今日の晩酌は・・・。
鯛あらと豆腐の煮付けと、菜っぱ汁。菜っぱ汁は京都のおばんざい屋で初めて食べたのだけれど、京都の家庭ではふつうに出されるそうだ。みそ汁でなく、吸い物だというのがポイント。
吸い物だから、だしの味が決め手。煮物を作るときの二番だしでなく、一番だしをとる。
3カップの水にだし昆布を入れて中火にかけ、水が沸騰したらだし昆布はとり出す。一旦火を止めて削りぶし2つかみを入れて再び中火にかけ、沸騰したら火を止めて、削りぶしが沈んだらペーパータオルで濾す。
菜っぱは1/2把。
小松菜や畑菜ならサッと下ゆでする。水菜や白菜なら下ゆでは必要ない。下茹でしたら水にとってよくしぼり、食べやすい大きさに切っておく。
だしに味をつけて、細く切った油揚げ1枚と下ゆでした菜っぱをサッと煮る。
味つけは日本酒大さじ2とうすくちしょうゆ大さじ1、塩少々。
これはほんとに、しみじみとうまい。酒の肴にもいい。
あとは鯛あら豆腐。
鯛あらは、サッと湯通しして水でよく洗う。
鍋に洗った鯛あらと木綿豆腐を入れ、水と日本酒それぞれ1カップ、砂糖とみりん大さじ3を入れて火にかける。
落としブタをし、強めの中火で3分煮たら、しょうゆ大さじ3を入れ、さらに7分煮る。
煮魚の場合水面がデコボコしているから、落としブタはアルミホイルで作ったほうが、煮汁が上までよくまわる。
ホックリと煮えた鯛あら。
味のしみた豆腐がまたうまい。
昨日は多くの人の手元に「おっさんひとり飯」が届いたようで、いくつも感想が寄せられた。
おおむね好評のようで、安心した。
初めて出す本だから、もちろんこちらも全力は尽くしたつもりだけれど、もしかしたら不手際があるのではないかと不安になる。
アマゾンにもレビューが出て、こちらも「面白かった」とのことだから、どうやら致命的な欠陥はないようだ。
昨日はそれでホッとして、いつも行く四条大宮のバー「Kaju」へ飲みに出かけた。
Kajuはカウンターだけの小ぢんまりとした店で、早い時間帯に行けばマスターと2人でゆっくりと話ができる。
マスターはぼくと同い年だから、それなりに気も合う。
あれこれと話をして、のんびりとした時間を過ごした。
そこへ店のドアが開いたかと思うと、松嶋菜々子が入ってきた。
Kajuには映画関係者が色々来るのは知っていたが、松嶋菜々子まで来るとは思わなかった。
でも有名人が来ていても、ことさらに話しかけないのがバーの礼儀だ。
ぼくは知らんぷりをしながら、注文したビールを飲んでいた。
すると松嶋菜々子が、
「おっさん・・・、ですよね?」
ぼくに話しかけてきた。
手には真新しい「おっさんひとり飯」を握りしめている。
「私、前からブログを見ていて、おっさんのファンだったんです。本が出たというので早速買って、今日ならこの店にいるかもしれないと思って来てみました。サインしてもらえますか?」
ぼくは大ファンの松嶋菜々子がぼくにサインを求めてくるという、まったく思いもかけない展開にあたふたしながらも、松嶋菜々子に差し出されたサインペンのフタをあけ、表紙の裏の赤いページにサインをした。
「ありがとうございます。私もこれから、このレシピを見て色々作ってみることにしますね。」
松嶋菜々子は、マスターにラム酒のロックを注文し、1杯飲んだ。
飲み終わると、マスターとぼくに挨拶をして帰っていった。
呆然として松嶋菜々子が出ていったドアを見つめながら、ぼくは大事なことを思い出した。
「しまった・・・。松嶋菜々子にサインをもらうのを忘れた・・・」
しかし、もう手遅れだった。
ぼくはマスターにもう1杯ビールを注文し、それを飲み終わると家に買った・・・。
「まったく何ワケのわからない妄想してるの。」
あるわけないよな。