ご飯のおかずではなく、「酒の肴」として必要な条件って、考え出すと、意外に奥深いものがあるように思うんですね。
おかずと肴のちがいは、単に食事の、ご飯の代わりに酒を呑めばいいのかというと、そういうことでもないような気が最近しはじめているんです。
まず味的に、その食べ物が「実際に酒に合う」ことは必要ですよね。
最も酒に合わない食べ物は、「白飯」です。
どういう理由があるのか分からないけれど、白飯だけは、どうしたって酒には合わない。
これは日本酒はもちろん、焼酎もビールもダメですね。
でも炭水化物がなんでも酒に合わないかというと、必ずしもそういうわけでもない。
「餃子にビール」とか、最高なんですよね。
おなじように、「焼きそばにビール」も、死ぬかと思うくらいうまいです。
なんだ、それなら米でなく、小麦粉で作ったものは、酒に合うんじゃないかというと、必ずしもそういうわけでもない。
焼きそばにビールは最高でも、「ラーメンにビール」となると、ちょっと微妙になってくるんですね。
しかもラーメンには、ビールに合うラーメンと、合わないラーメンがある。
これは必ずしも、「濃いか薄いか」の問題でもなく、味の種類によって、合うのと合わないのとがあるんです。
でもラーメンも、キムチがあれば一般的に、ビールに合うようになったりする。
ラーメンをすすって、次にビールを呑む前に、キムチをつまめば、だいたいどんなラーメンでも、ビールが飲めるようになります。
それから同じものでも、酒の種類によって、合うのと合わないのがある。
例えば焼きそばは、ビールには最高で、焼酎でもギリギリイケるんですけど、日本酒はまったくダメです。
これも、どういう理由があるのか分からないんですが、そうなんですね。
よく、「料理に使った酒と、おなじ酒を呑めばおいしい」とか言いますよね。
でも、僕は焼きそばを作るのに、ソースでなく、日本酒と醤油、それにショウガという味付けでやるんですが、それでも、焼きそばに日本酒は合いません。
「完熟トマト」の味にも、日本酒はまったくダメです。
僕は「トマト鍋」を作るために、何度となく試したんですが、完熟トマトが前面に出ていると、何をどうしても、日本酒には合いませんでした。
最終的にトマト鍋を日本酒に合わせるための方法として、僕が得た結論は、完熟トマトのトマト缶を使うのでなく、日本のスーパーとかで売っている、完熟していないフレッシュトマトを使うか、またはキムチを加えて、「キムチトマト鍋」にするか、ということでした。
でももちろん、この完熟トマトの味も、ワインには最高の取り合わせとなるわけですし、焼酎でもなんとかイケます。
ビールは試していないんですが、これもだいじょうぶなのじゃないでしょうか。
このように、食べ物には、どういう理由があるのか分からないけれど、たぶん化学的、生理的なことなんでしょう、酒に合うものと合わないもの、また特定の酒に合うものと合わないものがあるから、酒の肴には、呑もうとする酒に合うものが選ばれないといけないことになる。
これは当然といえば、当然ですよね。
でも「酒の肴」としてふさわしいか、そうでないかは、そういう純粋に、化学的、生理的理由によってだけ決まるものでもない。
「雰囲気的な理由」みたいなものが、あるように思うんですね。
例えば、「肉じゃがは酒の肴になるか」という問題がある。
肉じゃがは、味的には、酒を呑むのに問題ないんですが、しかし果たして、「肉じゃがを酒の肴にしたい」と思う人が、どれくらいいるのかという問題です。
居酒屋のメニューとして、肉じゃがって、あんまり無いですよね。
それは肉じゃがは、「酒の肴よりご飯のおかずだろう」と思う人が多いからだと思うんです。
味的には、肉じゃがは、酒の肴であっても問題はありません。
肉も、ジャガイモも、ニンジンも、玉ねぎも、すべて酒には問題ない。
「甘い味付け」が酒に合わないと思う人がいるかも知れなないけど、例えばこれが煮魚だったら、甘くこってりしていても、酒の肴には最高であるということになると思うんです。
にもかかわらず肉じゃがを、多くの人は、酒の肴にしたがらないというところに、奥深さを感じるんですよね。
似たようなメニューとして、「肉豆腐」がありますけど、これは肉じゃがとは違い、酒の肴としては定番になるんじゃないかと思います。
牛肉または豚肉に、豆腐、そして長ねぎまたは玉ねぎを、醤油味で炊く。
完璧です。
そしたらそれを、豆腐の代わりにジャガイモを入れたらどうだろう?
