2012-02-10

純和風の手順で作る。
「クラムチャウダー鍋」


洋食を作ろうと思うと、何かと手がかかることになるわけなんですよね。

クラムチャウダーを作る場合なら、ひとつの手順として、まずアサリを煮て、殻をはずし、煮汁とむき身をとっておく。

次に玉ねぎやらニンニクやらとベーコンを炒め、さらに小麦粉を炒めて、そこにアサリの煮汁を入れる。

ジャガイモを煮る。

牛乳を加え、味付けして出来あがり。

ということになるわけです。

たしかにこうして作れば、おいしいクラムチャウダーができるわけですが、それではこの通りにやらないとおいしくないのかと言えば、疑問の余地があるといえるでしょう。



まずごていねいに、あらかじめアサリを煮て、殻をはずすのは、日本人とはちがう、西洋人ならではの感覚だという感じがする。

西洋人って、スープの中に材料がゴロゴロと入っているのは、あまり好まないところがありますよね。

いろいろな野菜が入っていても、それを煮溶かしてしまい、姿も形もないようにしてしまう。

これはたぶん、「スープ」というものの定義が、「材料以外の、汁の部分」ということになっているとか、そんなこともあるんでしょうね。

それにスープはスプーンで食べるものだから、アサリの殻なんかが入っていてしまうと、うまく食べられないことになったりする。

でも箸の文化である日本人は、アサリの殻が汁に入っていても、とくべつ何の問題もないし、むしろ殻がついたままの方が、うまそうに見えたりする。

そう考えるとこの第1の手順である、あらかじめアサリを煮て、殻を外しておくというところは省略してしまい、アサリは日本人が鍋を作るときにやるように、最後に入れてしまってもかまわないことになるでしょう。



それから次に、玉ねぎやニンニクなどの香味野菜を炒めることについても、炒めれば、それは甘みが出ておいしいには違いないけれど、炒めなければおいしくないのかといえば、そんなこともない。

べつに日本人は、玉ねぎにしたって長ねぎにしたって、炒めずにそのまま汁に入れ、十分おいしく味わうわけじゃないですか。

だから、やったらやったで越したことはないけれど、やはりこれも、省略が可能だということになりますよね。



小麦粉を入れるというのは、汁にトロミを付けるためですが、トロミをつけた汁は、たしかに冷めにくいし、体も温まるけれど、日本人は多くの場合、べつに汁にトロミなど付けなくても、おいしくいただくわけですよね。

こうやって考えてみると、クラムチャウダーを作る手順の中には、省略してもおいしくなくなるとはいえないものが3つあり、実はこれらを省略すれば、日本人が土鍋などで、ふつうに鍋料理を作るやり方をして、クラムチャウダーが作れてしまうということになるんですね。



とまあ、なかば強引に、クラムチャウダーを鍋として作ろうとしているわけですが、外国の料理を日本に持ち込もうとする際に、かならずしも外国でやっている通りにしなければいけないというものではないでしょう。

イギリス人だって、インドで作られていたカレーを自分の国へ持ち込むときに、それまで自分たちが作っていた「シチュー」と同じやり方で作るよう、カレーのレシピを変えてしまった。

家庭で料理を作るときには、道具も限定されているし、手順もパターン化されているのだから、その範囲でできるように工夫することは、当然のことでしょう。

何でもかんでも、外国のやり方そのままがいいと考えるのは、一見かっこいいようにも思えるけれど、それは家庭にとってはただ負担なだけであり、結果として、レトルトなどのインスタント食品を増やすことになっているんじゃないかと思うんですよね。



と自己正当化してみたところで、クラムチャウダー鍋。



クラムチャウダーを鍋にしようとすると、やはりアサリだけでは、ボリューム的に足りないので、だし取りも兼ねて鶏もも肉を使います。

それからもちろん、ジャガイモと玉ねぎ。

ジャガイモは、10分程度で火が通るよう、5ミリくらいの厚さに切って、水にさらしておきます。

玉ねぎは、くし切りなど、ザクザクと大きめに切る。

あとは鍋らしく、白菜に油揚げ、それからシメジ。

これらはいずれも、ホワイトソースの味にバッチリ合います。

アサリは塩水につけて砂出しし、こすり合わせてよく洗っておきます。



まず鍋に、予定する煮汁の分量の、半分の水、いつも鍋に、800ccの水を使うなら、400ccだけ入れる。そこに半カップ程度の日本酒、ニンニク1かけらとローリエを入れ、鶏肉を入れて火にかける。

これでだしを取っておくということなんですね。

鶏肉は、10分ほど、中火で煮ます。

アクは取ってもいいですが、どちみち白く濁してしまうのだから、取らなくても問題ありません。



10分煮たら、水と同量、400ccの水を入れたのなら、400ccの、牛乳を入れます。

それから、ここで味付けする。

まずバターを1かけ。これはすでに牛乳が入っているのだから、コク出し程度にちょっとで大丈夫です。カロリーも高くなるし。

それからオリーブオイルを大さじ1杯。

トマトピューレかケチャップを大さじ1杯。

タイムなどを少々ふり込んでおくと、本格的な味になります。

セロリのみじん切りを、ここで入れてもいいですね。

そして塩。このあとアサリの塩気も加わるし、鍋は火にかけておくから煮詰まってもきますので、塩は「ちょっと足りないかな」というくらいにしておいて、ちょうど良くなります。



あとはここに、ジャガイモと白菜、玉ねぎを入れ、10分程度煮てやわらかくなったら、シメジとアサリを入れ、アサリの口が開いたら出来あがり。



器によそい、粗挽き黒こしょうとパセリをふります。



これは申し分なく、完全に、クラムチャウダーの味。

日本酒にもよく合い、非常にうまいです。



クラムチャウダーうどんもいいですよ。