2012-03-24

100円のサンマがごちそうに。
「サンマの蒲焼」




自炊するとなると、やはり「お金を節約する」ということが、大きな目的にはなってきますよね。

たしかにそれはそうなんですが、お金を節約することだけを考えて自炊してしまうと、どうしても侘びしい気持ちになってしまう。

秋になると、サンマが1尾100円とかで出てきますから、そうすると当然、自炊人としてはそれをありがたく買うことになるわけですよね。

でもお金のことだけを考えてしまっていると、「サンマしか買えない」と思って、悲しくなってきたりすることもあるんじゃないでしょうか。



しかしそれでは、人生、つまらないというものでしょう。

そこで先人の轍をひもとくことになる。

サンマは、昔から安いものだったでしょう。

そのサンマしか買えない貧乏な人が、これまで数限りなく、生まれて、そして死んでとしてきている。

しかしそういう貧乏な人たちも、それしか買えない同じサンマを、すこしでもおいしく食べたいと、さまざまな工夫をしてきているわけなんですよね。

そこに「料理」というものの醍醐味がある。



サンマはもちろん、まず塩焼きすれば、死ぬかと思うほどおいしいわけですが、しかしさすがに、毎日サンマの塩焼きだけでは飽きてしまう。

それでサンマを使った、さまざまな料理が編み出されてきた。

そういう先人の知恵を学び、自分で毎日取っ替え引っ替え、サンマを使った違った料理を作ってみることは、侘しくなんかないですよ。

先人の知恵に感動し、サンマのまた違ったおいしさを発見し、最高に面白く、ワクワクする、偉大な学びの体験であるといえるのではないでしょうか。



「安くておいしいものを食べたい」というのは、誰でも考えることだと思うんですよね。

それを実際に実践できているとしたならば、それは自慢すべきでこそあれ、侘しいことではまったくないと思うんです。





というわけで、昨日はさんまの蒲焼。

相変わらず、サンマは1尾100円以内で売っています。

この時期のサンマは、いうまでもなく解凍物になるわけですけど、解凍物も馬鹿にできないですよ。

旬の、一番おいしい時のサンマを、進歩した冷凍技術で保存していますから、下手に季節はずれのサンマを生で買うより、よっぽどおいしいです。



サンマを蒲焼にするには、3枚におろさないといけないわけなんですが、これは別に難しいことはないです。

魚が3枚におろせるようになると、世界がとても広がりますから、ぜひ挑戦してみてほしいところです。



包丁は、べつにふつうの、安物のやつで十分なんですが、ただよく切れることは絶対に必要です。

ですから簡易研ぎ器で、きちんと研いでからやるようにします。



まずサンマの頭を落とします。

それから腹に包丁をいれ、半分よりやや尾っぽよりのあたりに肛門がありますから、そこまで腹を引き裂きます。

それで中のはらわたをかき出して、水でよく洗う。



そうしたらサンマの、中骨の上のところに包丁を当て、サンマを手でおさえ、包丁を前後に動かすようにしながら、中骨にそって、包丁を尾の方にむけ移動させていきます。

これは裏側も同様。

そうすると、あっという間に3枚におろせてしまうというわけです。



腹骨は、口に当たりますから、これは包丁を使って、そぎ落とすようにします。

中骨もあるんですが、蒲焼などにする分には、まったく気になりませんから、放置しておいてだいじょうぶです。

あとはこれを2つに切り、もう一回水で洗い、その水をキッチンペーパーでよく拭い取れば、サンマの下ごしらえは完了というわけです。



蒲焼にするには、サンマに小麦粉をふっておきます。

ビニール袋に小麦粉とサンマをいれ、下から叩いたり振ったりすると、簡単できれいにできます。



フライパンを中火にかけ、油をひいて、フライパンが温まったら、サンマを身を下にして入れます。

魚を焼く場合、焼き網やフライパンを使うにせよ、レンジのグリルを使うにせよ、食べるときに上になる方を、まず下にして焼くのが基本だと思うんですね。

裏返すと、油が下に落ちてくれますから、おもて面がきれいな焼き上がりになります。

それに食べるとき上になる方を、下にして焼き終えてしまうと、皿に盛るとき、もう一度ひっくり返さないといけないから、それだけで、皮が剥がれたりして汚くなってしまいます。



