2011-10-26

和風の食卓にもバッチリあう。「イカワタの味噌バター炒め」



「イカ」を食べるというと、一般的には、イカの胴体やゲソだけを、お造りにしたり、焼いたりゆでたり、炊いたりすることが多いだろう。

もちろん新鮮なイカの、プリプリとした食べごたえと、淡白でありながらも甘みのある味は、ほかには得がたいものであり、最高にうまいもののひとつであることは、まちがいない。

しかしじつは、イカはその淡白な体のなかに、濃厚な「ワタ」を隠しもっているわけだ。

日本を代表するイカワタの料理に、「塩辛」があるけれど、家庭でイカを買い、塩辛までつくるというのは、やはりちょっと、めんどうくさい。だから、後ろ髪をひかれながらも、結局ワタは捨ててしまうことになりがちだろう。

なんとももったいないことだ。



そこで登場する、イカワタをつかった、手軽な料理となると、檀一雄が「檀流クッキング」に書く、

「イカのスペイン風」

が、最強だろう。これは先日、実際につくってみたが、つくり方は非常に簡単、しかも死ぬかとおもうほど、うまい。まずはじめに、手軽なイカワタ料理をつくってみるのならば、これは圧倒的にオススメだ。

しかしこのイカのスペイン風には、大きな欠点がある。

あまりにスペイン風であるため、「和風の食卓」に、まったく合わない。

スペイン風の極彩色の味付けが、食卓にならぶ他の料理の、墨絵のような和風の味付けを、完全にかき消し、蹴散らしてしまうのだ。



そんな話を、魚屋のおばちゃんとしていたら、魚屋の一家でも、「イカワタ炒め」は、よくやるのだそうだ。そのとき味付けには、「味噌」と「バター」をつかうとのこと。

なるほど、それなら和風の食卓にも、バッチリ合うにちがいない。

というわけで、「イカの和風」、味噌バター炒め、早速やってみることにした。



イカはやはり、鮮度のいいものを買うのが重要だ。

スルメイカの場合、鮮度は「色」で見わける。茶色が濃ければ濃いほど、鮮度がいい。

檀流「イカのスペイン風」にならい、イカはさばかない。ただ「軟骨」と「くちばし」だけは、取り除かないといけない。

軟骨は、胴の内側に、胴にひっつくようにして、たてに入っている。まず軟骨の端っこを、爪でこそげて胴からはずす。

そして、すーっと横にひっぱると、簡単にぬける。

くちばしは、足の根元にある。

2つあるから、それを指でほじくり出す。

軟骨とくちばしだけ取り外したら、あとは簡単。胴体からゲソまでを、ワタもいっしょに、かまわずぶつ切りにしていく。

胴は1センチ幅ていどに切ると、食べやすい。

ワタや墨も、残さぬよう、後生大事にうつわに入れ、味付けをする。

まず味噌、それから酒とみりん。おろしたショウガ。これらはいずれも「少々」。

さらに味をみながら、好みで砂糖を入れる。

よくかき混ぜ、30分くらい、おいておく。

そのほかに、使う調味料は、唐辛子とバター。

フライパンにサラダ油を入れ、まず唐辛子を中火であたためる。

油に唐辛子の赤い色がついてきたら、やおら火を強火にし、煙がたってきたところで、バターと、混ぜ合わせておいたイカワタを入れる。

これはほんとうに、イカに火が入りすぎ、固くなってしまうと台無しだ。

汁が沸騰し、2、3回かき混ぜたら火を止める。




というわけで、完成した、イカワタの味噌バター炒め。

これはバッチリ、和風の味。和風の献立の、邪魔をすることは一切ない。

檀流イカのスペイン風のような、圧倒的な迫力には欠けるけれど、もちろん味は濃厚。超弩級のコクがある。

ご飯にもまちがいなくバッチリ合うが、僕は汁だけ残しておいて、翌日、(つまり今朝)、うどんと合わせてみた。

イカワタうどん。

これがまた、死ぬかとおもうほど、うまい。



昨日の肴は、あとは湯豆腐。

タレは、醤油にかつお節、青ネギを、湯豆腐の昆布だしで割る。

カブの浅漬け。



昨日の昼飯は、前日のイワシの煮付けとカブの浅漬けで、白めし。

汁はとろろ昆布の、簡易すまし汁。