2010-02-24

西区小河内町 天ぷら「くりはら」

広島には「ホルモン天ぷら」というものがあって、以前別の店では食べたことがあったのだが、有名店であるこの店にも、来てみないといけないと思っていたのだ。住宅街の隅の方にあるが、地元の人らしき団体や、一人客、サラリーマン、子連れの家族、カップル、などなどで、店は賑わっている。会社帰りらしき女性が一人で来て、持ち帰りをしていくというのも、何人かいたな。

店内は、愛想というものがまったくなく、メニューすらない。店主のおばちゃんは、70歳くらいなのかな、恵美のおばちゃんにもちょっと似た、頑張り屋さん、という感じの顔立ちなのだが、愛想笑いの一つもせずに、カウンターの隅で黙々と、天ぷらを揚げている。

僕はそのすぐ脇、カウンターの、いちばん手前の端に座ったのだが、ビールを頼むと、後ろの冷蔵庫から、自分で取ってくれとのこと。飲み始めると、「天ぷら、適当でいいか」と聞かれて、揚がると、席に置かれているまな板の上に、まったく無造作に出してくれる。

ホルモン天ぷらは、箸では切れないから、まな板の上で、包丁で切って、それを酢醤油に、韓国唐辛子をたっぷり入れたタレで食べる。慣れないと、何だかわからず、ちょっと怖いが、食べてみると、何種類かあるのだが、どれもやわらかく、酒のあてには言うことないのだな。

初めての飲み屋で、こちらも一人で、黙々と飲んでいるのだが、こういうときは、下手に気にされるより、放っておかれた方が、居心地がいいのだよな。周りでは、人が出入りし、騒いで、僕を素通りして、おばちゃんと会話が交わされ、人間模様が繰り広げられるわけだが、そういう中で一人、黙々と酒を飲むのは、時間が止まったみたいで、または、大人の中に一人放り込まれた、小さな子供になったみたいで、なんとも癒される。

おばちゃんも、自分でこの店を始めて、もう40年になるというから、そういう酒飲みの習性は、よくわかっているのだよな。自分からは一切、しゃべりかけてこないが、たまにこちらが話しかけると、普通に答えてくれるし、「うまい」と褒めると、嬉しそうにする。いい人だな。

ビール一本で、ホルモンは食べ終わり、まだ少し飲みたかったので、熱燗を頼んで、野菜の天ぷらを追加。シメはホルモンスープと白めし。

ホルモンのスープというと、韓国の、真っ赤なホルモン鍋とか、名古屋の味噌煮込みとか、僕などは、濃い味を思い浮かべるのだが、広島は違うんだな。すまし汁になっていて、きちんと下処理するからなのだろう、臭みなどはかけらもない。かつおだしで割って、塩味を付けて、という感じだが、これはうまい。まさに滋味、酔っぱらいの五臓六腑に、しみわたるな。

勘定は、シメて2,460円。いいな、この店。また来たい。

くりはら (ホルモン / 観音町、福島町、西観音町)
★★★★ 4.0