2011-11-20

洋食のセンスあふれる和食。
向田邦子「あじの干物とポテトのサラダ」

よそでおいしいものを食べたとき、向田邦子は決まった姿勢をとった。

その味を記憶し、次に自分が真似するためだ。

全身の力を抜き、右手をこめかみに軽く当て、目を閉じる。

レストランのざわめきも、同席する友人たちの会話も消え、闇のなかにひとり座る、無念無想の境地となる。

やがて全神経が、ビー玉ほどの大きさとなり、右目の奥に、スウッと集まる。

すると、「この味はおぼえたぞ」ということになる。



邦子はそうしておぼえた味を、真似し、自分流に作り替えていった。

邦子の料理にしばしば登場する、素材の意表をついた取合せも、こうして生まれた。


その中から昨日は、「あじの干物とポテトのサラダ」を作ってみた。



材料は、4人分で、アジの干物3枚に、ジャガイモ大2個、レモン1/4個、三つ葉1/2束。



アジは焼いて骨をとり、大きめに裂く。



ジャガイモは皮をむき、ごくうすい輪切りにして、たっぷりの水にさらす。それをすこし、固めにゆでる。



サラダ油大さじ1と1/2、酢大さじ1、醤油大さじ1~2、練りがらし小さじ1を、泡立て器でよくまぜ、アジとジャガイモ、うすいイチョウ切りにしたレモン、さっと熱湯に通し2~3センチのざく切りにした三つ葉を和える。




向田流「あじの干物とポテトのサラダ」の出来あがり。



このあじの干物とポテトのサラダは、まずもちろん、アジとジャガイモの取合せが意表をついている。しかし意表をついているのはそれだけではない。

アジとジャガイモを、レモンを使い、全体として酸味をきかせた、サラダ仕立てにしてあるところが、また意表をついてくる。

さらにいえば、そのドレッシングに、からしがきかせてあるところも、意表をつかれることとなる。



素材も調味料も、和食でふつうに使われるものだから、和食の献立によくなじむ。日本酒にも合う。

しかしそれらの取合せ方が、地中海料理やドイツ料理など、ヨーロッパを感じさせるものとなっている。

そうしてけっこう、複雑な構成になっているのに、全体としてちゃんとまとまり、うまい。



この料理、どこまでが、おぼえたもので、どこからが、邦子の自己流なのか。

ぜひ邦子にきいてみたい。



あとは、ほうれん草と湯葉のおひたし。


湯葉と、ゆでたほうれん草を、出汁とうすくち醤油で和える。

このやり方は、京都の豆腐屋でおそわった。



豚肉とネギの吸物。


豚小間肉と昆布を、アクを取りながら、たっぷりの酒をいれた水で煮る。

ネギを入れ、塩とうすくち醤油、おろし生姜で味をつける。

中華風の、ラーメンスープのような趣きとなるが、ニンニクを使わなければ、和食の献立にうまくおさまる。



昨日は名古屋の友達が、飲み会をするというから、自宅からスカイプで参加した。


テレビ電話だと、その場にいるのと変わりない調子で、飲み会に加われる。

それが無料だというのだから、世の中はほんとに便利になった。