら、何らかの形で一緒にやっていきたい。この人から自分が、一物の人間であると認められるようなことがしたい。
いやいやいや、しかしこの本は、日本人の全員が読むべきであると、ぼくは思う。
平凡社刊、1,400円+税。
21世紀の国富論