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2008-05-27

今朝の読売新聞

アメリカの保守の論客だという、ロバート・ケーガンという人が、新著を出版したということでインタビューに答えている。

「冷戦の終結後、人々は二つの見方を受け入れた。大国間の地政学的競争は終わったという見方と、自由民主主義が勝利してイデオロギーの競争も終わったという見方だ。(中略)だがどちらも誤りだった」

「驚くべきことに独裁体制が今後も生き残りそうな、一つの政体として復活した。国が豊かになり、経済の近代化が進めば、政治も変わると思われていたが、中国は政治的開放が進まず、ロシアは専制色を強めた。この体制はたぶん数十年は続く。共産主義ほどの感染力はないにせよ、模倣しようとする指導者も増えると思う。今後は大国間の昔ながらの地政学的競争と民主主義対独裁主義というイデオロギーの競争という二つのせめぎ合いが重なり合って続くだろう」

(米国の今後について)「第一に、米国人は自覚していないが、米国には自身の力で世界の形を決めていこうとする強固な伝統がある。次の大統領がバラク・オバマ氏でもジョン・マケイン氏でも、それに変わりはないだろう。第二に、米国と民主主義同盟との結びつきは強まる。仏独の指導者も地政学的な利害を考え、超大国、米国と緊密な関係を結ぶ決断をした。中東や東アジアの安全保障も米国の力を軸に構築されている。米軍の撤退は当面、だれも望んでいないと思う。それが世界の現実だ」

ケーガン氏はネオコンで、次期大統領候補であるマケイン氏の外交顧問の一人というから、著書の出版は大統領選挙に向けた運動の一環なのだろう。しかし今後もアメリカを中心に、民主主義国家が結びつきを強めながら世界が形作られれていくとは、短期的にはその通りであるにしても、それを数十年のスパンで継続するものであると考えるのは、楽観的に過ぎるのではないかと思う。

原丈人氏は『21世紀の国富論』で、「冷戦が終結し、西側の資本主義体制が勝利したことで、今後は資本主義が永久に続くかのように思われてきました。しかし、その後の世界で起こっていることは、世界中が一斉に、しかも過度の利潤追求に走りだしているという現実です」と言う。

「それまで短期的な利潤追求が行きすぎることなく保たれてきたのは、対峙する社会主義体制下の計画経済という存在があったからこそでした。もうひとつの体制が脅威となっていた時代もあったし、もはや脅威ではなくなった1970~80年代でさえも、その存在ゆえに資本主義はその優れた側面が前面に現れていたところがあると思います」

「しかし今、アメリカが中心を担っている資本主義のシステムは、仕組みそのものが疲弊し破綻しかけていることに、もっと多くの人が気づくべきです。アメリカだけでなく日本でも、年金基金などが多くの資金をヘッジファンドに投入しています。カネがカネを生む現象を美化し、夢の実現と錯覚させている」

「そこにあるのは、マーケットがすべてを決定し、マーケットにおける価値がすべてという、行きすぎた市場万能型資本主義に他なりません。カネをいくら膨らませたかによって価値を比較するスタイルの資本主義は、多くの問題点を解決できないまま、破綻に向かって突っ走っているのです」

ぼくはその通りだと思う。ケーガン氏は独裁体制をばい菌扱いする。しかし独裁体制は支配層が自らの利益を最大化しようとして作り出すものであり、それは形こそ違え、内実においてはアメリカのやろうとしていることと何ら変わるものではない。

原氏は世界を変えることができるのは、新しい技術なのだと主張する。人間が機械に合わせるのではなく、機械を人間に合わせようとしていくこと、その根幹には、コンピュータ上の情報をもっと人間のやり方にそった形で保存できるようにし、それを中央に一元的に集めるのではなく、個人個人が分散して持つことができるようにすること。そのような技術革新が新たな産業を生み出し、経済を活性化し、それによって新たな文化が生み出されていく。またその技術は人と人との結びつき方を変え、政治を変えていく。すごい展望である。

今こうして、一見先行きの見えなくなっている時代。しかし逆に言えば、千載一遇のチャンスが到来しているのである。