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2012-06-21

ニシンとなすの煮物


今日の晩酌。

肴はニシンとなすの煮物、オクラおろし、スルメイカのぬた、厚揚げの焼いたの、それに塩辛。



ニシンとなすの煮物。

京都では定番のこの料理、昔はニシンをカチカチに干し上げた「身欠きニシン」が使われていたが、今は「ソフトニシン」があり、身欠きニシンのように丸1日かけ水で戻したりしなくても、すぐに使える。



ソフトニシンは沸騰した水で1分ほど煮て、水を捨て、2センチ幅くらいの食べやすい大きさに切る。

なすもゴロゴロと大きめに切り、2~3分下茹でしておく。

フライパンに水1カップを張りニシンを入れて強火にかけ、沸騰したら弱火にし、5分ほど煮て出しを取る。

酒2分の1カップ、みりんとしょうゆそれぞれ4分の1カップ、砂糖大さじ1~2を入れ味をみて、なすを入れ、落し蓋をして強めの中火で10分ほど煮、汁がいい加減に煮詰まれば出来あがり。

七味唐辛子と山椒を両方かけて食べる。

ニシンの素朴な味と、なすがよく合う。



オクラおろし。

これは檀一雄のレシピ



オクラは塩を多めにふった水で1~2分さっと煮て、小口に切る。

これを水を切った大根おろしとよく混ぜあわせ、オクラの粘り気を大根に移したのち、冷蔵庫に20~30分入れ冷やす。

冷えたところにちりめんじゃこを入れ、ふたたび混ぜあわす。

ポン酢をかけて食べる。

さわやかで、滋味あふれる一品。



スルメイカのぬた。

イカをぬたにするには生で使うことが多いが、さっと茹でてもいい。



塩をふった水を沸騰させ、まず3~4センチ長さに切った青ねぎを入れ火を通す。

そこに5ミリ幅くらいの輪切りにしたスルメイカの胴を入れ、時間にして10~20秒、スルメイカがピンク色になったらすぐにザルに上げる。

カラシ酢味噌は、白味噌とみりん、酢を同量程度にカラシを少し、混ぜあわせる。





スルメイカの足は即席の塩辛にする。

スルメイカのワタに塩1つまみをふりよく混ぜて、ぶつ切りにした足を和え、冷蔵庫に2~3時間おく。

酒とみりん、ポン酢果汁を1たらしする。




厚揚げの焼いたの。

フライパンを中火にかけて、厚揚げの表と裏を焼く。

青ねぎをふり、ショウガ醤油で食べる。



酒は焼酎水割り。

4杯ほど飲み気分は最高。






夜の散歩に家を出た僕は、顔を出したい店がいくつか思い浮かばなくはなかったが、昨日に続きふたたび新規開拓をしてみようと思い立った。

飲み屋の新規開拓とは、

「自分にとって理想の居場所」

を見つける旅だと僕にはおもえる。

理想の空間、理想の料理、理想の酒、理想の店員、さらに理想の料金・・・。



もちろん自分の理想をかなえてくれる場所などこの世に存在するはずがないのだし、理想の飲み屋を探すことなど単に「酔っぱらいのおっさんの夢」であることは、僕だってわかっている。