身がこんがりと焼けたら、ひっくり返します。

皮は焦げやすいので、火を弱火にした方がいいんじゃないかと思います。



皮もこんがりと焦げ目がついたら、いったん火を止め、魚から出た脂を、キッチンペーパーでよくぬぐい取ります。

魚から出た脂は、臭みになってしまうからなんですね。



それからここに、タレを入れるわけなんですが、タレの材料は酒と砂糖、みりんと醤油。

作り方は、まず器に、酒を4分の1カップほど入れます。

酒は臭みを消し、コクを増すためにあるものなので、どのくらいでもいいんですね。

それから砂糖を、大さじ1でも2でも入れてみる。

これはコッテリさせたければ、たくさん入れればいいし、体のことを考えたりしてあっさり目でいきたければ、少なくすればいいということです。

みりんも、カップ8分の1ほど、器に入れてみる。

最後に醤油を、よくかき混ぜて、味を見ながら、ちょうどいいと思う加減まで加えていく。

味は、冷めると塩気が立ちますから、「すこし甘めか」と思うくらいで、最終的にはちょうどよくなります。

調味料を調合するときには、分量ではなく、あくまで味見をして、自分の舌で決めていくのが、料理を楽しむ最大のポイントなのじゃないかと思います。



フライパンを、ふたたび中火にかけ、タレをジャーと注ぎ込み、焦がさないように煮詰めていく。

汁が少なくなったら、火も弱火に落としたほうがいいですね。

このタレを、サンマをひっくり返しながら、よく絡めつけたら出来あがり。



山椒をふって食べます。

青ねぎをふったりすると、色目がきれいですよね。

こんがりと焼け、こってりと甘辛いサンマは、酒のツマミにもご飯のおかずにも言うことなし。

塩焼きが、冷めると急速にまずくなるのに対して、これは冷めてもおいしく食べられますから、チマチマとツマミを食べながら、酒を飲むには最高です。

あ、お弁当のおかずにも、いいでしょうね、これは。

ご飯の上にこれをのっけて、サンマの蒲焼弁当とか、すごくおいしそうかも。



あとはインゲンのごま和え。

インゲンを丸のまま、5分くらい、水でゆでます。

筋は取ったほうがいいですが、取れなければ、取らなくてもいいです。

食べてみて、ちょっとかたいめくらいにゆで、水で冷やして、よく水をぬぐい取り、両端を落として、半分とか、大きなやつなら3分の1くらいに切ります。



タレですが、すりごまは、1回分ずつ袋に入っているやつが、使いやすいです。

これに砂糖と醤油、大さじ1杯くらい、それにみりんを1たらし、これもよく味を見て、それでインゲンを和えます。



インゲンも、そろそろ旬に入りますから、今たくさん店に出回るようになっていますよね。

すこし歯ごたえのあるインゲンに、ごまの風味がよく合い、なんともうまいです。



アサリの味噌汁。

鍋に水を張り、昆布を入れて火にかけて、沸騰したら昆布をとり出す。

塩水に1~2時間つけ砂出しし、殻をこすりあわせてよく洗ったアサリを、沸騰した昆布だしに入れ、殻がひらいたら、味噌を溶き入れ出来あがり。

細く切った油揚げを入れたりしてもいいですね。

この時期のアサリは、身が大きくぷりぷりしていて、ほんとにたまりません。



あとは小芋に漬物で、日本酒。

常温で飲みましたが、すこし冷たい酒が、おいしく感じられる季節になってきましたね。