2011-12-23

オドロキのうまさ。
「ぶり大根韓国風」


朝めしは食べない。だいたい前の晩、寝る直前に飯を食うから、朝起きても、まだ腹が減っていない。ただそのままだと頭がぼっとししまうので、コーヒーを飲んでチョコレートをかじり、1枚くらいおせんべいを食べる。

そうして何だかんだとやっていると、ようやく昼を過ぎてくると、腹が減ってくる。しかし腹が減っても、すぐには食べない。ちょっと腹がへったくらいで、甘やかしてはいけないのだ。腹が減って、さらに腹が減って、ちょっと朦朧としてきて、もうこのままだと仕事が手につかないとなった時点で、はじめて飯を食う。そうすると、飯がうまい。

晩めしも、徹底的に腹が減るまで食べない。とくに晩めしは、すぐに腹をいっぱいにしてしまうと、もったいない。腹が減っているからこそ、酒がうまく、肴がうまい。だからできるだけ、すぐに腹をいっぱいにしてしまわないよう、ちびちび食べる。しかしどんなにちびちび食べても、2時間もたつと、腹がいっぱいになってしまうから、仕方なく飯を食うのをやめ、寝ることにする。



まあそんなことは、どうでもいいのだが、昨日はぶり大根。

「ぶり大根」というのも、使っている材料が、そのまま名前になってしまっているのだから、大したものだ。ふつうのネーミングの規則からいうと、「ぶりと大根の煮物」とでもなるのだろうが、そんな小じゃれた言い回しはまどろっこしいから、ぶり大根でいいじゃない、とでもいうのだろう。

材料をそのまま名前にしてしまっている食べ物を、思い付くままにあげてみると、肉じゃが。肉豆腐。豚キムチ。あとこれは材料とはちょっとちがうが、ラーメンライス。ギョウザライス。ハンバーグライス。カレーライス。どれもひとびとに極度に親しまれているものばかりだ。肉の質やら、味付けやら、そんなものはどうだっていい。肉とじゃがいもが煮込まれていれば、もうそれで十分満足だ。そんな気持ちがうかがえるようだ。

ぶりを炊くには、実際のところ、魚の煮付けには定番のゴボウをあわせたっていいはずだし、冬の野菜がいいのなら、カブをあわせたってよさそうだ。しかしやはり、あのトロリと脂が乗った、ぶりの食べ応えには、ホクホクに煮えた、大ぶりの大根の、どっしりとした存在感がふさわしい。



ぶり大根は、もちろん醤油で炊くのがふつうだが、このところ韓国風にハマっているせいで、昨日はコチュジャンで炊いてみた。ゴマ油をたらして食べると、これが死ぬかと思うくらい、うまい。べつに韓国風でなくても、ぶり大根自体が、もともとうまいわけだが、韓国風も、びっくりするようなおいしさだ。

まず大きめに切った大根を、鍋に昆布をしいて、30分ほど下ゆでする。

ぶり大根にするには、言うまでもないが、切り身より、アラのほうが、脂が乗っていてうまい。しかもアラのほうが、値段が安いのだから、いうことない。

ぶりはあらかじめ、湯通しし、よく水洗いしておく。ぬめりだとか、血のかたまりだとかを、手でこすってよく落とす。湯通しは、給湯器のお湯の温度が、80~90度程度あれば、それで十分だ。

湯通ししたぶりを、大根をゆでていた鍋に入れ、酒をたっぷりと注ぎ込む。昆布は捨ててしまってかまわない。アクが出てくるから、しばらくはそれを、ていねいに取る。

アクがひと通り取れたら、味付けする。ニンニク2~3かけと、ショウガは親指の先くらいのやつを、スライスして入れる。それから砂糖。これは好き好きだが、スプーンで2~3杯入れたってかまわない。コチュジャン。これもたっぷり入れる。辛さが足りなければ、さらに韓国唐辛子の粉をふり込む。最後に醤油で、塩気を決める。

ここではまだ、味のバランスは完成されない。この料理の場合、最後にゴマ油をたらし込んで、ようやく完成することになるから、味がイマイチだと思っても、あまり気にしないで、塩気だけちょうど良くなるよう、醤油で調整しておく。

30分ほどコトコト煮て、そのあとかならず、しばらく置いて、冷ますようにする。味は冷めるとき、しみ込むものだからだ。

あとは食べるとき、もう一度火にかけて、好みでもやしやニラ、しめじなどを入れてみたりする。日本のぶり大根だと、余計な材料がゴテゴテはいらない方がいいが、こうしてコチュジャンで味付けするのなら、韓国風に、色々はいっていた方がたのしい。

最後に忘れずに、ゴマ油をたらし込む。



そのまま皿に盛り、食卓に出してもいいが、チマチマ時間をかけて食べる場合は、おでん式に食卓のコンロの火を最弱のとろ火にし、それで温めておくようにする。

これはやみつきの味。ぶりと大根が、これほど韓国風の味に合うあとは、思いもよらかなかった。

もちろん、ご飯にも合う。ご飯には、汁をかけるとまたうまい。