2011-11-30

野菜をたくさん入れ、メインでもいける。
「具だくさんのクラムチャウダー」


檀一雄はニューヨークへ行くと、馬鹿の一つおぼえのようにセントラル・ステーションへ行き、地下の食堂でクラムチャウダーをすすったそうなのだが、これはもしかしたら、アメリカへ行った日本人特有の行動なのではないだろうか。

実際アメリカの、都会へ行くと、到着してしばらくのあいだは、アメリカ式の、目玉焼きにベーコン、パンケーキの朝食に感動することこそあれ、ハンバーガー、ホットドッグ、サンドイッチ、シリアル・・・とつづくうちに、そのモソモソした食感が耐えがたくなってくる。

「ラーメンが食べたい・・・」

肉や魚の滋味あふれるだしがたっぷりと入った、つるつるとした食べごたえの、安くてシンプルな食べ物を、否が応でも、口にしたくなってしまうのである。



ラーメンならチャイニーズタウンへ行けばあるだろうと思うところだが、アメリカの中華料理には、多くのばあい、ラーメンがない。麺料理というと、焼きそばになってしまう。

店員にたずねると、

「あー、それは、日本人が来ると、よくきかれますね」

と言いながら、スープヌードルを出してくれる。しかしスープはシャバシャバとして、香辛料が多用され、どうも求めるものとはちがう。

がっかりしながらも、さらにラーメンに相当するものを、アメリカで探しつづけた挙句、行きついたのが、クラムチャウダーだった。

クラムチャウダーは、味加減も、食べごたえも、まさにラーメンを求める自分の気持にピタリとくる。

それ以後、アメリカでの滞在期間中、毎日クラムチャウダーとサラダばかりを食べることとなった。



さてそのクラムチャウダー、たしかにうまいのだが、これを家で作るとなると、ひとつ問題がある。

具が、アサリのむき身と、小さくきざんだジャガイモだけだと、どうしてもほかに、最低でもサラダなどのおかずが必要となる。

クラムチャウダーは、あくまで「スープ」なわけだから、メインの一品にするには物足りない。

しかしクラムチャウダーを作るだけでも、それなりの時間がかかるから、その他におかずを作るのは面倒くさい。



というわけで、クラムチャウダーに、具を追加して、鍋料理としてメインで通用するものに仕立て上げてみることにする。

名付けて「具だくさんのクラムチャウダー」。

ぜんぜん名付けられてない。




海水くらいの濃さの塩水につけ、砂出ししたアサリ200グラムを、500ccの水で煮て、殻がひらいたらアクをとって火を止め、殻ははずさずに、そのままおいておく。




鍋にバターをひき、みじん切りした玉ねぎ大半個分と、やはりみじん切りしたニンニク1かけ分、1センチ幅に切ったベーコン2~3枚を、バターを焦がさぬよう、弱火でじっくり炒める。

玉ねぎが透き通ってきたら、小麦粉大さじ2~3杯をふり入れ、さらに弱火で、よく炒める。




小麦粉に火が通ったら、アサリの煮汁だけを、小麦粉がダマにならないよう、よく混ぜながら、すこしずつ注ぎこむ。




ここで野菜を煮る。

2センチ角くらいの、ちょっと大きめに切った、ジャガイモとニンジン。ブロッコリー。あとはしめじ。

まずはジャガイモとニンジンを10分ほど煮て、そのあとブロッコリーとしめじをひと煮する。




牛乳を、アサリの煮汁の半量程度、注ぎこむ。

それから味付け。

トマトピューレを大さじ2~3杯。

10センチほどの長さのセロリを、縦に4つほどに割り、さらに薄切りしたもの。

あればタイムを少々。

最後に味をみながら、塩を入れる。

アサリをもどし、ひと煮立ちしたら出来あがり。




みじん切りか、または粉末のパセリ、黒コショウ、粉チーズを好みでふり、クラッカーをくずしちらして食べる。



この作り方は、壇一雄のレシピをベースにしているが、固形スープは入れない。

クラムチャウダーのレシピを見ると、ほとんどが入れることになっている固形スープだが、ベーコンのだしにアサリのだし、それにニンニク、玉ねぎ、トマト、牛乳が入っているのだから、うまみは十分、入れる必要はないと思う。



アサリの殻を皿にいれ、それをうまく食べるには、やはりフォークより、箸が食べやすい。