2012-01-04

一人暮らし料理のポイントは断捨離。
「鶏手羽元のおでん」


僕が一人暮らしをするようになってから、もう13~14年がたつんです。

別居がきっかけで、最終的には離婚したんですが、ですから一人暮らしも、けっこう年季が入ったもので、家事ももちろんすべてやりますし、とくべつ困ることは、何もありません。

一人暮らしでやらなければいけない3大家事といえば、やはり掃除、洗濯、それに食事の用意ということになるわけですよね。

掃除と洗濯は、どの程度の頻度かは別としても、まあやらなければどうしようもないので、一人暮らししている人は誰でも、かならずやることになっていると思います。

ただ食事については、一人暮らしだと、やらない人も多いんじゃないかと思うんですよね。



第1の理由として、たしかに「時間がない」ということは、あるかとは思います。

一人暮らしをしていると、仕事をしなくちゃいけないから、食事の用意までしている間がない。

でもこれは、主婦の人だって、仕事をしながら家事をこなしている人だって多いのだから、どちらかといえば言い訳であって、理由にはなっていないといえるでしょう。

しかしそれより、「張り合いがない」というのが、大きいんですよね。

作った料理は、自分にとってはある意味「作品」となるわけだから、それを誰にも知られることなく、自分の胃袋に収めることだけで終わってしまうことは、あまりに虚しい。

だから僕は、一人暮らしの人は、料理ブログをやることを、ぜひ薦めたいです。

料理ブログでは、自分の作ったものを、とりあえず写真と文章で、人に見てもらうことは、最低できる。どんなにおいしく作っても、人に食べてもらえないので、うまさを証明できないことが、ちょっと残念ではありますが、少なくとも張り合いのなさが解消されることは、まちがいありません。

ツイッターとか、フェイスブックなどで、写真を投稿するだけでもいいですよね。



それからこれがけっこう大きいと思うのは、世の中の色んなことが、一人暮らしが料理をすることに、適したものになっていないこと。

たとえばスーパーへ行っても、一人暮らしに適した量の食材は、あまり売っていません。

最低でも2人で食べるのに適当な量になっているから、ひとりで食べるには多すぎる。そうすると、食材が、どうしても余ることになりがちなんですね。

余らせないようにしようと思うと、一つの方法は、買った食材をすべて使って、料理を作ってしまうこと。そうすると、1日では食べ切れない量の料理ができてしまうから、それを何日も、食べ続けないといけないことになり、結果として、料理をするのが嫌になってしまう。

余った食材を、冷蔵庫や冷凍庫に入れておく方法もあります。

でも冷蔵庫や冷凍庫に入れてあるものは、どうもあまり、使う気にならないものなんですよね。

買ったときには、食べたかったものでも、冷蔵庫や冷蔵庫に入れて、日がたってしまうと、「食べなきゃいけないもの」に変わってしまう。食べなきゃ、食べなきゃ、と思っているうちに、さらに日が経ち、ダメにしてしまう。

日本では、「食べ物を残すと、残り物お化けが出てくる」などと言われ、「食べ物を残してはいけない」と教育されてきているから、残してしまうくらいなら、料理しないほうがいいと考えてしまうようになる。



だから一人暮らしで料理をするためには、

「一人暮らしの料理と、2人以上のための料理とでは、根本的にちがうところがある」

と考えなければ、いけないんじゃないかという気がしています。



まず第一に、捨てることに対して、罪悪感をもたないこと。

もちろん、捨てないほうがいいに、決まってはいるんですが、料理をするのが嫌になってしまうくらいなら、捨ててしまったほうがいい。

お店で一人暮らし用の量の食材を、あまり売っていない以上、とくに一人暮らし初心者の人が、食材や料理を余してしまうことになるのは、仕方がないことだと言ってもいいと思うんです。

食べ物を捨てるとき、心のなかでひと言くらい、「ごめんなさい」とでもつぶやけば、神様も許してくれるでしょう。



それからもう一つ、買い物をする時や、料理をする時は、「一食分」だけを買ったり、料理したりすることを心がけること。

はじめから余らせないようにすることが、ポイントなんですよね。



昨日はおでんを作ったんですが、おでんというと、どうしても、あれもこれも、入れたくなってしまいます。

でも入れない。自分が一番食べたいもの、4点ほどに絞ってしまう。

僕は大根と玉子と厚揚げが好きなので、それだけは絶対に入れて、昨日はあとは、鳥の手羽元を入れました。

大根や玉子は、日持ちしますから、多少残っても問題ないんですが、これにはんぺんだのゴボウ天だのを入れてしまうと、食べ切れない、使い切れないことになりがちかと思います。

おでん以外の料理でも、料理の本には、一人暮らし用のレシピとか、まず載っていません。

食材をいろいろ使うことに、だいたいはなっている。

だから一人暮らしが料理をしようとする時には、多くの場合、料理本のレシピの通りに作らず、材料の点数を減らすことが、必要になってくるんじゃないかと思います。



また、とくにおでんやカレーなど、煮込み料理の場合には、「長い時間かけて作ったのに、少しだけ作るのはもったいない」という気持ちが働くことも、料理をたくさん作ってしまう原因の一つにあげられるんじゃないかと思います。

