お好み焼きは、僕にとっては2強があって、この「かんらん車」は、そのうちの一つ。みっちゃん系の中では、最強じゃないかと思うんだがな。
みっちゃん総本店で修行した大将は、基本、みっちゃん流の、キャベツがほくほくとした、端正なお好み焼きを焼くのだが、この店が、みっちゃん系はもちろん、他の店ともちがう、最大の特徴は、麺の扱い方にあるのだ。
みっちゃん系のお好み焼きは、生地の上に、キャベツやら肉やらもやしやらをのせ、上下をひっくり返してしばらく蒸し、その間に麺をゆで、鉄板で焼いて、焼き上がった麺の上に、蒸した本体をのせ、さらに横で卵を割って、つぶして広げ、麺と合体させた本体をそこにのせ、しばらく焼いて、卵に火が通ったら、ひっくり返して、ソースを塗って、トッピングをかけて出来上がり、という工程を経て、作られる。いちおう書いてみたが、これ文だけ読んでも、見たことない人にはわかりにくいな。
まあこの工程の全体は、どうでもいいのだが、この店では、最後に卵に火を通すとき、その時間3秒、半熟どころか、ほとんど生の状態のまま、ひっくり返してしまうのだ。そうするとどういうことになるかと言うと、焼けた麺のあいだを、ドロドロの玉子が浸透し、麺が玉子でコーティングされる、ということになるのだ。これがうまいのだな。
まず麺の食べ応え自体が、これによっておいしくなるのはもちろんで、大将は長崎出身なのだそうだが、長崎の皿うどん、あの感覚なのだと思う。焼けた麺に、ドロリとしたおいしい液体というのは、相性として、これ以上のものはないよな。
そしてさらに、こうやって麺が玉子でコーティングされることによって、時間がたっても味が変わらないのだ。
麺がカリカリに焼かれたお好み焼き、ずいぶんあると思うが、あれはほとんどが、最初の一口二口はいいのだが、時間がたつと、乾燥した麺が、下にある、ホクホクのキャベツの、水分を含んでしまって、そうすると、モソモソになってしまう。これは最悪で、お好み焼きは、食べるのに時間がかかるから、半分くらい食べ進んだ頃には、麺がこの、モソモソ状態になってしまい、僕に言わせると、ほとんど食べられたものではない、という状態になってしまう。
しかしこの店の麺は、ドロドロ玉子でコーティングされているから、水分を含んでしまうということが、まったくない。食べ終わるまで、味が変わらず、おいしいままなのだ。これは大きい。
みっちゃん総本店出身の人って、お好み焼きを焼く技術としては、やはり一日の長があるのじゃないかと思うのだよな。その技術をもって、さらに自分の発想で、新しい焼き方に挑戦するこの店、僕はいいと思うのだよな、ほんとに。