このサイトは、おっさんひとり飯の「旧サイト」です。
新サイトはこちら
へ移動しました。
なんでサイトを移動したの?⇒ こちら

2011-12-15

韓国の若者鍋。
「ブテチゲ」

韓国はお隣の国であり、日本とは昔から、深い関係をたもってきているにもかかわらず、文化が驚くほどちがう。

人の顔立ちや、服装などは、日本とそっくりだったりするから、ぱっとみると似ている感じがするのだが、よく見るとぜんぜんちがう。しかしさらに、よくよく見てみると、これがまた、実はそっくりだったりするのが面白いところだ。



韓国の料理も、日本料理とはだいぶ趣きがちがう。だいたい日本では、汁をあんなふうに真っ赤にすることなど、けっしてないわけだが、実は使う調味料じたいは、韓国も日本も、ほとんど同じだ。酒、砂糖、しょうゆ、味噌、ニンニク、ゴマ、唐辛子・・・。韓国にしても日本にしても、元は中国の文化を手本にしているのだろうから、共通の基盤があるのは当然のことだ。ただ調味料の配合が、極端にちがう。日本では、ニンニクや唐辛子は、微量しか使わないのにたいし、韓国では大量に使う。

日本にもニンニクは、随分昔から入っていたが、禅宗で懊悩を増すとして禁じられたのだそうだ。その影響で、日本料理には、ニンニクがほとんど使われなくなった。しかし禅宗の発祥の地である中国では、ニンニクをふつうに使うのだから、日本がニンニクを使わなくなったことは、中国の思想を輸入したということではなく、日本独自の考えがあったのだろう。世界の料理をみても、ニンニクを味の決め手とするところは多いのだから、それにたいし、日本がなぜ、ニンニクを使わない、少数派の道を歩むことになったのか、興味深いところだ。



「ブテチゲ」は、韓国では若者に人気の料理だ。学生の飲み会で出てきたり、キャンプやバーベキューで自分たちで作ってみたりするらしい。もともと「部隊チゲ」と書き、朝鮮戦争当時、若い韓国の兵士たちが、手近にあった材料を使い、ヘルメットを鍋がわりにしてつくり始めたのが発祥だといわれている。

ブテチゲに欠かせないのが「スパム」だ。スパムは味付けした豚ひき肉を、缶詰にして加熱殺菌したもので、戦争中や戦後の食料不足の時代、アメリカやイギリスではこればかり食べていたから、スパムメールの語源ともなったものだが、実際のところたいへんうまい。豆腐にも似たやわらかな食感で、焼いてもいいし、スープに入れればいいだしも出る。沖縄や韓国など、米軍が駐留する地域で大量に出回っている関係で、沖縄料理や韓国料理では、スパムを使った料理も生まれている。このブテチゲも、そのひとつだ。

スパムは京都のスーパーでも、340グラム入り1缶が、380円という、豚コマ肉と変わらない値段で売られている。

ブテチゲに入れるものは、あとはウィンナー、豆腐、長ネギやもやし、キャベツやしめじなどの野菜、「トック」とよばれる韓国モチ、それにインスタントラーメンとなる。



韓国ではブテチゲを作るとき、すべての材料を鍋にいれ、だしを張り、調味料をのせ、調味料を溶かしながら食べるわけなのだが、それだと日本人としては、鍋のたのしさが半減する。鍋は、卓上のコンロでだしを沸かした鍋に、材料を好きな順番でいれ、好きなように火を通していくところに、大きなたのしみがあるのだから、今回は、ブテチゲも、日本流でいくことにする。

だしは煮干しでとればいいが、家に煮干がないので、削りぶし。

このだしに味をつけていく。

まず、たっぷりの酒と、少ないかな、という程度のしょうゆ。ここまでは、日本と同じだが、韓国では、みりんや砂糖など甘みのかわりに、ニンニクと唐辛子を入れる。

ニンニクは、すりおろして入れるが、日本人の感覚からすれば、1かけで十分だと思うところだろう。しかし韓国人は、これを3~4かけくらいは入れるのじゃないか。

以前韓国で泊まった家のオモニが、4人分の参鶏湯をつくるのを見ていたら、みじん切りのニンニクを、ゴルフボールほどの分量を入れていた。かけ数でいえば、10かけ分はあっただろう。韓国では、食堂などで、ひと株まるごとのニンニクを醤油漬けにしたのが、株を半分に割っただけで、付け合せとして出てきたりする。ニンニクの量のケタが、日本とはまるでちがうのだ。

昨日はやや多めと思い、ニンニクを2かけ入れてみたが、やはり韓国度は、ちょっと低めだった。

唐辛子は、やはり韓国食材店で、韓国のものを求めたい。日本の唐辛子に比べれば、だいぶ辛さは控えめだから、これはスプーンで2杯くらい、たっぷり入れても、それほど問題ない。

あとはキムチ。キムチはブテチゲでは、だしがわりに使われると考えていいから、それほどの量を入れる必要はない。キムチの汁があれば、それもいっしょに入れるとなおよい。

最後に味をみて、塩加減をして味を決める。



鍋が煮えるあいだ、韓国ノリでもつまみながら、あたたかい日本酒をのむ。日本酒は、韓国料理に問題なく合う。



鍋に張っただしを、好きな火加減で沸かし、好きな材料を、好きな順番にいれ、好きなだけ煮る。

酒をのみながら、自分で好きなように料理するのは、なんともいえぬ解放感がある。

これこそがやはり、日本流の、小さな「自由」なのじゃないか。



最後はインスタントラーメンでシメる。その日にシメればもちろんいいが、翌日にまわしてもよい。