2012-06-03
鉄板焼屋のおねえちゃん。
「しめサバ」
きのう魚屋で3枚におろして、塩をふってもらったサバの半身と頭に骨があるから、それでしめサバと船場汁をつくる。
あとは冷蔵庫にキュウリとみょうががあるから、それを梅キュウにし、豆腐屋で買ってきた厚揚げを焼く。
しめサバは、朝のうちにつくっておいた。
サバに塩をふり、おいておく時間は4~5時間。それから酢につけ、つけこむ時間は3時間。
この「3時間」については、魚屋のおにいちゃんは確信にみちていて、これより長くても短くても、あまりいい顔をしない。
魚屋でサバに塩をふってもらったのが夕方4時ごろだから、それから4~5時間といえば、夜の9時ごろ。
それから酢につけ、朝まで酢につけておいたらどうかときいたら、
「それなら塩をしたままひと晩おいて、朝酢につけたほうがいい・・・」
そこでつけこみは、朝やることになった。
寝ぼけまなこでつけこみを開始する。
サバにふった塩を水でさっと洗いながし、キッチンペーパーで水気をよくふきとる。
器に酢をいれ、ちょっぴりの砂糖を溶かしこむ。
今回はここに、レモン汁もたらしこんでみた。
ビニール袋にサバと昆布をいれたら、酢をそそぎこむ。
酢がサバにきちんとかぶるよう、酢の量を加減して、袋の口をしばって冷蔵庫で3時間。
3時間たったら、サバを水でさっと洗い、水をよくふきとって、太いほうから皮をはいでいく。
さらに中骨をいくつか、指か骨抜きでひきぬいておけば、しめサバのできあがり。
あとはラップでくるんで冷蔵庫にいれ、夜まで熟成させておく。
船場汁。
船場汁は大阪の船場で丁稚さんたちが食べていた、安い塩サバの骨までつかう、貧しい料理の代表といわれているけれど、サバのだしはたいへんうまいと僕はおもう。
塩をふってまる1日おいたサバの頭と骨は、湯通しして、昆布といっしょに鍋にいれる。
水から中火で炊いていき、沸騰したら昆布をとりだす。
5センチくらいの厚さに切った大根をいれ、アクをとりながら弱火で15分くらい煮る。
頭と骨をとりだして、酒と塩、すこしのしょうゆで味付けする。
船場汁を煮ているあいだに、梅キュウをつくる。
梅キュウにみょうがをいれるのは、コメントで教えてもらった。
両端をおとしたキュウリをすりこぎでたたき、手で食べやすい大きさにちぎって塩1つまみをもみこんでおく。
みょうがはタテに割りななめうす切りにして、水にさらす。
梅干し1~3個の種をとり、包丁でよくたたき、梅干しの半量程度のみりんとしょうゆ、かつお節とまぜあわす。
食べる直前に、水でさっと洗い、よく水気をふきとったキュウリ、やはり水気をふきとったみょうがを和える。
最後に厚揚げ。
僕はこれが最近、中毒になってしまってやめられない。
フライパンを中火で熱し、油をひかずに、厚揚げの表と裏をさっと焼き、ショウガと青ねぎ、しょうゆをかける。
肴があまりにうますぎて、日本酒をいつもより1合、よけいに飲んだ。
晩酌をすませた僕は、いつもでかける四条大宮とは反対の方角へあるいていった。
三条会商店街にもいくつか飲み屋があることをおもいだしたのだ。
三条会商店街は長い歴史と伝統があり、いつもいく八百屋は創業300年、その隣のはんこ屋は創業400年で秀吉の時代から商売をつづけているときいた。
しかし全国の古い商店街が、「シャッター化」し歯抜けになっていくところ、三条会商店街では若い人達がやるあたらしい店がうまれ、きちんと新陳代謝しているのがいいところだ。
いつも買い物をする魚屋も豆腐屋も八百屋も、それぞれ代替わりして、若大将ががんばっている。
若大将がまた、美人のお嫁さんをもらって幸せそうにしているところも、バツイチの僕にとってはうらやましいところだ。
三条会商店街にはあたらしいカフェやケーキ屋、雑貨屋や画廊などもある。
夜も若い人がやっている、おもしろい店があるのじゃないかとおもったけれども、もう深夜12時すぎにはどこも閉まっていて、なにもみつけることができなかった。
それで四条大宮の飲み屋街へひきかえし、けっきょくいくのは鉄板焼屋。
角ハイボールとポテトサラダを注文し、カウンターの端にすわって飲みはじめた。
今夜は店長のおにいちゃんが、色々はなしかけてくる。
「今日も家で飲んできたんすか・・・」
「Kajuへは最近は、いってないんすか・・・」
「Kajuへはまだいったことがないんすけど、Kajuのおにいさんの店へは、いったことあるんすよ・・・」
おにいちゃんは、みるところ20代、あどけなさがのこる顔に、ちょび髭をはやしている。
オーナーは御池でべつに店をしていて、おにいちゃんは店長としてこちらの店をまかされている。
週末だから、お客さんもそれなりにはいっている。
手前に熟年のカップル、奥には男性ばかり5~6人の団体。
店員のおねえちゃんも、今日は2人いる・・・。
僕の視線は、奥の厨房ではたらくおねえちゃん2人を、ついつい追いかけることになる。
みるところ、2人とも20代。
1人はショートカットで体格のいい、倖田來未似。
優香にも似てるところがあるかんじがする。
もう1人は長い髪をおさげにし、背はひくめだけれども、こちらもけっこうかわいい。
おねえちゃんが角ハイボールやポテトサラダをもってきてくれるたびに、僕もかんじよく、
「ありがとう」
と礼をいう。
しかしここで、ハタと気がついた。
店長としてこの店をまかされているということは・・・。
「あのおねえちゃんたちを店員としてえらんだのは、おにいちゃん、おまえなのか・・・」
僕はすこし、おにいちゃんがうらやましくなった。