カウンターのみ9席の、僕以外の全員は、つけ麺を食べていたが、僕はラーメン。ラーメン屋は、まずはラーメンを食べてみるのだ。ずいぶん小さなどんぶりに入って出てきたが、なるほど、これはすごいな。何がすごいかと言えば、その腹のすわり方。これはもうほとんど、ラーメンではないのだ。日本そばなのだ。
麺が、全粒粉というものを使っていて、これは小麦の皮や胚芽など、普通小麦粉を作るときには捨ててしまう所も、いっしょに混ぜた小麦粉のことで、米でいうと玄米みたいなものなのかな、だからこれで麺を打つと、素朴な味になるのだが、この麺は、素朴どころではない、ほとんど日本そばの味なのだ。スープも、濃厚なコクのある豚骨だしに、魚介だしを強く混ぜているから、味はラーメンのスープだが、風味は完全に和風。上に載っているのも、チャーシューというより、ほとんど角煮で、さしずめ鴨南そばでも啜っているような気持ちになる。
ラーメンは元々、わざわざ「中華」そばと言うくらいで、日本そばではない、というところが存在理由だったはずなのだが、巷にこれだけラーメンが普及すると、先祖返りをするのだな。スカートが長くなったり短くなったり、するようなものか。しかしもちろん、元の日本そばと同じじゃないわけで、新しいな、たしかにこれは。
ラーメン680円。店名は、地名をそのまま取ったものらしい。この人を食ったようなセンスもいいな。