2011-02-28

鯛のかぶと煮

鯛のおかしらというのは、やはり何といっても「ごちそう」感がたかいわけで、ハンバーグなんかつくるよりは、よっぽどいいと僕はおもうのだが、それがグルメシティ四条大宮店では、養殖とはいえ、丸々一匹分の鯛のアラ、驚きの198円。

東京とか、ほかの地方では、これはいくらぐらいするんだろう。広島にいた頃も、僕はアラはよく食べていたのだが、安いとはおもっていたが、それでも鯛のアラは、半身で298円とかしていた。一匹分だと600円だから、京都は3分の1の値段なのだ。

京都の人は、肉でも牛肉が好きだったりして、三条商店街にある肉屋には、けっこうたかいのに、行列ができていたりとかするから、やはりブランド志向なところがあるのだろうな。鯛もきちんと肉が付いていればいいけれど、アラなどには手をださないのだろうという気がする。

それは僕のような、アラ好きの人間にとっては、たいへんありがたいことなのであるが、グルメシティではこれを一匹分のパックにしてくるから、一人暮らしの僕には、ちょっと食べきれないなとおもって、敬遠しがちだったのだ。グルメシティは、ほかのものはけっこう、一人暮らしには便利な小分けのパックにしてくれていて、長ネギももちろん、一本だけで売ってるし、白菜も8分の1カットというのまであって、このあたりのスーパーの中では断然、一人暮らしにやさしい店だといえるのだが、鯛のアラだけはでかすぎるのだよな。こんど鮮魚コーナーの兄ちゃんに、お願いしてみようかな。

いやべつに、もし1日で食べきれなかったら、翌日に持ち越してもいいじゃないかとおもうかもしれないが、そうやって、翌日に食べるものがすでに決まっているときにかぎって、スーパーへ行くと、うまそうなものが安く出ていたりするものなのだ。それを買いたいなとおもいながらも、いやもう食べるものはあるからと、ぐっと我慢するというのは、けっこうつらい。なので僕は、買い物は極力、その日に食べられる分だけを買うようにしている。

ちなみにこれは、一人暮らしが買い物をする際の、最大のポイントじゃないかとおもうのだがな。

もちろん仕事が忙しくて、毎日買い物に行けないという人は、買いだめをしなければ仕方ないわけだが、そうでなければ、毎日スーパーへ行って、その日食べる分だけを買うということのほうが、一見手間はかかるようには見えるが、ぜったいいい。

最大の理由は、その日に売っている、鮮度のいいものを、その日に食べてしまうというのが、いちばんうまいに決まっているからだ。

やはり鮮度のいいものを食べられるというときには、わくわく感がある。手間がかかるとかいうことよりも、こういうわくわく感をたいせつにすることが、料理を無理なく続ける上で、大事なことだと思うのだよな。

そうやって一人暮らしが、その日に食べきる分だけ買おうとすると、献立にも工夫が必要で、いろいろな材料を取り混ぜてつくる料理にしてしまうと、その分いろいろなものを買わないといけないことになってしまうので、食べきれないことになってしまう。

だから、材料の品数は、できるかぎりしぼる。

八宝菜とか、最悪なのだ。ほうれん草ならほうれん草だけ、鶏肉なら鶏肉だけ、そういう単品メニューを考える。

男性だと、料理をしようかというとき、炒め物が簡単そうだったりするから、中華料理屋をイメージすることが多いのじゃないかという気がするのだけれど、中華料理屋のメニューは、材料をいろいろ使ってあるのが多くて、一人暮らしにとっては、あまり参考にならない。

それよりいいのは居酒屋。

おしたしとか、冷奴とか、魚の焼いたのとか、たけのこの炊いたんとか、居酒屋のメニューはだいたいが、一人暮らし料理に応用することができる。

それにじっさい、酒の肴には、けっきょくそういうものがうまいしな。

というわけで、グルメシティの丸々一匹分の鯛のアラ、敬遠しがちな僕なのだけれど、昨日はグルメシティ、これを10パックほども、山積みにして売っていた。

これはどう考えても、僕に買えと言っているわけで、仕方ないからそれを買い、ごぼうといっしょに煮付けて、2日分のおかずにすることにした。



アラを料理するにあたって、とにかく大事なのは、下処理なのだ。

まず鍋に湯を沸かして火を止め、そこにアラを入れて、しゃぶしゃぶ、とやる。

そうすると水が一気に濁るから、それを捨て、水でよく洗い、ぬめりや血のかたまりをていねいに落とす。これだけやっておけば、あとはどうにでもなるのである。

たわしでよく洗って、適当な大きさに切ったごぼうを下にしき、その上にアラをのせて、ここにまず、水と酒。

この分量は、10分煮ると1カップとおぼえておく。

魚はだいたい、平べったいものなら、7~8分も煮れば火が通る。今回は、ごぼうもあるし、ずいぶんと高く積み上がってしまったし、アラだからちょっと長めに煮ると考え、15分。そうすると、水と酒で、1.5カップ。

酒は最低でも水と同量、ぜんぶ酒でもいいくらいなのだ。

そこに砂糖をバサバサといれ、みりんをジャバジャバとふりかけたら、ペーパータオルの落としぶたをして、強火にかける。

火加減は、煮付けの場合、終始強火か、強めの中火。煮付けはコトコト煮るものじゃなく、強めの火できちんと沸騰させ、煮汁が魚の上にまわるようにするのと同時に、煮時間が終了したとき、汁が煮詰まっているようにするものなのだ。

これで5分ほど煮たら、次にしょうゆを少なめに入れて、また5分くらい、そこで味を見て、しょうゆをたして、最後は一気に煮詰めていく。最後は煮汁が上までまわらなくなるから、落としぶたをはずし、スプーンで煮汁をすくって、上からかけてみたりもする。

というわけで、鯛のかぶと煮、いやバッチリできました。養殖だから、死ぬほどとまではいかないが、かなりうまい。

煮付けは、それほどむずかしいというわけでもないし、これができるようになると、魚料理のレパートリーが一気に広がるから、初めは何度か、失敗するとはおもうけれど、それをおそれずに、ぜひ挑戦してみてほしいですね。

あとはハマグリ入りの湯豆腐。食べ終わったら、汁はもちろん、塩としょうゆをいれて吸い物にする。そこにうどんとかいれても、もちろんうまいです。

酒は古都の冷やを、昨日はなんと1合。