ライブは、「レッド・ツェッペリン」の「なりきりバンド」(業界では、「トリビュート・バンド」と言うそうだ)、「ミスター・ヘンリー(MR. HENRY) 」のギタリストである「ジミー・トガワ」さんに誘われたもので、僕は出張の予定だったのが、それが急になくなり、来られることになったのだ。
夏の終わりに初めて行って 、今回で2回目。
場所は前回と同じ、岩国の「ロック・カントリー 」。
岩国駅から3分、繁華街のど真ん中にあり、こういう場所で、「ハード・ロック」という、あまり時流に沿ってるわけでもない音楽のためのライブハウスを維持するとは、ここのオーナー、かなり腹が据わっている。
話を聞いたら、
「いや、儲からんですよ、全然」
とのことだった。
頑張ってほしい。
今回のお目当ては、ミスター・ヘンリー。
今回は多数の新曲に挑戦したそうだが、演奏も危なげなく、きちんとこなしていた。
ジミーさんは、ギターを、上のレスポールから、
このギター、何ていうんだっけな、さらに
ダブルネック、と3本も持ち替え、大健闘。
これらのギター、どれも目が飛び出るくらい、高いのだそうだ。
たぶんジミーさん、自分の給料、全部ここにつぎ込んでるんだろうな。
ボーカルのロバート君は、他のメンバーにくらべると若いのだが、
今回は、彼女にばっちりメイクまでしてもらって、気合十分。
歌がきちんとしていたことはもちろんだが、曲のあいだの「しゃべり」もちゃんと頑張っていて、客の笑いを取っていた。
エライ。
ジミーさんとのコンビネーションプレイも、息がぴったり合っていた。
ベースの、ジョン・ポール・ジョーンズさん。
キーボードはまだ、あまり慣れないようだが、真面目に頑張っていて、好感がもてるな。
本家のジョン・ポール・ジョーンズは、ベースに、キーボードに、ほんとに多才で有能な人だし、ライブではキーボード弾きながら、足ではベースを踏まないといけないから、なりきるのも大変なのだ。
ドラマー、ジョン・ボーナム。
後ろのドラや、そのほかにティンパニを2つ、本家と同じようにきちんと設置しているのだが、全部自前。
ジョン・ボーナムになるのも、ラクじゃないのだ。
しかもこのボンゾ(ジョン・ボーナムの愛称です)さん、ちょっと外人みたいな顔立ちをしていて、付け髭とかつらをつけると、本家
にそっくりなのだ。
そこまでなりきれる人は、なかなかいないな。
「テルミン」という、あれどういう仕組みなんだろう、たぶん周りの電磁波の変化を感知して、手や身体を近づけたり離したりすると音が変わるという、そういう楽器、それも本家と同じように忠実に再現していたし、
アンコールは、「コミュニケーション・ブレークダウン 」、これは僕がツェッペリンの中でいちばん好きな曲なのだけれど、ジミーさん、客席に乱入の大サービス。
ツェッペリン・ファンとしては、泣けました。
今回は「ミスター・ヘンリー」の良さが、大変よく出ていたと思うのだが、ツェッペリンの「なりきりバンド」を見に来る客の気持ちとしては、「ツェッペリンを見たい」のだ。
もちろん目の前にいるのは、ツェッペリンとは似ても似つかぬ日本人、なわけだが、それでも、ツェッペリンの演奏をこと細かくコピーして再現し、同じ楽器を買い、かつらを付け、同じ衣装を着、「少しでもツェッペリンに近づきたい」という気持ちが、こちらの感動を誘うのである。
こういう言葉を使うのは気恥ずかしいが、「愛」なんだな、やはり、ツェッペリンに対する。
ミスター・ヘンリーは、まだまだ色々課題はあることと思うけれど、この「愛」が、それこそ「胸一杯に」(あ、これ、ツェッペリンの曲の名前と重ねて、洒落てみました)感じられるところが、嬉しいのである。
これからどんどん進化していくことと思うけれど、この「ツェッペリンに対する愛」だけは、忘れないでほしいなと思う。
忘れるわけないね。
同じ意味なのだが、最近のギタリストはふつう、「エフェクター」という、ギターの音を歪ませたり、伸ばしたり、色々に変化させる機器を、いくつも使い、それを切り替えながら演奏するものなのだが、ジミーさんのエフェクター、
これだけなのだ。
比べるための写真を撮らなかったので、分かりにくいかも知れないが、こういう世界の相場としては、驚くぐらいに少ない。
でもこれは多分、本家ジミー・ページが使っていたのと、同じエフェクターなのだと思う。
なりきりジミーさんは、ギターだけでなく、アンプも、本家が使っていたのと同じものを、大枚はたいて手に入れているから、こういうことが可能なのだな。
実際、今どきのギターの音でよくある、均一に「ザー」と歪んだものとは全くちがい、生のギターの、ちょっとペナペナした感じが残りながら、大音量の部分では迫力をもって歪むという、なんともいい音がした。
これはジミーさんの身を削るような出費(あはは)によって、可能となっていることなのである。
こういうところに感動するんだよな、ツェッペリン・ファンは。
最後はカーテン・コール、客も大満足、いい時間だった。