たしかに気持ちは分かるんですが、それは「家族のための料理」の常識にしばられているから、そう思ってしまうのであって、一人暮らしには別のやり方があると考えるべきでしょう。

煮込み料理は、時間とガス代はかかりますが、煮込んでいる間に、風呂に入っていても、テレビを見ていてもいいのだから、かならずしも手間がかかっているわけではありません。



あと強敵なのは、スーパーの安売りです。

特売日などへ行くと、どれもこれも安くなっているから、安いうちに買っておこうと、ついいろいろ買い込んでしまうことになる。

でも、ただ「安いから」というだけの理由で買ったものは、買ったはいいけど、使いたい気持ちにならないものです。

そのうち冷凍庫の肥やしとなり、もうどうしようもなくなってしまう。

特売の値段に負けず、あくまでその日に必要なものだけを買うことが、一人暮らしには、必要なことなのじゃないかと思います。



というわけで、正月料理にも飽き、昨日作ったおでん。

冬の寒さをしのぐために、おでんと熱燗ほど、いいものはありませんよね。

おでんに入れるものは、僕的には定番の、大根、玉子、厚揚げのほか、鶏の手羽元。

鶏の手羽元は、普通はおでんに入れませんが、別に入れても問題ありません。

やわらかく煮え、だしも出て、おでんが一段とおいしくなります。



まずは大根の下ゆで。

大根は、はじめからだしで煮てしまっても問題ないけれど、やはりたしかに、下ゆでしたほうがうまい。

生米をぱらりと入れた水で、15分~30分。

大根のかたさによりちがいますが、箸がすっと刺さる程度に、やわらかくなるまで煮る。

生米を入れると、大根に味がしみやすくなるそうです。

何事も、ていねいにやると、多少の時間は余分にかかっても、楽しさが増すところが、長続きのポイントですよね。



鶏手羽元も、下ゆでする。

沸騰したお湯に入れ、1~2分にて、出たアクをお湯ごと捨て、手羽元はさっと水洗いしておく。



だしを取る。

一人暮らしで、まだ料理の楽しさがわからない人は、ぜひきちんとだしを取ることを薦めたいです。

ほんだしなど化学調味料に頼ってしまうのではなく、きちんとだしを取った料理は、自分でもびっくりするほどおいしく出来あがるので、料理するのがほんとに楽しくなります。

だしがきちんと取ってあれば、あとは何をどう失敗しても、そこそこおいしく食べられます。

おでんのための、濃いめのだしを取るためには、まず鍋に水を入れ、そこにだし昆布を入れて火にかける。

沸騰したら、スーパーに青い大きな袋にはいって売っている「削りぶし」を、2つかみくらい、ケチらずバサッと入れ、弱火で3分ほど、アクを取りながら煮る。

いつもはだしは、別鍋で取って、ザルにキッチンペーパーをしいて濾し取るんですが、昨日はもしかしたら、アク取りですくい取ってもいいのじゃないかとふと思い、やってみました。

もちろん火を止めてからやります。

やってみたところ、アク取りでは、水中の削りぶしを、なかなかうまく取ることができず、死ぬほどイライラしましたので、これはやはり別鍋でだしを取り、ザルとキッチンペーパーで濾し取るようにしたほうが、簡単だという結論に達しました。



だしが取れたら、ここに味付け。

まず日本酒、これは「鬼ころし」のような安いやつでいいから、それを最低でも、カップ半分程度入れる。日本酒は、多いほうがうまいです。

それから、みりんと醤油で、好きなように味付けする。

まずみりんをジャバジャバ、と入れてみて、あとは味をみながら醤油をいれて、ちょうどよい塩辛さにします。

濃口と薄口は、色のちがいだけなので、どちらを使ってもかまいません。



まずは大根や玉子、手羽元など、長く煮たほうがいいものから入れます。

厚揚げは、あとから考えたら、いっしょでもよかったかなと思いましたが、はんぺんとか、ゴボウ天などさつま揚げ類、あとジャガイモなどは、絶対あとから入れたほうがいいと思います。

これで、はじめしばらくはアクを取りながら、アクが出なくなったら鍋のフタをしめ、コトコト30分ほど、弱火で煮ます。

玉子ですが、これは生卵のまま、よく洗ったものをここで入れてしまってだいじょうぶ。

おでん屋でも、生卵をそのままおでんに入れるところは、少なくありません。

殻が付いていても、コンビニの味付け玉子の要領で、味はきちんとしみますし、殻をむかずに入れたほうが、玉子のプリプリ感が残ります。

卵の殻に、あとからヒビを入れるようにすれば、味はさらに早くしみます。

ただあとで卵の殻をむくのが面倒だという人は、ゆで卵を入れてください。



厚揚げなど、油で揚げたものを使うときには、かならずさっとお湯をかけ、油を落としてから鍋に入れるようにします。

これを、入れてから、さらに弱火で30分程度、煮たら出来あがり。

おでんはできれば、出来あがってからすぐに食べるより、しばらくおいて、冷えてから、温めなおして食べたほうが、味がしみておいしいです。

味は冷えるときに、しみていくものなんですね。



完成したおでん。

昆布と削りぶしのだしに、鶏のだしが加わり、これは非常にうまいです。



もちろん、カラシを添え、熱燗とともにどうぞ。