2011-12-29

京都式に作る。
「紅鮭の粕汁」


晩めしの献立を、いちおうは家で考えてみるのだが、なかなか思いつかないことも少なくない。自分が食べたいものを思い浮かべようとしたり、料理本をパラパラ眺めたりしてもダメなときは、思い切って店へ行ってしまう。そうすると、食べたいものがそれなりに見つかるから不思議だ。

ただ昨日は、晩めしに食いたいものは、きちんと見つかったのだけれど、昼めしに食べるものを、どうも思いつくことが出来なかった。もしや自分は、たいして昼めしを食べたくないのではと思い至り、昨日は昼めしを食べずに過ごしてみた。

もちろん何も食べないでは、血糖値が下がって朦朧としてしまうから、チョコやお煎餅を時々かじる。そうすると、意外に夜まで、問題なく過ごし、仕事をすることもできた。



今まで昼めしを食べないといけないと信じていた理由は、手がかじかんでしまうことだ。朝から晩まで、キーボードを打ち続ける仕事をしているから、手がかじかむと仕事にならない。めしを食い、体内で食べ物を燃焼させるからこそ、手がかじかまないと思っていたのだけれど、原因はそんなところにあるのではなかった。

今まで冬でも、のどが渇くと麦茶を飲んでいたのだけれど、最近それをやめ、番茶を煎れて飲むようにしはじめた。小さなヤカンに湯を沸かし、そこに番茶の葉っぱを入れて、机においておく。のどが渇いたら、それを飲むようにする。

すると、めしを食わなくても、まったく手がかじかまない。あたたかいものを飲むことも、理由の一つかもしれないけれど、たぶん麦茶が、身体を冷やすのじゃないかと思う。麦茶は夏はいいが、冬に飲むのは良くないということだ。



腹が減っていること自体は、それほど嫌いではない。食事をするのは、それなりに面倒くさいし、食べ終わると眠くなる。たいして食べたくないものを食べてしまうくらいだったら、食べずに我慢していたほうが、晩めしがうまい。さらに晩めしでも、できるだけすぐに腹をいっぱいにしてしまわないよう、チビチビ酒をのみ、肴をつまむようにすれば、これが最も晩めしをたのしむ方法だということになる。



さて昨日魚屋へ行って、鯛のアラでも買って、鯛チリにしようと手を伸ばした瞬間、大将が

「これあるよ」

と、紅鮭のアラを持ってきてくれた。一匹分の頭とカマの部分に、さらに切り身の部分もつけてあるのが450円。迷わずそれを買うことにした。魚屋や、スーパーでも同じだが、いいものを買おうと思ったら、早い時間に行かないといけない。紅鮭のアラなど、一日にいくつも出るわけではないから、夕方などに行ってしまうと、もう売り切れてしまって残っていない。

紅鮭を買ったら、「これで粕汁を作ったらいい」と、魚屋のおばちゃんが教えてくれた。

「粕汁は、よく豚肉で作るという人がいるけれど、なんといっても紅鮭がおいしいんですよ」

と、美人の若女将もうれしそうに言う。

入れるものを聞いたら、大根とニンジンを短冊に切ったのと、あとは油揚げ、それにセリを刻んだのをかけるのが本当だが、青ネギを小口に切ったのをかけておけばいいとのこと。ゴボウやらコンニャクやら、余分なもの入れないのが京都流らしい。これは魚屋のおばちゃんだけでなく、油揚げを買いに行った、豆腐屋のおばちゃんも、まったく同じことを言っていたからまちがいない。



紅鮭のアラは、まず湯通しする。わざわざ湯を沸かさなくても、給湯器のお湯の温度が、80~90度もあれば、それを使うので十分だ。器にアラを入れ、湯を入れてちょっと揺すると、アクがたくさん出てくるから、それを捨て、あとはていねいに水洗いして、血のかたまりや表面のぬめりなどを落とすようにする。アラを使うときには、この手間だけは省いてはいけない。

だしは昆布だけで取ることにした。紅鮭の切り身を使うのなら、さらに煮干しや削り節のだしを使ったほうがいいと思うが、アラならたっぷりだしが出るから必要ない。

水にひたした昆布とアラとを火にかけて、沸騰したら昆布は取り出し、アクを取りながら15分ほど煮る。

それと同時に、細かくちぎった酒粕を器に入れ、そこに鍋のだしをすこし入れ、酒粕を溶かしておくようにする。

15分煮た鍋に酒粕を入れ、短冊に切った大根とニンジン、それに油揚げを入れる。野菜が煮えるまで、10分程度煮る。

最後に味をみて、味が足りなければ、うすくち醤油を足す。ただ紅鮭には塩があるから、汁は甘すぎるくらいで、食べるときには丁度よい。

青ネギを振っていただく。酒粕で身体があたたまり、冬にはうってつけの一品。酒粕には、さらに不思議なことに、酒で疲れた肝臓を、回復させる効果もあるそうだ。



あとはスグキ。三条会商店街に露店を出すスグキのおばちゃんが、今年も今週から、漬かったスグキを売りはじめた。

おばちゃんは、店で買うより半額から3分の1程度の値段でスグキを売るから、いつも行列ができている。京都へ来てスグキを買うなら、ここはおすすめだ。大宮通三条の角の公園の前に、いつもいる。ただしスグキのシーズン中のみ。春までかな。

ちなみにスグキも、肝臓にいいそうだ。実際スグキをあてに酒をのむと、あまりに酔い加減がいいので、ついのみ過ぎてしまう。