今がまさに旬となるブリのあらは、養殖物なら値段も安く、食べ応えもあって、しかも意外に色々な料理に使える。臭みを心配する人もいるかもしれないけど、新鮮なものを買い、下処理をきちんとすれば、臭みはまったく出ない。ブリの代表的な食べ方の1つが「みぞれ鍋」。ブリと相性抜群の大根をたっぷりとおろし込み、大根の甘みを味わう。
ブリあらは塩をふり、冷蔵庫にしばらく置く。
20~30分も置けば臭みは抜けると思うけど、何時間か置いておけばその分うまくなる。
さらに熱湯を注いで湯通しし、そのあと水でよく洗ってぬめりや血の塊をとり除く。
これで下処理は完了。
鍋に水を張り、5センチ角くらいのだし昆布を入れたら中火にかける。沸騰したら昆布はとり出し、1カップくらいの日本酒を入れてブリを煮る。
アクをとりながら弱火で15分ほど煮たら、しょうゆで味付け。あとから大根おろしが入ってくるから、ちょっときつめの加減でいい。
何でも好きな野菜を入れ、野菜が煮えたらたっぷりの大根おろしを汁ごと入れる。
汁が再び沸いてきて、大根に火が通れば出来あがり。
野菜と大根おろしを追加しながら食べる。
器によそい、七味唐辛子をふる。
脂が乗ったトロトロのブリのくどさを、甘い大根おろしが和らげてくれる。
「一人鍋はさびしい」と思う人も少なくないと思うけれど、それは大きな間違いで、
自炊を始めようと思ったときに、鍋ほどいいものはないと思う。
一人きりの静かな部屋で、鍋がふつふつと煮えるのを眺めながら酒を飲むのは、
疲れを癒し、人生について思いを馳せるのにまさにうってつけ。
作るのにも手間がかからず、肉でも野菜でもたっぷりと入れられる。
汁も一緒に出来てしまうし、ご飯やうどんを入れればシメにもなる。
しかし鍋が何よりいいのは、自由であることだとぼくは思う。
鍋ほど決まりが少ない料理はない。
だいたい名前が「鍋」なのだから、鍋で煮さえすれば何でもいい。
材料にしても、味付けにしても、無数の可能性があり、
毎日食べ続けても飽きることがない。
鍋は現在の料理の「元型」とも言っていいものなのだと思う。
1万年か2万年前、人類は土器を発明し、中に材料と水を入れて煮ることを覚えた。
材料からしみ出たうまみが凝縮されたスープに、人々は歓喜したはずだ。
おそらくそれからかなりの長期間、
人類にとって「料理」といえば、鍋のことだったのではないだろうか。
現在ではそこから派生して、
汁物やら煮物やら、様々な料理が生まれている。
派生した料理はそれなりの制約を受けることになるけれど、
元型としての鍋料理は、変わらず自由なまま残されている。
そのように考えてみると、料理の世界を学ぼうとするとき、
鍋から始めることほど適当なやり方はないのではないだろうか。
どんなことでも学ぼうと思えば、
歴史を学ぶことは王道だ。
鍋は設定が単純で、
「鍋で煮て、取り皿で食べる」
というだけの話だから、
料理の初心者にとっても考えやすい。
鍋をやりながら、材料の組み合わせや味付けの工夫を学ぶことは、
得るものはとても大きいのではないかと思う。
「おっさんも鍋が好きだからね。」
飲みながら料理できるのもいいとこなんだよな。