2012-03-22

カキの食べ方の1つの王道。
「カキのぬた」




カキもそろそろ終わりだから、今のうちに食べておかないといけない。

カキの食べ方もいろいろあるけれど、カキの本場、広島の人に聞いたら、やはり「鍋に入れる」というのがいちばん多いみたいでした。

あとは生食用をポン酢で食べる「酢ガキ」や、カキフライ、カキのソテー。

殻のついたままのカキを焼いて食べる「焼きガキ」も、広島ではよく食べるようだけれど、殻のついたままのカキは、他県では、スーパーでも魚屋でも、なかなか見かけることはないですね。



簡単な食べ方といえば酢ガキだけれど、カキはさっとゆでてもまたうまい。

生とはまたちがう、ふっくらとしたやさしい味になってくれます。



火をとおして食べる時には「加熱用」のカキを買うことになりますが、意外にわからないのが、カキの「生食用」と「加熱用」のちがい。

他の魚とおなじように、生食用のほうが「鮮度がいい」と思いがちなんですが、実はちがうんですね。

カキは生で食べると当たる可能性があるから、生食用のカキは、水のきれいな海域でとれたものを選び、さらに数日をかけて、減菌処理をしたものを出荷する。

それにたいして加熱用は、この減菌処理をしていないというのが、生食用と加熱用のちがいです。

ただ減菌処理をするときの数日間は、カキは餌を食べられないから、その分痩せてしまうことになる。

だから加熱して食べるなら、加熱用の方がおいしいということなんですね。



加熱用のカキをさっとゆで、大根おろしでも添えポン酢で食べれば、もう十分おいしいのだけれど、ちょっと手をかけるなら「ぬた」。

これは僕が広島にいたころ、毎日のように通った食堂で食べさせてもらったやり方です。



お湯を沸かし、まずぶつ切りにした青ねぎ、それからカキをゆでる。

カキはゆで過ぎると、小さく、かたくなってしまうので、くれぐれもゆで過ぎないよう、「温まった」くらいのところで引き上げるのがポイントです。



タレは白味噌と酢、それにからし。

酢の量を調節して、どろっとした加減にし、好みの量のからしを入れる。

京風の白味噌なら、これだけでいいけれど、ふつうの麹味噌を使うのなら、すこし砂糖を入れたほうがいいのかもしれません。

このタレに、ゆでたカキと青ねぎを入れ、和えればぬたの出来あがり。



これは非常にうまいです。

カキの食べ方の、王道の1つといえるのじゃないでしょうか。



カキのゆで汁は、もちろん捨てずに、吸い物にします。

昨日はだしを取ってあったので、それで割りましたけれども、カキをゆでるとき昆布を入れ、さらに酒を多めに足せば、十分かもしれません。

塩と醤油で味付けします。

カキのエキスも、しじみと同様、肝臓の機能を助け、二日酔いをおさえる働きがあるのだそうです。



あとは昨日は、「小芋」を煮ました。

女性はイモ類が好きですが、男性の場合、イモ類はあまり食べない人が多いでしょう。

たしかにイモは、酒のツマミにも、ご飯のおかずにもなりにくい。

「存在価値がわからない」というところではないでしょうか。



しかしその、酒のツマミにも、ご飯のおかずにもならないところが、イモのよいところでしょう。

並んでいる皿が、ツマミやおかずになるものばかりだと、つい箸の移動が、「酒とツマミ」「ご飯とおかず」の往復運動になってしまう。

ところがそこに、ツマミにもおかずにもならないイモがあると、箸は往復運動から解放され、ほっと一息つけることになる。

食卓の、まさに「オアシス」のような存在が、イモであるといえるのではないでしょうか。



里芋は、ほんとに色々種類がありますが、炊いてしまえば、どれもあまり変わりません。

大きい場合は、半分に切って一口大にし、上下を落として、皮をむきます。

「六方にむく」といい、包丁をタテ方向に動かして、里芋が六角形になるように皮をむくと、むきやすいし、見栄えがいいですね。

里芋の皮のあたりはかたいので、すこし厚めに皮をむきます。



まずは下ゆで。

10分くらいにて、箸がすっと刺さるくらいにやわらかくします。



湯を捨て、やわらかい芋をくずさぬよう、水でやさしく洗い、ヌメリを落とします。



あらためて鍋に入れた芋に、かぶるくらいのだしを張り、酒を大さじ3程度、それに砂糖とみりんを大さじ1~2杯入れ、まずそれだけで、フタをして、弱火で5分ほど煮る。

そうしたらうすくち醤油を、味を見ながらちょうどいい加減までくわえ、さらに10分程度煮る。

火から下ろしたら、そのまましばらく置いて、味をしみ込ませる。

味は、冷めるときにしみ込むんですね。



ほんとうは、柚子の皮をすりおろしたのをかけるのですが、昨日は省略。

だしの味がしみた小芋はいいものです。



それから漬物。

日の菜とスグキ。

スグキも肝臓にいいのだとか。



酒は日本酒。

献立の中にイモがあると、ご飯がなくてもお腹がいっぱいになるのもいいところです。



カキのだしは、翌朝のうどんにも使います。