2012-06-02
新しい世代。
「サバの味噌煮」
1週間ぶりに「Kaju」のぶあつい、木のドアをあけてみると、お客さんはもうひけて、マスターが1人だった。
Kajuはカウンターのみ、7~8人もすわればいっぱいになる小さなバーで、ドアをあけると正面に、L字型のカウンターの長辺が、奥にむかってのびていて、椅子が5~6席ならんでいる。
入り口からはいって右側に、カウンターの短辺があり、椅子が2席ならんでいる。
僕は飲食店では、入り口ちかくのカウンターの短辺の、奥にすわるのがいちばん好きで、そこだとほかのお客さんからもすこし距離をおけるし、カウンターのなかを見わたして、お店の人があれこれするのをながめることもできる。
それでKajuでも、もしあいていれば、はいって右の、奥の席にすわることにしている。
お客さんがほかに誰もいない深夜、または早い時間に、バーで気のあうマスターと話をするのは、僕にとっては大きなたのしみ。
あまり気をつかう必要もなく、空気もよむ必要がない。
空気をよむのが苦手な僕は、ほかのお客さんと話をすると、すこし疲れることもある。
注文したのは、芋焼酎の水割り。
のどが渇いていたから、水ももらった。
いつもならマスターにも1杯おごるのだけれど、このところ飲みにいきつづけでお金がとぼしくなってきたから、ワンコインで勘弁してもらうことにした。
話はいきつもどりつ、色々にながれて、やがて「お酒」の話になった。
このごろの20代は、あまりお酒を飲まないという。
それでも、こんな奥まった場所にあるバーにくるのは、それなりにお酒が好きなはずだとおもうけれど、以前とはずいぶんちがうらしい。
マスターも、酒を飲めば、飲みすぎることがある。
飲みはじめは「注意しよう」とおもうけれど、飲んでるうちにそれもわすれる。
「明日なんかどうなったっていいや」
と存分に飲み、翌日つらい気持ちで仕事をすることもある。
ところがそうしてマスターが、二日酔いで店にでていると、20代のお客さん、
「翌日つらいことがわかっていて、どうしてそんなに飲むんですか」
と不思議がるのだという。
それも1人や2人じゃない、Kajuへくる20代のお客さんは、だいたいみんなそうなのだそうだ。
あまり飲みにいかないから、飲み屋もしらない。
会社で飲み会の幹事になっても、チェーンの店しかアレンジできない。
「割り勘負け」ということばを平気でつかう。
会社の飲み会で、
「自分はあまり飲まなかったのに、おなじ値段をはらうのは納得できません」
と、クレームをつけることもあるのだそうだ。
飲み屋自体へいかないのだから、ましてやお姉ちゃんのいる店になどいかない。
20代で、なじみのスナックがあるなどというのは、まず見たことがないという。
マスターの話を聞きながら、
「どうやら日本で、これまでとはまったくちがった種類の世代がそだちつつあるらしい」
と僕はおもった。
昔は人付き合いをするには、飲まなければはじまらなかったものが、そんなのはやがて、時代遅れになるのかもしれない。
それがいいことなのか、そうでないのか、僕にはよくわからない。
でも新しい世代は、いつでも前の世代とはちがうことをするものだし、それが「時代のながれ」というものだとおもう。
しかしマスターも僕も、旧世代。
「まったく今の若いやつは、かんがえられないよな」
と意気をあげ、もりあがった。
三条会商店街の魚屋へいったら、おばちゃんが、
「サバがいいのがあるよ」
と声をかけてきた。
銀色に光りかがやくサバまるごと1尾、480円。
これを今夜は味噌煮、明日はしめサバと、骨は船場汁にすることにして、お兄ちゃんにたのんで3枚におろして、半身片方と骨に塩をふってもらった。
あとは豆腐屋でゴマつきの厚揚げ、八百屋でみょうがを買ってかえった。
まずは昨日買って、まだ残っているキュウリを酢の物にする。
キュウリはうすい小口切りにして、塩1つまみをふってもみこみ、5分ほどおいておく。
冷凍庫にゆでた生ワカメがはいっていたのをおもいだしたから、それを流水で解凍し、水気をふきとり適当な大きさに切る。
みょうがはたて半分に割り、ななめうす切りにして水にさらし、水気をふきとる。
おいてあったキュウリも、水であらい、水気をふきとる。
合わせ酢は、同量程度の酢とみりん、半量くらいのしょうゆ。
器にいれ、味をみて加減する。
食べる直前に、合わせ酢のはいった器にキュウリとわかめ、みょうが、それに1つまみのちりめんじゃこをいれ、和える。
次につくるのはサバ味噌煮。
半身のサバは半分に切り、皮にななめに切れ込みをいれておく。
フライパンにだし昆布をひき、酒カップ2分の1、水カップ1、みりんカップ4分の1、味噌をゴルフボール1個分ほど、砂糖大さじ2をいれ、火にかけながら味噌をよくとかし、味をみて、塩気がたりないようならしょうゆをたす。
沸騰したらサバをいれ、アルミホイルで丸く形をつくり、まん中に穴をあけた落としブタをして、強めの中火で10分煮る。
10分たったら、サバはとりだし器にもって、煮汁をドロっとするまで強火で煮詰め、サバのうえからかける。
厚揚げは、フライパンをサバ味噌煮でつかっていたから、網で焼いた。
青ねぎと、おろしショウガをのせて、しょうゆをかける。
あとは冷蔵庫にはいっていた昨日のアサリ時雨煮と、高菜漬けをならべる。
酒は日本酒の常温。
1時間ほどかけ2杯飲み、肴を食べきる。
番茶を飲み、そのあと腹ごなしに、散歩にでかける。