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2012-06-29

いわしの梅炒め


今日の晩酌。

肴は、いわしの梅焼き、インゲンのごま和え、しじみの吸物、昨日のナスの煮物と、農家のおばちゃんの大根ぬか漬け。



いわしの梅炒め。



いわしは、煮汁に梅干しをいれる「梅煮」は定番。それからいわしを炒め、ニンニクの風味をきかせてこってりと甘辛く味付けしたのもうまい。

それならいわしを炒め、梅干しをいれたタレで照焼き風にからめたらうまいのではないかという企画。



早速やってみる。



梅干し2~3個の種を外し、包丁でよくたたきペースト状にして、これを酒大さじ2、みりん大さじ2、砂糖大さじ1、うすくちしょうゆ大さじ2、おろしショウガ少々、水4分の1カップと混ぜ合せ、味をみて甘酸っぱい加減にしてタレを作る。

いわしはよく洗い、水気をぬぐって、小さいのなら丸まんま、大きければ頭をおとしワタを出して筒切りにし、片栗粉をまぶす。

多めの油をフライパンに中火で熱し、いわしを並べ、こんがりと焦げ目がついたら箸でひっくり返す。

いわしの両面がこんがり焼けたら、梅干しのタレをそそぎ、すこし煮詰めて全体にからまれば出来あがり。

千切りにした大葉をのせる。



頭から丸かじりにする。



「・・・・・・」



もうちょっとこってりした味を想像していたのだけれど、梅干しのせいで意外にさっぱりして、さらにいわしの香ばしさも出て、照焼きというよりは、南蛮漬けに近い・・・。



南蛮漬けだと思えばうまい。






インゲンのごま和え。



三条商店街の300年つづく八百屋の、先代のおっちゃんは、耳は遠いけれどまだ体はピンピンし、野菜についてのうんちくを語りだすと、話はだいたい秀吉までさかのぼり、10分は止まらない。

インゲンも、昔のインゲンは筋があったけれど、味は甘くておいしかった。最近のは筋はないけれど、味は昔のより落ちるとのこと。

その昔のインゲンが売っていたから買ってきた。



早速筋をとる・・・。



おっちゃん、このインゲンも、筋ないんですけど。



塩をふった水で2~3分ゆで、ザルに上げ、食べやすい大きさに切る。

すりゴマに、みりんと砂糖、うすくちしょうゆ、出し少々を加えごまダレを作る。

ごまダレでインゲンを和えれば出来あがり。

たしかに普通のインゲンより、やわらかくて甘みがある。



おっちゃん、筋なかったけど、うまかったから許したるわ。





酒飲みの友、しじみの吸物。



しじみは海水くらいの水に1時間くらいひたして砂出しする。

150グラムのしじみなら、300ccくらいの水にいれ火にかけて、アクをとりながらしじみの殻が全部ひらくのを待つ。

酒大さじ1にうすくちしょうゆ小さじ1、塩少々で味付けしたら出来あがり。

トロロ昆布を浮かべる。

しじみを酒の肴にすると、肝臓が癒されるのをつくづく感じる。






酒は焼酎水割り。

しじみがあるから、いくら飲んでもだいじょうぶ。



なわけない。






僕はいつも、千円札1枚をポケットに入れ、2~3軒の飲み屋をまわるのだけれど、それは四条大宮だからできるところもある。

四条大宮の飲み屋はまず値段が安く、だいたいの店で、1杯500円以下で飲めるというのたしかに大きい。

でもそれだけでは、千円ではしご酒はなかなかできない。

千円ではしご酒ができるのは、四条大宮のほとんどの飲み屋が「チャージ」を取らないからだ。



店にはいると自動的に突き出しがでてくることになるこのチャージ、東京ならほとんどの店が取るとおもうし、京都でも、祇園や四条烏丸あたりのバーだと、チャージを取ることが多いようだ。

ところが四条大宮ではチャージなしに飲めるから、1軒の飲み屋で3杯飲んでも、3軒の飲み屋で1杯ずつ飲んでも、値段が変わらないことになる。



四条大宮ではたぶん、そのような飲み方をする人が少なくないとおもうけれども、1人、いろいろな飲み屋でしょっちゅう会う人がいる。

大きなガタイをし、肩までとどく長髪にモジャモジャのひげを生やして、熊のように見える男性。

年の頃はたぶん、僕と同じくらいだとおもうけれども、飲む時間帯や店の選択も似ているようで、これまで僕がホームグラウンドにしている「Kaju」はもちろん、キム君の店やらこないだ初めて行ったバーやらで、5回か6回は顔を合わせている。



