2008-10-02
広島大町 ラーメン 「しまい」
インターネットの情報(1 2 3 4 5)によると、このラーメン店「しまい」の店主のおじいさんが、「広島ラーメン」を生み出し広めた、張本人なのである。終戦後すぐに中国から板前二人を連れてきて、広島駅前に屋台「上海」を開業、屋台が規制されると「段原食堂」という店をはじめる。その息子さんが昭和32年ごろ、舟入で始めたのが「しまい」で、息子さんが亡くなると、お孫さんがここ大町でやはり「しまい」を始めたのだ。広島ラーメンといえば代表格である「陽気」や「すずめ」は、いずれも段原食堂の関係者が開業している。
この「しまい」、そういう由緒正しい店であり、広島ラーメン界では「皇室」とも言える存在であるのだから、ちょっとは威張っても良さそうなものだが、そのような気配はまったく無い。上の写真を見ても分かるとおり、郊外の住宅地にあるごくごく普通のラーメン店である。同じことは「陽気」にも「すずめ」にも言える。チェーン展開して商売として大きくしていこう、などという気は、たぶんさらさらないのである。「陽気」と「すずめ」は箱入り生ラーメンはやっていたりはするが。
僕は個人的には、広島ラーメンは尾道ラーメンなどよりもはるかに完成度が高くておいしくて、札幌、東京、博多、などと並ぶ、日本の五大ラーメンくらいには数えられてもおかしくないと思う。しかし実際には広島ラーメンは、他県にはほとんど知られていない。広島駅の駅ビルにも、尾道ラーメンの店はあるが、広島ラーメンはない。広島に住んでいる人すらも、「広島にはおいしいラーメン屋がなくて」などと言うのを耳にすることもある。何とももったいないと思う一方、これが広島の人の気質なのかなとも思う。派手なことをあまり好まず、実質重視、みたいな。よく分かんないけど。
まあということでこの「しまい」である。家からけっこうな時間をかけてチャリンコを漕いできたので、ラーメンの前にまずはビールとギューザを注文。この店は「中華そばとギョーザの店」のようだから、やはりそれを両方味わってみないといけないだろう。せっかくだから。実際メニューを見ると、中華そばと、その他チャーシューメンや肉ラーメン、メンマラーメンなど中華そばのバリエーション、それにギョーザとライスだけだった。何ともシンプル。
ギョーザ550円。小さめだが10個ついてくる。パリッと焼き上げてあり、あまり脂っこくない。ニンニクとニラがきちんと入っていて、はっきりした味。ビールのあてには最高だ。2皿や3皿は、軽くいけそうな感じである。たれは自分で作るのでなく、調理場で作った青ねぎ入りのを持って来てくれる。
そしていよいよ中華そば、550円。コショウはあらかじめかかっている。ギョーザのたれもそうだが、やっぱり味に自信があるんだな。客に選択の余地をあたえないのである。
スープはご存知豚骨しょうゆ。でもそのほかに鶏がらやら野菜やら、色々なものが入っているらしい。コクはあるのだが、えぐみはない。味も濃すぎず、薄すぎず。何とも品のよい、突出するものが一つもない、そういう風情である。商売なのだから、特徴を出そうとして、何かの要素を強調するということはよくあることだと思う。しかしここでは、そういうことが全くない。これは広島の名店の、共通する特徴かなと思う。ていうか、これは僕がそういう店を名店だと思う、ということだが。広島では昔ながらの、とくに目立つわけではない店に、そういう姿勢の店が多いと思う。東京にくらべて、だが。
麺は、「陽気」や「すずめ」がどちらかといえば「もさっ」とした口当たりで、完全にまっすぐなものを使っているのに対して、ここのはちょっと「ぷりっ」としていて、わずかに縮れている。ゆで加減もすこし硬めである。チャーシューは2枚だが、かなりジューシー。それに細もやしに青ねぎ。もやしはここでは、あまりしゃきしゃきさせていない。
スープもそうだが、全体としても、余分なものが全くない。すべてがバランス良く、調和している感じがする。そういう食べ物を味わい、体内に取り込むというのは、何とも快感である。おかげでもう一杯お代わりし、計二杯食べてしまった。塩分取りすぎ大丈夫か。
しまい (ラーメン) (ラーメン / 大町)
★★★★★ 5.0
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