カキは生食用なら、ポン酢をかけて食べればうまいし、鍋に入れたりカキフライにしたりするのもいい。あとは先日、中華料理屋で食べたカキのオイスターソース炒めがうまかったから、それを真似してやってみることにした。ただニンニクを入れてしまうと他の和食メニューに合わなくなってしまうから、かわりに酢を入れて酸味を利かせることにする。
生食用のカキ150グラムは塩コショウと酒少々をもみ込んで、片栗粉大さじ1くらいをまぶしつけておく。
カキは半生程度に火を通すことを考えると、生食用を使ったほうが何かと安心。
フライパンを強火で熱してゴマ油大さじ2くらいを引き、まずタネをとり、ちぎった鷹の爪、つづいてカキを炒める。
カキは生でも食べられるのだから、炒め時間は1分くらい、くれぐれも炒め過ぎないようにする。
刻んだニラ1把を入れ、ひと混ぜしたら、オイスターソースと日本酒、酢それぞれ大さじ1と、砂糖としょうゆ小さじ1の合わせ調味料を入れる。
全体をサッと混ぜ、味を見て塩加減する。ニラも火を通し過ぎるとクッタリとしてしまうから、炒めるというより「和える」感覚でやる。
これはうまい。
あとは大根の浅漬け。
大根はやはり、ユズの風味を利かせるとうまい。
付き合っている和久井映見とは、遠距離恋愛モードに入りつつある。
遠距離恋愛は、ぼくは今まで一度もしたことがないから、
どういうものか見当もつかない。
続けていけるかどうか、甚だ自信がないのだけれど、
物事はなるようにしかなっていかない。
ダメになったらダメになったで、それだけの恋愛だったということだ。
昨日は仕事が早く終わったから、晩酌を始める前に、
四条大宮のバー「Kaju」へ食前酒を飲みにいった。
熱燗を注文し、マスターとのんびりとした時間を過ごしていたら、
松嶋菜々子が現れた。
松嶋菜々子はぼくの隣の席にすわり、ラム酒のロックを注文する。
カウンターに両肘をつき、グラスをカラカラとまわしながら、
「映見さんのこと、安心させ過ぎなんじゃないですか。」
顔を前に向けたまま言った。
「恋愛には駆け引きの要素もあるでしょう。
もっと映美さんを不安にさせるようなことをしないと、
高野さん一人がつらくなってしまうのではないかしら・・・」
恋愛が一種の駆け引きであることは、ぼくもよくわかっている。
でもぼくは、駆け引きが大の苦手だ。
だいたい勝負事にいっさい興味がなく、オリンピックやワールドカップすら見ない。
そんなぼくに、上手な駆け引きなど、できるわけがない。
「でも松嶋さん、最近はそれほどつらくないんですよ。
ぼくの恋は、今は愛に変わっているから・・・」
恋は会えなければただつらいだけだが、
愛は形を持ったものだから、つらさを耐える理由がある。
「強がってるんじゃないの。」
そんなことないよ。