今夜も千円をもって家を出て、まずキムくんの店をのぞいてみると、その男性がいる。

ちょっと話してみたい気もしたけれど、男性はカウンターではなくテーブル席で、数人と話し込んでいる。

そこにはちょっと入れないなとおもった僕は、大宮通を南へ下り、鉄板焼屋をのぞき込み、変わったことが起きていないのを確認してKajuへむかった。



僕とおない年、飲食業の経験も長いKajuのマスターとは、飲み屋の話をするとおもしろい。

カウンターにいた、居酒屋で修行をしている若い男性が帰ったあと、「若い人がバーをやる」ことについての話になった。

マスターも20代の若い頃から、自分でバーを始めている。

「若い人にはぜひバーをやってほしい」

という。



バーは極端にいえばカウンターのある小さな店舗に、自分の好きな酒だけおけば始められる。

敷居はとても低いから、若い人にも始めやすい。

「もちろん店を続けることは、それほど簡単ではないけれど、やりながら見つけていけばいいんです・・・」

マスターも、Kajuを始めて9年になる今でも、あれこれ試行錯誤するそうだ。



一度マスターの知り合いの若い子が、バーを始めようかと考えた。

それで先輩に相談したら、「自信がないならやめた方がいい」といわれて、結局断念したそうだ。

「僕は、自信のある人などに店をやってほしくはないですよ・・・」

自信がないから、試行錯誤する。そこにお店の魅力が生まれる。

「自信がある人の『上から目線』の下で、僕はお酒を飲みたくはないですね・・・」



といってマスターは、自分がこれまで見つけてきたことにたいする自負もある。

ある大きな飲食店の雇われ店長に、マスターは、

「Kajuさんくらいの小さな店なら、明日にでもできますよ」

とバカにされたような口をきかれたそうだ。

怒ったマスター、

「お前がKajuで、おれがお前の店で、1週間交代して働いて、どちらがどれだけ売上げを上げるか下げるか、競争しようじゃないか」

と啖呵を切ったのだそうだ。



マスターとそんな話をしているところへ、お客さんが入ってきた。



熊のような男性と、その仲間たち・・・。



キムくんの店からこちらへ、場所を替えてきたらしい。

熊の男性を先頭にして5人がぞろぞろと奥へ進み、それぞれ座って飲み物をたのむ。

熊の男性とはちょうど話してみたいとおもっていたから、僕も飲み物のおかわりをたのんだ。



僕と同年代に見える熊の男性以外は、たぶんみんな30代。

男性3人と、そのうち1人の奥さんらしい女性。

ずいぶんとボルテージが上がっていて、みな大きな声で、話のつづきを再開する。



仲間の1人、山口智充似の男性は、最近になって仕事で独立したらしい。

「僕は絶対成功してやると思ってるんです。だいたい組織に忠誠を誓い、社長のいうことにヘイコラするなど、クソのすることだ」

熊の男性が答えている。

「でもおれだって、人脈命の人間だし、組織の進む方向と自分の人生の方向とをうまく重ねていくことだって、1つの生き方だろう」

「それじゃあ、たとえば大物政治家の傘下にいる政治家が、自分の信念を曲げて大物政治家に従うことで、日本が良くなると思いますか・・・」

喧々ガクガクの話が繰り広げられていく。



僕は話を聞きながら、ふと、

「この人たちは、どういう関係なんだろう」

と思った。

会社の同僚ではなさそうだ。

といって「飲み友達」というには、ずいぶんと深い話をしている。



近くにいる男性に、

「飲み友達なんですか」

ときいてみた。

「飲み友達というよりは、もっと濃いんですよ・・・」

熊の男性にもきいてみた。

「おなじ業界なんですか」

「いや全然ちがいます。飲み友達といえば飲み友達なんですが、もうかれこれ10年くらいになるんですよ・・・」



会社の同僚や、昔の仲間、趣味のサークル仲間、飲み友達、お店の常連さん同士・・・。

そういうものなら、これまで何度も目にしたことがある僕は、見ればすぐわかる。

でもこの人達のかもし出す雰囲気は、そのどれともちがう。

それならこの人達の関係は何なのか・・・。



「わからない・・・」



お店の常連さん同士に近いような感じもするけれど、お店の常連さんは、特定のお店に所属しているもので、こうやって店をわたり歩き、はしご酒をしたりはしない。

しばらく話を聞いていればわかるかとおもったけれど、飲み物のおかわりを飲み終わるまで、僕はこの人達の関係を得心することができなかった。



おそらく、熊の男性が四条大宮のさまざまな店で飲むうちに、少しずつ知り合いになっていった人たちなのだろう。

その知り合いが、さらに飲み続けるうち、横につながり、「仲間」になっていく・・・。

この人達は、会社でも学校でもサークルでも、1軒の飲み屋でもない、「四条大宮」という街がはぐくんだ仲間なのだ。

そう考えないと、この見おぼえのない雰囲気は、理解できないと僕はおもった。



奥が深いわ・・・。