2011-12-22

韓国風基本のだしを使う。
「豚とカブのキムチ鍋」


日本の調味料は、基本的には、醤油味か、味噌味ということになり、もちろんそれを毎日食べても、飽きることはないけれど、おなじ味付けがつづくのは、少し寂しいところもある。かといって、カレー味やトマト味にしてしまうと、それも悪くはないけれど、日本酒がまったく合わなくなってしまい、酒自体を考え直さないといけないことになってくる。

そういうとき、韓国式の味付けにするというのは、非常に簡単に変化がつけられて、しかも日本酒にもよく合うから、いつも馴染んでいる世界が、そのまま大きく広がるような気がしてたのしい。さすが韓国は、お隣の国だけあり、いつもは顔を合わせない、親戚が訪ねてくるような気安さだ。



そうは言っても、はじめて韓国に行ったときは、食べ物が合わず、腹をこわして大変だった。大学生の頃だから、もう30年ほど前のことだ。当時はまだ、日本で食べられる韓国料理といえば、焼肉に冷麺、ビビンバ、クッパくらいのもので、今のように日本のどこでも、韓国の家庭料理が食べられたわけではなかった。

はじめて食べた韓国料理は、どこの国の料理にも、似ていないような感じがした。アメリカの料理は、ハンバーガーでもコーラでも、日本にはたくさん入ってきているから知っている。アメリカと韓国なら、距離ははるかに韓国のほうが近いのに、料理の味は、アメリカのほうが、はるかに日本に近いように思えた。

韓国料理は、中国料理ともまた、全然ちがう。体験したことがない味の世界に、自分のなかで、それをどう位置づけることもできなくなってしまい、身体が受け付けなくなってしまったのだろう。

しかし二度目に行ったときには、韓国料理の世界にすんなりと入ることができ、そうなるとハマってしまって、日本に帰ってきてからも、韓国料理が食べたくて仕方ない。ちょうどそのころ日本にも、焼肉ではなく、韓国の家庭料理を食べさせる店ができはじめ、そこにほとんど毎日のように、何ヶ月も通い続けたこともある。

そうやって今度は、韓国料理の味に舌がなじんでしまうと、日本の料理は、ただ塩っぱいだけで、味がしないような感じがしてくるから、不思議なものだ。日本料理と韓国料理とでは、味を感じる神経が、根本的にちがうところがあるのかもしれない。



韓国料理の味付けを、ひとことで言ってしまえば、日本料理の味付けに、ニンニクと唐辛子をたっぷり入れたものだ、ということになる。お吸い物でも味噌汁でも、そこにニンニクと唐辛子をたっぷり入れれば、韓国風になる。

だしは煮干しや削りぶしで、濃い目にとる。昨日はここに、酒とうすくち醤油を適量入れ、みじん切りのニンニク2かけ、スプーン3杯の韓国唐辛子、それにキムチとキムチの汁を入れ、しばらく煮る。最後に塩で味を決めれば、「韓国風基本のだし」の出来あがりとなる。ここにゴマ油を入れれば、さらにコクが出るところだ。

唐辛子は、日本の一味唐辛子でもよいかもしれないが、韓国唐辛子は、それ自体に甘みがありうまい。

醤油を少なくし、その代わりに味噌やコチュジャンを入れれば、また少しこってりとした味わいになる。



この韓国風基本のだしを鍋に煮立て、日本の醤油味のだしを使うのとおなじ感覚で、鍋をやる。これはどんなものを入れても、うまいと思う。肉でも魚でも、どちらでもいける。ただ白菜だけは、キムチとかぶることになるので、入れないほうがいいように思う。

昨日入れたのは、まず豚のばら肉。それから皮をむき、半分にし、7~8ミリくらいの厚さに切った、カブの実。これをまずはじめに5分ほど煮る。それから、木綿豆腐。長ネギ。もやしとしめじ、カブの葉。さらにしばらく煮、塩水につけ、砂出しをしたアサリを入れて、アサリが口をひらいたら火を止める。

酒は日本酒の、ぬるめの燗。人肌ていどの熱さにすると、熱くも冷たくもない、刺激がまったくないところがまたうまい。

鍋を作って、食べて、また作って、また食べて、としているうちに、あっという間に2時間ほどがたつ。酒はコップに2杯で、気持ちよく酔っ払う。



翌日は、残った汁に、煮詰まっていれば少し水を足し、これで少し残しておいた野菜や肉と、うどんを煮込む。

これがまた、うまい。

うどんはたっぷり煮込んで、しっかりと味をしみ込ませる。