わかっていはいても、

「もしかしたら、あるんじゃないか・・・」

そう思う気持ちを消し去ることができず、夜な夜な飲み屋を訪ね歩くことになる。



大宮通を南へ下る。

晩酌をすませ、腹はいっぱい、酒も十分入った僕は、フラフラと歩いていく。

台風が通り過ぎていったから、涼しい風が気持ちいい。



四条大宮の交差点を渡ったあたりに、以前行った、椎名林檎似のママがやっているカフェバーがある。

立ち止まり、入口の看板をぼんやりと眺めていたら、その瞬間、

「カチッ」

という音がして、エントランスの電気が消えた・・・。



「僕に来るなと言っている・・・」



もちろんただ決まった時間が来たから電気を消したに違いないが、僕はそう理解して、おっさんはあまりに場違いだった椎名林檎のバーのことは、もう忘れることにした。



高辻通を東へ行き、堀川通をわたる。

油小路を越え、西洞院通。

北へ行き、仏光寺通を西へ入って、また堀川通へもどる。

もう時間が遅いから、開いている飲み屋もないではないが、手頃なバーは見つからない。



堀川通を北へ行き、綾小路を東へ入る。

まっすぐ歩いてふたたび西洞院通を越え、さらに新町通も越える。

もうかれこれ1時間近くも歩いているから、さすがに疲れてきた。



室町通りまで来て、さすがにもう引き返そうと左へまがる。



「あった・・・」



赤い看板と、入口の赤いテントが、煌々と夜道を照らしている。



近付いてみてみると、バーではなく、「カフェ」となっている。

入口にあるメニューを見ると、ウィスキーは650円。

ただ料理のメニューも色々あるようだ・・・。



「料理をたのまないといけないようだと困る・・・」



地下へとつづく階段を降りてみる。

分厚く大きな木のドアが閉まっている。

隙間から中をのぞくと、ずいぶん広いようにも見える・・・。



「テーブルに1人でポツンと座るのでは、居場所がない・・・」



いったんは引き返そうかとおもったが、ここまで来て、入らずに帰ったのでは男がすたる。

思い切ってドアを開けてみた。



氷川きよし似のお兄ちゃんが出てきた。

「千円で1杯飲めますか・・・」

大丈夫だと言うので、中へ入った。



店内は広く、テーブル席やソファの席もたくさんあるが、奥にはカウンターもある。

僕はそこへ腰掛け、一番安いウィスキーの水割りをたのんだ。

もう閉店時間も近いようで、お客さんは他に1組だけ、テーブルで食事をしている。



氷川きよしのお兄ちゃんは店長で、店を経営する会社に雇われているが、采配は全て、お兄ちゃんが振るっているという。

年の頃は30代、髪も氷川きよしそっくりの茶色く長めで、髪の先は外側に跳ねている。

グレーの細身で丈の短いジャケットに、やはり細身のベージュのパンツ、白いボタンダウンという、いかにも流行りの、ファッショナブルないでたち。

しばらくはお兄ちゃんに、会社や店のことをきいたり、夜の散歩の話をしたりして時間を過ごした。



やがて小皿にはいった食べ物が出てきた。

「これはチャージじゃないの?」

「サービスだ」というから、ありがたくいただくことにした。



食べ物を持ってきてくれたのは、



「オネエちゃん・・・」



年の頃はやはり30歳くらい、和久井映見似で、長い髪をしばって後ろに垂らし、ワイシャツに黒いベスト、蝶ネクタイの、バーテンの格好をしている。

このオネエちゃんもやはり社員で、店長の右腕となっているらしい。



オネエちゃんを見て、俄然元気になった僕は、食べ物の名前をきいてみる。

「パンツァネッラです」

食べてみると、パンにキュウリなどの野菜をまぜ、ドレッシングをかけたもの。

「なんだ、パンサラダか」

オヤジのダジャレを飛ばしてみる。

「そうなんですよ、パンツァネッラとかしゃれた名前が付いてますけど、実はパンサラダです」

合わせてくれるオネエちゃん。



僕はすっかり嬉しくなって、それからそのオネエちゃんと、そしてもちろん店長と、しばらく話をした。

僕が以前から気になっていたけれど、高そうだからと入ったことがなかった四条堀川にあるバーを、オネエちゃんは知っていて、

「チャージがついて、最低でも1300円はかかるから、お客さんの夜の散歩には、あまり適当じゃないかもしれませんね・・・」

親身な様子で答えてくれる。



この店はランチもやっていて、今日はオネエちゃん、昼間のランチから深夜のクローズまで、2時間休むだけで通しで入っているそうだ。

「それじゃ、もう明日はゆっくり休まなくちゃね、店長に僕が言ってあげるから・・・」

酔っぱらいのありがた迷惑な親切にも、オネエちゃんは苦笑しながら、

「ありがとうございます」

と礼をいう。



ウィスキーを飲み終わった僕は、お勘定を払って店を出る。

オネエちゃんは、にこやかな顔でお辞儀をしてくれる・・・。



僕は「絶対また来よう」と心に誓った。