肉とジャガイモ、長ねぎまたは玉ねぎを醤油で炊く。
これは酒の肴として、わりといいように思えるんですね。
でもこれは、一般には「肉じゃが」とは呼ばれないですよね。
なぜかというと、「ニンジン」が入っていない。
肉じゃがの材料の最低ラインは、まず肉、それからジャガイモ、長ねぎか玉ねぎ、それにニンジン・・・。
そういうことになるんじゃないでしょうか。
ニンジンが入っていなくても、べつに「肉じゃが」という名前的には、問題がなさそうだし、味的にも問題はなさそうだけれど、ニンジンが入っていない肉じゃがは、「クリープを入れないコーヒー」とおなじですよね。
僕はこの、「肉じゃがにニンジンを入れるか、入れないか」という一線が、ご飯のおかずと酒の肴を、味的ではなく、雰囲気的な意味で、決定的に分けるものになっているんじゃないかと思うんですね。
肉じゃがを作っていると、どうしたって、ニンジンを入れたくなります。
これはまず、栄養面のことがありますよね。
肉のタンパク質に、ジャガイモの炭水化物、ねぎのビタミン。
ここに豊富なカロチン源であるニンジンを入れれば、栄養バランスはより完璧に近くなります。
それから「色目」の問題もあります。
肉もジャガイモもねぎも、くすんだ色をしているから、ここにニンジンが入ると、目に鮮やかだということになる。
さらに絹さやでも入れて、緑が入ると、色合いのバランスも完璧になります。
でもこの、「完璧をもとめる気持ち」、僕はそれを、あえて表現すれば、「おふくろ性」と言いたいんですが、それが、肉じゃがを酒の肴から遠ざけるものにしていると思うんですけど、どうでしょう?
酒の肴というと、「材料の点数をできるだけ絞る」というのは、一般に定石となっているでしょう。
そら豆だけ、豆腐だけ、冷やしたトマトだけ、みたいなもののほうが、酒の肴にはなりやすい。
ところが材料の点数が増え、栄養や色合いのバランスが完璧に近くなり、おふくろ度が上がるにつれて、酒の肴より、ご飯のおかずに近づいていく・・・。
お酒を呑むのが「不健康である」ことは、酒呑みは誰でも自覚しているわけですよね。
ですからお酒を呑むときの酒の肴も、それなりに不健康でなくてはいけないのではないでしょうか。
栄養バランスも完璧、色合いも完璧という、おふくろ度の高いものだと、あまりに健康的すぎて、まぶしくて、酒を呑むといううらぶれた気持ちにふさわしくない・・・。
てなことをつらつら考える、今日この頃です。
昨日の晩酌は、「豚肉の味噌焼き」「水菜と油揚げのサラダ」「オクラと納豆おろし」の3つを酒の肴にしてみました。
豚肉の味噌焼き。
材料は、ここにしめじでも入れたくなるところなんですが、あえて我慢して入れない方が、おふくろ度が下がって、酒の肴としていい感じです。
味付けも、あえて甘みを付けなかったんですが、玉ねぎの自然な甘みがありますから、ご飯のおかずでなく酒の肴としては、そちらの方が、おふくろ度は低いと思います。
<材料>
・ 豚薄切り肉 150g
・ 玉ねぎ 2分の1個
・ 味噌 大さじ2くらい (昨日は赤だし味噌を使って、完璧かというくらいおいしかったですが、ふつうの味噌でも問題ないと思います)
・ 酒 大さじ2くらい
・ サラダ油 大さじ1
・ 青ネギ
・ 一味または七味唐辛子
<作り方>
1. 肉は1口大に切り、片栗粉をまぶす。玉ねぎは薄切りにする。
2. 味噌を酒で溶きのばし、さらにすこし水を足して、「ドロドロ」の加減にしておく。
3. フライパンを強火にかけ、サラダ油を熱し、肉を炒める。肉に火が通ったら、玉ねぎをサッと炒める。続いて味噌ダレを入れ、全体を混ぜてタレがからまれば出来あがり。
4. 器に盛り、青ネギと、一味または七味唐辛子をふる。
三つ葉と油揚げのサラダ。
三つ葉と油揚げだけにしておいたらよかったです。
でもご飯のおかずの一品として出す分には、何も問題なくおいしいです。
<材料>
・ 三つ葉 1把
・ レタス 葉っぱ1~2枚
・ 油揚げ 2分の1枚
・ ちりめんじゃこ 1つまみ
◎ドレッシングの材料
・ オリーブオイル 大さじ2
・ レモン汁 大さじ2
・ 醤油 小さじ2
・ カラシ 小指の先くらい
<作り方>
1. 油揚げは熱湯をかけ油抜きし、焼き網で両面をこんがり焼き、3ミリ幅くらいに切る。三つ葉は3センチ長さくらいに切り、レタスは指で適当な大きさにちぎる。
2. レタス、三つ葉、油揚げ、ちりめんじゃこを皿に盛り、ドレッシングの材料を全部混ぜ上からかける。
あとは、オクラ納豆おろし。
全然まずかったです。
ポン酢醤油をかけましたが、これはおふくろ度以前の問題、味の問題として、訳がわからなくなってしまい、他の肴との味的なバランスも悪く、結局残してしまいました。
なんでもやり過ぎは、ダメだってことですね。
今日は暖かくなりそうです。